設計・製造現場を変革する3D CAD/3Dデータ活用(8)
ワークフロー図を作成し、設計だけでなく全社的な問題と課題を浮き彫りに(1/3 ページ)
設計品質の向上、さらなる生産効率化など、設計・製造現場では常に厳しい要求が突き付けられている。そうした中、3D CADをはじめとしたツールの導入やより効果的な使い方を追求した組織としての取り組みも行われている。本連載では3D CAD/3Dデータ活用にフォーカスし、プロジェクト管理者がどのような視点で現場改革を推進していくべきか、そのヒントを提示する。連載第8回では、「ワークフロー図」の作成についてさらに掘り下げていき、全社的な問題と課題の洗い出し、解決施策の展開に関して取り上げる。
前回「3D CAD導入による『効果』を実感できるのはいつか?」では、3D CAD推進による成果の実感とその指標について解説しました。プロジェクトを開始する前に、どのような指標をステークホルダーに示していくかが重要な検討事項だと筆者は考えます。
指標を示す上で、最も重要なステークホルダーは経営層(経営者、部門長)です。また、その指標は導入現場が実感できるものである必要があります。しかし、ステークホルダーが期待する3D CAD推進による効果を短期的に示すことは容易ではありません。
これは筆者の失敗談なのですが、あるとき、ISOの品質管理計画書の中で3D CADの稼働率を目標に定め、月次で総設計者数に対する3D CAD利用者数の比率を実績書で報告することにしたのです。しかし、結果的に月次での稼働率は増えておらず、ISO維持審査の際に審査官から「稼働率を増やそうと考えるのであれば、シンプルに月次でのCAD利用者数の増員を目標に定めて、それを月次の実績として報告すべきだ」と指摘を受けてしまいました。このことから、プロジェクト推進には分かりやすい指標、評価しやすい指標を立てて、上長や経営層に見せるテクニックが必要だということを学びました。
これまで見えていなかった問題と課題を浮き彫りにする
前回、KJ法により、細分化された最小単位の作業となる「ワークパッケージ」を洗い出し、それらを分類化するために「WBS(Work Breakdown Structure:作業分解図)」を作成しました。そこから今度は時間軸で作業をまとめて、フェーズ1~4までの大分類での優先順位を決定しました。
WBS作成のメリットとしては、次のようなものがあります(図1)。
また、WBSは報告用の資料としても有効です。ここから作業の優先順位を明らかにします。筆者の場合、事前にヒアリングを実施していましたが、各部門の仕事の流れを模式化して見える化するために、「ワークフロー図」の作成をフェーズ1に入れました。気持ちとしては、良さそうな3D CADを見つけて、すぐにでも購入に向けて動き出したいところですが、まだ我慢です。
前回、ワークフロー図のイメージをお伝えましたが、もう少し踏み込んでみましょう。筆者の所属する会社組織は、営業、開発設計、資材、製造、メンテナンスというように職能別組織として構成されています。それぞれの部門は分断されておらず、製品の設計開発に必要なデータを受け渡すための仕組みがあります。
各部門内でのワークフロー図を作成する際は、既に分かっている問題とその課題を挙げ、さらに他部門との関係においても、部門間で生じている問題を抽出してその課題を明らかにしていきます。最終的には、会社全体の組織がつながった1枚の大きなワークフロー図に、問題と課題が記されることになります。
この作業を行うことで、例えば、自社の製品の特長や設計品質上の問題が細分化され、「納期短縮を実現するには、どのような設計構成にすべきか」「設計から他部門への設計情報の共有は本来どうあるべきか」「他部門が設計情報を基にどのような帳票や文書を作成しているのか」といった、これまで見えていなかったことが明確になります。
基本的に、ワークフロー図の作成は各部門に依頼して、作成してもらうのがよいでしょう。また、品質マネジメントの観点から既に部門の業務がワークフロー図化されていることもあるので、有効活用しましょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
設計・製造現場を変革する3D CAD/3Dデータ活用
設計品質の向上、さらなる生産効率化など、設計・製造現場では常に厳しい要求が突き付けられている。そうした中、3D CADをはじめとしたツールの導入やより効果的な使い方を追求した組織としての取り組みも行われている。本連載では3D CAD/3Dデータ活用にフォーカスし、プロジェクト管理者がどのような視点で現場改革を推進していくべきか、そのヒントを提示する。 ◎こんなキーワードに興味のある方にオススメ:[3D CAD][3Dデータ][3D推進][3次元設計][設計品質向上][ツール導入]
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー