自動運転は実現した際に「自動車」という工業製品の枠を超えた影響を及ぼす可能性を秘めているが、その実現には必要な「10の協調」が存在する。人とくるまのテクノロジー展で行われた、経済産業省・丸山晴生氏の講演から紹介する。
「自動運転」はもはや自動車という工業製品の枠にとどまらず、トヨタ自動車が「サービスとしてのモビリティ(MaaS:Mobility as a Service)」への注力を語るなど、もはや移動という行為を取り巻くさまざまな領域に影響を与え始めている。しかし、その範囲には法律や規制など、私企業がカバーする部分を超えている部分もあり、政府の関与も欠かせないと目されている。
自動運転の影響範囲を語る際、「無人運転車が事故を起こしたらどうなるのか?」というのは言及される機会の多いテーマだが、自動運転の社会実装が投げかけるのはこうした課題だけではない。むしろ、これまで自動車とは無縁であった産業やビジネスモデルが自動運転の発芽とともに関連性を増していくことから、「自動運転を社会にどう生かすか」という大局的な視点での議論も求められる。
こうした議論の方向付けという点では、「2020年に高速道路での自動運転を可能にする」(2015年11月)などといった首相の発言が一番分かりやすい。しかし、政府としての取り組みとは、方針の提示だけではない。法制度や産業育成などの具体的な議論も必要である。ただ、粒度にもよるが各省庁の担当レベルになると、その議論は「見えにくく」なることが多い。
「人とくるまのテクノロジー展2018」には、経済産業省の丸山晴生氏(製造産業局 自動車課 ITS・自動走行推進室 係長)が登壇。自動運転に対する政府全体の取り組み、さらには経済の成長促進を役目として持つ省庁である経済産業省の立場から、どのような施策を行っているか解説した。丸山氏が説明する、自動運転車の実現に必要な「10の協調」とは。
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丸山氏は行政関与の前提となる自動運転の社会的意義として、「安全性の向上」「移動しやすくなる」「ビジネスチャンスの創出」の3点を挙げる。いずれも社会的な意義は高く自動運転を推進すべきという機運を後押しするが、前述したよう、関連する領域は非常に幅広い。
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