人工知能(AI)は組み込みの世界にとっても、無関係な存在ではなくなりつつある。FPGA大手を傘下に収めたインテルの考える「AIとFPGAの関係」とは。
さまざまな領域での活用が見込まれている人工知能(AI)だが、それは膨大なコンピューティングパワーを存分に使えない組み込み開発の世界においても無縁ではない。
AIをどう定義するかにもよるが、代表的なAI技術であるディープラーニングでは、「学習」と「推論」がセットで行われる。そして学習には、特徴点を抽出するために多くのデータとそれを処理する高い計算能力が求められる。
このディープラーニング技術を組み込み機器に“組み込みAI”として実装したいと考えたとき、「学習はクラウドやオンプレのサーバなど強大なコンピューティングパワーを持つところで行い、推論は即時性の高い判断が求められるエッジデバイス側で行う」というアプローチには説得力があるように思える。
この分離型とも呼べるアプローチにおいて、エッジ側でのFPGA利用を推進するのがインテルだ。FPGA大手であるアルテラを買収してProgramable Solutions Group(PSG)として傘下に置いた同社は、ディープラーニングの学習をXeonなどのサーバ製品で、推論をArria 10などFPGAで行う環境の整備を急ピッチで進めつつある。プライベートイベント「インテル AI Day」にあわせて来日した、PSGのディレクター Bernhard Friebe氏へインテルとAI、FPGAの関係について尋ねた。
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イベント「インテル AI Day」の檀上でFriebe氏はニューラルネットワーク開発に従事していた自身の過去を振り返りながら、「今は20年前とは違う」とAI技術が実際の産業へ展開可能な時期がようやく到来したと振り返った。
「私が過去にニューラルネットワークの世界から離れたのは、市場化できなかったからです。コンピューティングパワーもデータセットもありませんでした。それに何より、お客さんもエンジニアもAIの実用化を信じなかったからです」(Friebe氏)
しかしここ20年、いや、10年でAIを取り巻く環境は大きく変化した。Alpha Goが果たした世界チャンピオンの打倒ですら既に過去の事として扱われるほど、変化は急速で、現在も変化は続いている。最たるものが社会への実装、実用化であり、インテルはFPGAを含む多種類のシリコンチップとソフトウェアを用意し、AI技術の実用化を急ピッチで進めている。
――イベントでは「AI」という言葉が多く使われていました。ですが、AI(Artificial Intelligence)とは本来、非常に広い範囲の事象や技術を指す言葉です。インテルにおける「AI」とは、実質的にはディープラーニングを指しているのですか?
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