あなたは、友人から「私の仕事はAIに奪われるんですか!? 」と聞かれたら、何と答えますか?
少し前から、全世界的に、全産業で、人工知能(AI)が話題になっています。特に、普段は、政治経済問題や国際紛争を取り上げている週刊誌や月刊誌が、「AIの発達でなくなる仕事、生き残る仕事」のような雰囲気で読者をあおって、危機感を出そうとしています。私には、これは、高速道路でのあおり運転以上に危険な行為だと思っています。
このコラムを読んでいる方々は、プログラミング未経験者から見ればコンピュータのプロです。ソフトウェア開発エンジニアの中には、「いやいや、私は、自動車のジャイロセンサーのソフトウェアしか担当していないので、デバイスドライバやOSのことなど、知りません」とか、「Webサイトを設計していますが、TCPやUDPやFTPはよく分かりません」という人がいるでしょう。ですが、生け花の先生、フレンチレストランのシェフ、交響楽団のフルート奏者のように、日常的にプログラミングをしていない人から見ると、皆さんは「コンピュータ業界の代表者」です。医療業界の外にいる人には、医者なら、歯医者も、内科医も、耳鼻咽喉科医も、脳外科医も「分野が違っても、ほぼ同じ医者でしょ?」と思うのと同じです。
スマートフォンでメールの送受信、LINEや、Webのブラウジングはできるけれど、プログラミングをしたことがない不動産会社勤務の友人に、「『今、AIがスゴイ』と噂になっていますが、私の仕事は、これから10年、20年で、なくなるんでしょうか?」と聞かれたら、皆さんは、「コンピュータ業界の代表者」として、何と答えますか?
2015年12月2日に、野村総合研究所が『日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に〜 601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算』と題したレポート(ニュースリリース)を発表しました。
このレポートは、日本国内の全職業を601業種に分け、それぞれが、コンピュータで代替できるかどうかを分析したものです。その結果が、レポートのタイトル通り、「日本の労働人口の49%の仕事がコンピュータ化されるであろう」です。
レポートの中では、「人工知能やロボットなどによる代替可能性が高い100種の職業」として、電車運転手、事務員、警備員などを挙げ、反対に、「人工知能やロボットなどによる代替可能性が低い100種の職業」として、映画監督、医者、作曲家、ミュージシャンなど*1)を挙げています。
野村総研のレポートは、英国のオックスフォード大学との共同研究とのことで、信憑性がありそうですし、このレポート以外にも、「人工知能で淘汰される職業」をテーマにした記事は、一般読者を対象にした週刊誌やWebサイトにも、たくさん載っています。「AIで淘汰(とうた)される業種」に従事している人は、心穏やかではありません。今すぐ仕事がなくなるわけではありませんが、10年後、20年後になくなるかもしれないと聞くと、ものすごく不安になることでしょう。
心配になった友人が、ソフトウェア開発のど真ん中にいる技術者に、「私の仕事って、AIに取って代わられるんですか?」と聞きたくなる気持ちは十分、理解できますね。
*1)友人のミュージシャンによると、今は、ライブ演奏ぐらいしか需要がないそうです。特に、ドラマーが厳しいとのこと。テレビ番組のテーマ音楽やCMのバックに流れる音楽は、いわゆる「打ち込み」により、コンピュータで作り、スタジオ録音しないらしい。50人規模のオーケストラによる演奏も、一人でできてしまうそうです。
将来、AIやハードウェアが高度に発達すると、今の職業の数はどの程度、減ると予測しますか?
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