丸五|3DEXPERIENCE Forum Japan 2018
地下足袋メーカーが考えたトレーニングシューズ、その製品化と未来の靴づくりを支えるデジタル技術(2/2 ページ)
人:製品化に貢献した“人との縁”
「人」については、特にhitoeを履くことにより得られる効果のエビデンス(科学的根拠)の蓄積と、プロモーションや広報活動で人との縁に助けられたという。
「hitoeのサンプルが完成し、あるスポーツクラブに営業に行った際、初めてエビデンスが必要であることを知った。どうしたらよいか悩んでいたところ社長の紹介で、スポーツパフォーマンスデザインの代表である天野勝弘氏を紹介してもらった」と宇佐美氏。こうして天野氏の協力を得た宇佐美氏は、丸五の社員10人を対象に約1カ月間のhitoe装着実験を実施し、その効果を検証した。その結果、「足指の力が増加して、前進時の推進力がアップ。さらに歩行時の横ブレが軽減したという効果が得られた」と宇佐美氏は説明する。
また、広報活動においては宇佐美氏の高校時代の同級生であるリアルエイジ デザインディレクターの宇都宮潔氏がチラシ制作やプロモーション動画制作を支援。同時に社内の営業マンも新規開拓に奮闘し、「さまざまな人に支えられてhitoeの製品化を実現できた」と宇佐美氏。
現在:販売も順調、次期製品「hitoe2」の開発も視野に
そして「現在」。こうした努力や人の支えもあり、hitoeの販売は好調とのことで、自社でhitoeのアッパーが作れるように編み機を新規導入した他、さらなるエビデンスの蓄積にも取り組み、その内容を体育学会で発表することも計画しているという。さらに、次期製品として甲の横ブレ機能を追加した「hitoe2」の開発にも着手し始めているそうだ。
「現在はおかげさまで増産、増産と販売も順調に来ているが、開発当初はたった1人で、どんなに辛くても全て自分でやらなくてはならないし、やらなくてはエンジンが止まってしまうという状況だった。その後、少しずつ理解者が増え、一緒に育ててくれる人が1人、2人と増えていった」と、宇佐美氏は現在に至るまでの道のりを振り返る。
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今後のシューズ開発と新しい生産方式
講演の最後、宇佐美氏は今後のシューズ開発と新しい生産方式について説明。「従来のシューズ(靴)開発は、労働集約型かつウオーターフォール型で、各工程で大量のドキュメントが発生し、各部門間での折衝も存在する。また、モールド(型)製作などの関係から差し戻し(手戻り)に非常に時間がかかっていた」(宇佐美氏)という。
これに対し、宇佐美氏が新たに提案するのが、3Dデータを中心としたアジャイル型の“モールドレス”の開発方式だ。「当然、いろいろな意見もあると思う」と前置きをした上で、宇佐美氏は次のように説明する。「全てが3Dデータ中心に進み、社内外で小さなチームを作り、迅速にアイデアを実体化する方式を確立し、その中から良いモノを生み出していく。これを実現するためにも、設計を全て3D CADで行わなければならない」(宇佐美氏)
モールドレスの実現においてネックとなる大底の生産について、宇佐美氏はアディダス(Adidas)の3Dプリントシューズ「Futurecraft 4D」の事例を紹介し、「今はまだ中小製造業にとってそのような3Dプリンタは高価なものだが、将来的にゴムに代わる物性を持った安価な素材が登場すれば、モールドレスを手軽に実現できるようになるかもしれない。そうなった場合、極論を言えば、少人数で開発から生産までできてしまう」と将来のシューズ開発の姿ついて言及した。
また、これまで靴の開発製造に参入するには初期投資が大きく、量産用のモールド、ラストの製作が参入障壁となっていたが、「3Dデータ中心になると、このようなハードルがぐんと低くなり、サードパーティーと呼ばれる新規企業が靴づくりにどんどん参入してくるかもしれない」と、将来起こり得る環境変化の可能性についても触れた。
そして、3Dデータ中心の開発の実現を踏まえ、今後やりたいこととして宇佐美氏は「現在のデジタル設備で可能なサンプル製作に取り掛かり、モールドレス生産のノウハウを蓄積し、これからの時代に向けた準備をしっかりと進めていきたい」と展望を語った。
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