特集
» 2018年08月23日 08時00分 公開

アナリストオピニオン:AIで在庫の適正化を図れるか

製造業者にとって大きな課題の一つになっている“在庫の適正化”。近年、AIを用いた需要予測が注目を集め、今またその取り組みを始めようとする企業が増えつつある。本稿では、こうしたトレンドを踏まえつつ、在庫の適正化を支援する製品/サービスについて取り上げる。

[矢野経済研究所 ICTユニット,TechFactory]
矢野経済研究所 ICTユニット

関心高まる在庫の適正化

 何十年もの間、欠品や過剰在庫など、在庫の適正化が製造業者にとって大きな課題の一つになっている。在庫の適正化との関係では、近年特に、AIという新しいテクノロジーを用いた需要予測が注目を集め、今また在庫の適正化について取り組もうとする企業が増加基調にある。例えば江崎グリコが2020年をめどに生産管理システムのリプレースを進めているが、それに先駆けて2017年6月に需要予測エンジンを稼働させた。こうした例に見るように、大手企業が生産管理システム(SCM)をリプレースする際に在庫の適正化についてあらためて検討していると見受けられる事例も出てきた。


 在庫の適正化×AIで熱が高まっているのが需要予測である。しかしAIを用いずとも需要は予測できるし、AIで予測したからといって予測の精度が100%になることはないと筆者は考える。なぜなら、予告なく自社製品がTVで取り上げられ、爆発的に売れるなどといった事象は今後もなくなることはないからである。また、AIは今のところ誰もが気軽に利用できるものではない。さらに、在庫の適正化も企業にとって最終的な目的ではないはずである。在庫の適正化によるコスト削減、顧客満足度の向上など、その先の目的があるはずだ。だとすれば現時点でAIに飛び付くようなことはせず、自社の目的や製造ラインなどさまざまなことを鑑みた上でユーザーは在庫の適正化に取り組むべきである。とはいえ、勘からデータへの流れは首肯できる。

 今回、在庫の適正化を支援するいくつかの企業に取材に行った。これらの企業はそれぞれ製品の強みを持ちながら顧客ビジネスの深耕にも注力している。製造業者が扱う製品はさまざまで、また例えば同じようにせっけんを製造する事業者同士であっても、企業ごとにせっけんに対する優先順位は異なるだろう。従って各ベンダーや製品には個社と向き合う柔軟性が求められるといえる。本稿では、そのような柔軟性も兼ね備えた在庫の適正化を支援するいくつかの製品/サービスなどを紹介する。

グローバル対応と柔軟性〜東洋ビジネスエンジニアリング

 東洋ビジネスエンジニアリングが提供する製造業向けパッケージ「mcframe」の大きなコアコンピタンスとしてまず頭に浮かぶのは、グローバル対応であることおよびパッケージであるにもかかわらず柔軟なシステムであることである。製造業者は中堅以下の企業であってもグローバルを視野に入れて展開している企業が多い。そうしたこともあり、同社は2017年8月、北米にも現地法人を設立した。今後ますますワールドワイドに展開していくことが予想される。

 また、柔軟性の面について、mcframeはセミカスタムメイドを形にしている。製造業の多くにとってベースとなる機能を共通フレームワークとして提供し、各ユーザーの個性についてはフレームワーク上で追加開発し、部品として積み重ねている。基本トレーニングを積めばユーザー自身で開発することも可能なため、各ユーザーはかゆいところに手が届く、自社好みのシステムを手に入れることができる。

 同製品の今後を見る際にポイントの一つになるのが、広範なプロダクトポートフォリオである。mcframeはさまざまなシリーズがあらゆる方向に向けて有機的に連携している。そのコアこそ生産、販売、原価管理ソリューションだが、全体を見ればPLMやIoTなどユーザーのものづくりに関するプロダクトライフサイクル全般をデジタルで一元的に管理できるグローバルものづくりプラットフォームと見ることができる。そのため、同製品の機能強化も本稿で取り上げた在庫の適正管理を含め、全体最適の視点で行われていくだろう。

mcframeのプロダクトポートフォリオ(出典:東洋ビジネスエンジニアリング) 図 mcframeのプロダクトポートフォリオ(出典:東洋ビジネスエンジニアリング)

ビジネスの成功にも貢献〜富士通マーケティング

 富士通マーケティングは、在庫の適正化を図るための製品、サービス、ソリューションを複数提供している。例えば、FUJITSU Enterprise Application GLOVIA smart PROFOURS(以下「PROFOURS」)、FUJITSU Enterprise Application GLOVIA smart PRONES(以下「PRONES」)、FUJITSU Enterprise Application GLOVIA smart RTCM(以下「RTCM」)をトータルで導入し、在庫の適正化を図るユーザーも多い。これら全ての製品を自社開発している点は同社の大きな強みの一つになっている。本稿では、SCMに当たるPROFOURSについて言及することとする。

 PROFOURSは、従来の生産計画中心のスケジューリングパッケージと比較し、販売計画、需要計画、製造計画、調達計画など製造業のプランニングを総合的に管理する計画管理パッケージである。導入企業は中堅・中小企業のユーザーが多いが、製造業にとって在庫の適正化は重要な課題の一つであるため、システムに対する投資額は他の中堅・中小企業向けシステムと比較すると大きいと推察する。

図 「FUJITSU Enterprise Application GLOVIA smart PROFOURS」システム概要図(出典:富士通マーケティング) 図 「FUJITSU Enterprise Application GLOVIA smart PROFOURS」システム概要図(出典:富士通マーケティング)

欠品なき在庫削減〜キヤノンITソリューションズ

 在庫の適正化を図る一助としてキヤノンITソリューションズが提供しているのが「FOREMAST」である。同製品は科学的な需要予測に基づく在庫補充計画と、需給計画、実績情報の共有支援、問題の見える化により、欠品なき在庫削減の実現を支援するソリューションである。

 同製品の主な特長は次の5点で、(1)外れても使える需要予測システム、(2)業務と技術に精通した専門家が提供、(3)低コストで使いやすい、(4)他システムへの連携、活用が可能、(5)グローバルな多拠点を想定したシステム機能構築である。

 これらの特長のうち、中でも重要なのは(1)外れても使える需要予測システムだろう。なぜなら、予測が常に100%当たることは今後、どれだけAIが進展したとしても起こらないからである。この点、同社も在庫削減/欠品を出さないという相反する目的を同時に達成するには、需給に関わる情報をスムーズに連携、共有させ、問題点の発見から適切な対応に至る需給マネジメントを実現することが必要としている。同社は、ユーザー業務の理解に対する評価が高い。同社は今後も、ユーザー企業の業務に対する深耕などを強みに、システムやコンサルティングなどで、この需給マネジメントを実現し、需給、管理、業務効率の面からユーザービジネスを支援していくものと推察する。

図 FOREMAST概要図(出典:キヤノンITソリューションズ) 図 FOREMAST概要図(出典:キヤノンITソリューションズ)

Copyright© YanoICT All rights reserved.

Loading