海外人件費高騰などから、製造業の国内回帰が話題となった時期があります。すんなり国内へ引き戻せればよいですが、既に国内事業所が縮小されていたら……?
先日、G-SHOCK等の生産を手掛ける山形カシオ(山形県東根市)を訪れる機会がありました。目的は2018年内に本稼働する、低価格デジタル時計の自動化ライン見学ですが、現場の方に話を聞いて印象深かったのは「モノづくりを定着させること」の難しさでした。
カシオ計算機は1980年代まで、山形や山梨、愛知などに居を構える国内事業所にて生産のほとんどを行っていました。ですが、国内人件費の高騰や輸出を念頭にした生産計画などの理由から、徐々に海外メーカーへの委託を含めた海外生産(EMS生産)を進めます。その結果、2000年代前半に、国内の自社生産比率は30%程度まで低下しました。
国内自社生産でなくとも競争力を維持できていれば問題なかったのでしょうが、徐々に海外での委託製造コストも上昇し、コスト面でのメリットは薄れていきました。加えて、委託先の都合で少数多品種生産を受け付けてもらえなくなる事態も増え、商品力という観点からも危機が迫ったのです。
2010年代半ばには、同様の悩みを抱えた企業による「製造業の国内回帰」が話題となりました。人件費と為替レートを勘案すれば、国内生産に切り替えた方が得策だという考えです。しかし、カシオ計算機は他社のような国内回帰はできませんでした。海外メーカーへの委託比率を高めた際、山形カシオを除いて国内の製造拠点を閉鎖していたからです。
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