前編で紹介した、テスト技術者の教育とテストの普及をどうすればよいのかも、解決しなくてはならない大きな問題である。近未来において、テスト技術者はますます求められ、そのスキル向上をどのようにするか、テスト文化をどのように発展させるかが急務になってくる。一子相伝のような家元制度では立ち行かなくなることは目に見えている。
これを解決する最初の一歩は、大学での教育である。大学でテスト技法を学び、その実践を大学で行う。これだけでも未来が明るくなるだろう。言い換えれば、現在の大学におけるソフトウェアテストの実践は弱いものである。
その多くはPBL(Project Based Learning)の一部に組み込まれるだけで、テストそのものをPBLで実践しない。これでは運良く(?)バグが出なかったチームはテストの実践が抜けてしまう。さらに言えば、テストの実践だけでも不十分で、テストの文化も啓蒙・教育し、ソフトウェアエンジニアの間に普及させなければならない。ここでは大学での教育を取り上げたが企業においても同様である。
一方、セキュリティに関心が集まり、情報処理安全確保支援士などの資格なども多く出てきているが、テスト技術者も同様に高度な資格と監視する体制が必要になるだろう。コンピュータ安全士の資格はテスト技術者にこそふさわしい名称である。
A:「大学でのテスト教育をディスってますけど、責任転嫁ぽいような……」
B:「いや大学に期待しているからこそだ。泥臭く汚い話と、清く美しい話のギャップ萌えだ」
A:「え?先輩、変態なんですか。そんなことより、テストは泥臭いんですか?」
B:「泥臭いのはプログラミングの方だ。テストは清く美しいんだ。女神様だ」
ソフトウェアのあるべき姿として、記録と計測、コストと品質、教育の面で見てきたが、これからのソフトウェアテストにはあるべき姿として、まだまだ多くのものが必要である。大きいところでは日本としてのソフトウェア品質の確保や会社組織としてのテスト体制から、小さいところではテストツールの連携などいろいろある。これからもソフトウェアテストの未来を信じて、その発展に尽くしていき、その恩恵に預かろう。
五味 弘(ごみ ひろし):OKI(沖電気工業) シニアスペシャリスト、エバンジェリスト。博士(工学)。
ソフトウェアの開発支援・教育に従事。電子情報技術産業協会(JEITA)専門委員会の委員長や情報処理振興機構(IPA)などの委員など。情報処理学会(シニア会員)。三重大学などの非常勤講師やリサーチフェローも務める。IoTやAI時代のソフトウェア開発の知見融合が関心事。
著書に『はじめてのLisp関数型プログラミング』(技術評論社、2016年)、共著書に『IoTセキュリティ』(日経BP社、2016年)、『定量的品質予測のススメ』(オーム社、2008年)、『プログラミング言語論』(コロナ社、2008年)などがある。雑誌執筆や講演なども多数。著者の個人サイトはhttp://gomi.info/。
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