DeNAが徹底解説
トヨタも取り組む次世代モビリティ戦略の一手、「MaaS」とは何か?(1/3 ページ)
自動運転やコネクテッドカーといった自動車技術の発展と同時に、ライドシェアに代表されるサービスとしての乗り物「MaaS(Mobility as a Service)」への関心が高まっている。このMaaS市場に向けて各種モビリティサービスを手掛けるディー・エヌ・エー(DeNA)が、MaaSの概要とその可能性について事例などを交えて解説した。
MaaS(Mobility as a Service)とは? 市場動向や事例、可能性を解説
都市交通における渋滞や、物流のドライバー不足といった社会問題の解決策として期待が寄せられる「MaaS(Mobility as a Service:サービスとしてのモビリティ)」。その市場は、2050年に約331兆円規模になるともいわれており、自動運転、ライドシェア、コネクテッドカーといったモビリティに関する新しい技術やサービスを包括するMaaS市場への関心は日に日に高まっている。
また、MaaSというと「2018 International CES(CES 2018)」でトヨタ自動車が発表したMaaS専用次世代電気自動車(EV)「e-Palette Concept」が記憶に新しい。移動だけでなく、物流や物販といった“各種サービス”に対応する新たなモビリティを提案するものとして注目を集めた。
こうしたトレンドを受け、2018年3月27日、ディー・エヌ・エー(DeNA)は報道関係者向けのMaaS勉強会を開催。日産自動車と取り組んでいる「Easy Ride」、ヤマト運輸と取り組んでいる「ロボネコヤマト」など、モビリティサービスに関する各種事例を手掛けるDeNAの執行役員 オートモーティブ事業本部長の中島宏氏が「新たなモビリティサービスが形成する『MaaS市場』」をテーマに、MaaS市場の概要や動向、その可能性について詳しく解説した。本稿では、その内容をレポート記事として取り上げる。
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ケータイの進化になぞらえて考えるモビリティの現在地
中島氏は勉強会の冒頭、モビリティ(自動車)業界の現状と進化について、その過程をケータイ(携帯電話機/スマートフォン)の歩みになぞらえ、「モビリティの場合、ちょうど今、コネクテッドされる(ネットワークにつながる)クルマがリリースされ始めているタイミングなので、ケータイの歴史でいう“『i-mode』前夜”といったところだろう」と述べる。
では、その進化の先に何があるのか。中島氏は、ケータイ、厳密にはスマートフォンの進化の過程において、大きな変革を起こしたとされるソーシャルゲームを例に次のように説明する。「ソーシャルゲームの市場成長は一過性のものではなく、“ソーシャルゲーム”という新たな市場を作り出し、なおかつ既存のTVゲーム市場の拡大にも寄与した。そして、既存市場ではまとまった時間をTVの前に座って消費してもらうことが重要だったが、ソーシャルゲームではそのような時間の概念を大きく変えた」(中島氏)
ソーシャルゲームの場合、隙間時間に数分単位で何回接触してもらうかが重要であり、この概念の変化と端末の多用途化によって、スマートフォンはハードウェアとしての価値そのものよりも、“サービスとしての価値”の比重を高めていった。中島氏はこれを「ケータイ as a Service」と表現。「ケータイと同じようなことが、この先15年、20年かけてモビリティの世界でも起こっていく。そして、モビリティがモノとしてではなく、サービスとして認知される時代が訪れるだろう」と、モビリティの進化の大枠について中島氏は説明する。
また、カーシェアリングの利用が拡大すると、既存の自動車市場を食いつぶすのではないか? という議論をよく耳にするが、中島氏はこれを否定する。「カーシェアの一般化によって、クルマを購入しなくなる人がある一定数いるかもしれないが、その数よりも、これまでクルマを使ってこなかった人たちがクルマを使うようになること、そうした人たちを自動車市場に呼び込める総量の方が多くなるため、既存市場を食いつぶすどころか、プラスにつながると考えている」(中島氏)という。
もちろん、ケータイとモビリティは異なる。「そこで参考とすべきなのが、1960年代のモータリゼーションだ」と中島氏は述べる。当時、クルマ(乗用車)が普及し、法律やインフラが整備され、高度経済成長が後押ししてレジャーが拡大していった。これにより人々のライフスタイルや社会システムも大きく変化し、「郊外に一戸建てを購入する層が増え、道路が整備されてショッピングモールも発展。クルマで出掛ければワンストップで必要なものが全て購入できる環境が整い生活レベルが向上した。この1960年代の変化は、ケータイが発展してスマートフォンになり、音楽やゲームといったコンテンツ、小売や流通といった業態が変化(サービス化)していった過程に非常に似ている」と中島氏は指摘する。
そして、2020年にかけて激変期を迎えるとされる自動車産業は、「モータリゼーション 2.0」が起こるといわれており、新たなライフサイクル、新たな社会システムの変化が待ち受けている。
「2020年に向けて、モビリティが世の中にどのような影響を与えるのか、モータリゼーションという文脈の中で考えることが重要になってくる。実際、周辺産業の代表格であるタクシーや運輸業界の方々は、既にこうした変化に敏感になっており、自ら変わっていかなければならないという認識を持ち始めている」(中島氏)。ケータイの進化においては、ゲームや流通といった「まさか」と思われる業態までもが大きく変化していった。モビリティにおいて、どこまでを周辺産業として定義するのかは難しいが、いずれにせよ大きな変革を伴うことは間違いないだろう。
では、今回の勉強会の主題であるMaaSとは何か? この問いに対して中島氏は、「スマートフォンの画面が、カーナビ(車載情報端末)の画面に映し出されること――。これを称してMaaSという人が少なからずいる。いわゆるインフォテインメントの領域に当たるが、これは(広義には)MaaSの仲間に入るかもしれないが、枝葉の話でしかない。クルマの中で『YouTube』や『Netflix』が見られることはMaaSなのか。単にデバイスが、スマートフォン、PC、クルマと変化しただけのことだ。狭義においてこの考えは外すべきであり、そうしないとMaaSの全体像を考える際に混乱を招いてしまう。MaaSの本丸は“乗り物のサービス化”である」と主張する。具体的には、従来クルマという乗り物(=ハードウェア)を購入して、個人で使用したり、運輸業や旅客業を行ったりしていたわけだが、「それらが“サービス化する世界”のことを、MaaSの本丸だと理解する方がモビリティサービスを体系立てて考えやすい」と中島氏は述べる。
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