ISID CAEフォーラム 芝浦メカトロニクス/JDI|事例
速度と費用の関係は? 利便性と安全性の確保は? 「クラウドCAE」を徹底検証(1/2 ページ)
モノづくりにおいて解析可能な規模が拡大する一方で、そのために必要なハードウェアを整備する負担も大きくなっている。そこで検討されているのが従量制のクラウドCAEである。スケールメリットを得やすく、季節変動への対応にも役立っているという。
電通国際情報サービス(ISID)は2017年11月9日に「ISID CAEフォーラム “Think CAE,2017”」を東京コンファレンスセンター・品川において開催した。セッションの1つ「ここまで進んだクラウドCAE活用の実態」から、ISIDのAWS EC2をベースにした従量制クラウドCAEプラットフォーム「PLEXUS CAE」の検討例について語った、芝浦メカトロニクスとジャパンディスプレイ(JDI)の講演内容を紹介する。
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スピン洗浄装置のCFD解析をクラウドで|芝浦メカトロニクス
芝浦メカトロニクス 技術本部 研究開発グループ 主査の山崎修氏は、半導体製造工程で使用するスピン洗浄装置の流体解析をクラウド上で行い、計算速度や費用について検証した結果を紹介した。
スピン洗浄装置の構造は図1のようになる。
洗浄液は上方のノズルからウエハーに吹き付けられ、回転テーブルの遠心力によってウエハー上に広がり、外周に排出される。ウエハー端では液の振り切りによってミストが発生し、その大部分がカップで受け止められる。この一部が再びウエハー上に移動して付着した場合、デバイス不良の原因になる。これを防ぐことが装置設計のポイントになる。
そこで同社では、チャンバ内における液体および気体の流れのシミュレーションに取り組んだ。しかし非定常かつ複雑なモデルになるため、従来の環境では1回の計算につき1カ月以上かかっていた。そこで、クラウド型サービスのPLEXUS CAEの検討を開始した。
流体解析に使用したのは、シーメンスPLMソフトウェアの「STAR-CCM+」である。今回はクラウド向けライセンスのPower on Demand(PoD)を用いた。PoDライセンスはプリペイド方式で、使用時間に応じて消費される。使用するコア数に制限はない。AWS EC2については、PLEXUS CAEでコア数が最大256個まで利用可能な「c4.8xlarge」を選択した。PLEXUS CAEの料金体系は、初期費用、基本料金、そして計算機数(1台当たり最大16コア)と時間の積である計算利用料を合わせたものになる。
解析ソフトの並列効率が100%であれば、並列数が増えるほどSTAR-CCM+とPLEXUS CAEの合計費用は低下する。だが実際は並列化により効率が低下するため、コア数が一定以上になると費用は上昇する。
山崎氏は検証モデルとして、物体は固定して気流のみを回転させる簡易的な手法(テスト1)、スライディングメッシュを使用したより正確な手法(テスト2)、スライディングメッシュモデルに液膜モデルとラグランジェ混相流モデルを加えてミスト挙動を解析する手法(テスト3)の3ケースの結果を紹介した。
STAR-CCM+の設定は、3次元陰解法非定常解析で非圧縮モデル、k-εモデル、ポリヘドラルの320万メッシュである。給気フィルターからの空気のダウンフローは毎分2.2m3、回転テーブルの回転数は1200rpmである。
複雑さの異なるモデルについてスピードと費用を検証
テスト1では、解析速度は256コアまで、ほぼリニアに増加した。256コアだと自社内ワークステーションのシングル動作と比較して190倍の速度になり、費用も最も小さかった。特別に1024コアまで検証したところ、512~1024コアでは速度の増加率は鈍るものの、1024コアで400倍にまで達した。なおテスト1のモデルでは同心円以外の形状の回転は正しく解析できない。
テスト2では、64コアあたりから速度の増加率は鈍るが、256コアでも計算速度はシングルコアの49倍だった。最も安価な条件は64コアで、計算速度は31倍だった。なおこのモデルでは気流のみの解析のため、チャックピンに押された空気が上方に押し出されて吹き上がっている様子を確認できるが、ミストの挙動に関しては推測までしかできない。
テスト3の解析結果を可視化したのが図2である。
このモデルでは、液膜モデルによりウエハー面とチャックピンにおける洗浄液の流れを求め、ラグランジェ混相流モデルでミストの輸送を計算する。ウエハーのエッジとチャックピンの外周側は液膜が非常に厚くなり、ここからミストが飛散することが確認できた。特にチャックピンから発生したミストは、上方向の空気の流れに乗って装置上部まで到達する。このミストは重力で沈降し、ウエハーに付着すると考えられる。最大速度になったのは160コアで、速度は38倍、最も安価な条件は64コアで31倍だった(図3)。
以上の結果より、いずれのモデルでもシングル動作の数十~数百倍の速度となり、計算速度向上の面でクラウドは効果的であることを確認した。なお、テスト1における256コア以上のスピード向上を見ると、料金が上がっても十分ペイすると感じたため、今後の改善としてコア数増加の対応を期待するということだ。
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