ISID CAEフォーラム 芝浦メカトロニクス/JDI|事例
速度と費用の関係は? 利便性と安全性の確保は? 「クラウドCAE」を徹底検証(2/2 ページ)
フラットパネルディスプレイの高速構造解析を検討|JDI
ジャパンディスプレイ(JDI) 技術開発統括部 CAD/CAE技術課 技術主任の大坂英幸氏は、フラットパネルディスプレイの開発において、利便性やセキュリティ面で工夫しながらクラウドCAEを導入した事例を語った。なお大坂氏が所属するCAD/CAE技術課のCAEチームはCAE専任者の組織である。今回の検討は、初期段階から自社IT部門、ISIDと共同で進めていった。
ディスプレイのシミュレーションにおける特有の問題は、厚さ方向と平面方向とのスケール差が非常に大きいことである(図4)。これにより精度を確保しようとするとメッシュ数が増大する。またスマートフォンなどは季節変動があり、月々により必要とされる計算リソースの変動も激しい。また自社サーバも老朽化と性能の陳腐化が起こっていた。
そこで同社は、CAEリソースのクラウド化を検討することにした。クラウド化に当たって懸念された点は、既存の解析ツールのライセンスを活用できるか、使い勝手、そしてセキュリティリスクである。これらの懸念点をクリアし、かつ需要変動に柔軟に対応できるかどうかを基準にして、検討を進めていった。
クラウド選定に当たっては、IaaSからSaaSまでの調査を行った。IaaS型については、実は同社のIT部門で既にAWSを使用していた。AWSはシェアナンバーワンのスケールメリットがありハードウェア面では柔軟性があるが、サーバ管理がやや発生し、ライセンスは別途調達しなければならない。メリットとしては、専用回線接続のため安全性と高速性が確保される。
SaaS型については、移行しようとするソフトウェアの持ち込みと従量課金利用ができることから、PLEXUS CAEを検討した。ハードウェア面やライセンス面で突発的な需要に対応でき、サーバ管理もなくなるというメリットがある。一方コストが高くなること、またセキュリティ面とデータ転送速度について不安があった。
両方のいいとこ取り
そこで検討したのが、両案の“いいとこ取り”である。IT部門より、どちらもAWSなのでVPCピア接続はどうかという提案があった。VPC(Virtual Private Cloud)は特定組織専用の仮想ネットワーク領域であり、VPCピア接続は2つのVPC間を接続し、同じネットワーク内に存在しているかのように相互接続を可能とする。VPCピア接続であれば、セキュリティと転送速度に対する懸念はなくなりコストも下げられる。検証の結果、このハイブリッド案を採用することにした。なお調査を開始したのは2016年7月で、その後9カ月で本格稼働に入った。
導入構成は図5のようになる。第1のポイントは、JDI-VPCとPLEXUS-VPCを、AWSを介したプライベート接続にしたことである。これにより、ファイル転送の高速化とコストおよび運用工数を最適化し、PLEXUS CAEを自社内サービスのような使い勝手で利用できるようになった。第2にJDI、ISIDともにアクセス制限を実施し、JDIとPLEXUS CAEの通信はAWS内のみに限定して、セキュリティリスクを最小限に抑えた。
第3にAWS上の可視化端末へのリモート接続にはNICE DCVを利用し、画面転送の高速化によりローカルと同等の使い勝手を確保した。第4に計算・ライセンスサーバはPLEXUS CAE側に配置し、ハードウェア/ソフトウェアともに可能なものは従量課金で利用できるようにした。
JDI管理のAWSについてはIaaSの特徴ともいえるが、管理工数が増え使い勝手はやや低下した。PLEXUS CAEのサーバ運用に関しては、稼働直後は特殊な接続に起因するトラブルが発生したものの、安定稼働後はトラブルもなくなり、費用管理以外の管理工数はほぼゼロとなった。計算時間に関しては、従来サーバに対して平均で30%高速化した。
計算時間短縮の効果と従量課金サービスの活用により、2017年の半年間の月当たりの計算ジョブ数は前年度比で平均1.9倍、ピーク時2.7倍を実施、所有ライセンス数は前年度と同じながら、大幅に計算能力を増強した。また、同期間のコストについては、クラウド化により約27%削減できた。
セキュリティやコストバランスを考慮してPLEXUS CAEとAWSを活用することにより、一部課題は残るものの、必要なときに必要な分だけ利用できるオンデマンドのシステムを構築できた(図6)。これによって新製品の開発期間の短縮、高速設計に貢献したということだ。
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