製造業の現場でもデザインレビューやトレーニングなどの領域において、VR(仮想現実)の活用が進みつつある。3Dデータをバーチャル空間上に表示することで、実物が目の前にあるかのような体験が得られるVRだが、視聴覚による情報だけでは物足りなさを感じるケースもある。このギャップを埋めるべく、exiiiが開発したのがVR向け触覚ウェアラブルデバイス「EXOS」だ。
筋電義手「handiii」や同技術をオープンソース化した「HACKberry」プロジェクトで一躍有名になったスタートアップ企業のexiii(イクシー)。2016年11月に筋電義手に関する事情をNPO法人に移管した後、彼らが次の主戦場に選んだのはVR(Virtual Reality:仮想現実)である。
2017年1月にVR向け触覚ウェアラブルデバイス「EXOS(エクソス)」の基礎技術を発表。開発を継続しながらユースケースを募り、製品化に向けてまい進してきた。そして、さまざまな要求や意見を吸収し、2018年2月、世に送り出されたのが触覚ウェアラブルデバイス「EXOS Gripper DK1」(以下、グリッパー)と「EXOS Wrist DK1」(以下、リスト)である。
グリッパーは、その名の通り、指の開閉方向への力をフィードバックすることで、手でモノをつかむ感覚を再現する。一方、リストは前後、左右の2方向への力を手首にフィードバックすることで、VR内のオブジェクトに触れる感覚を再現する。「HTC VIVE」や「Oculus Rift」といった主要なVRシステムと組み合わせて利用することで、既存のVRコンテンツなどを有効活用した形で、“VR×触覚”による新たな体験が得られる。
そして、この2つのデバイスと同時に発表されたのが、「『CADデータに触れる』3Dデザインレビューシステム」で、日産自動車が初期のデザインレビューにおいて採用を検討していることが明らかとなり大きな話題となった(関連記事:日産も導入を検討、CADデータに触れられる3Dデザインレビューシステム)。
今回、exiii CEOの山浦博志氏と、COOの金子大和氏にEXOSの狙いや優位性、プロトタイプから製品化までの変遷などについて詳しく聞いた。
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――なぜ、VR向け触覚ウェアラブルデバイス「EXOS」を開発するに至ったのか?
金子氏 VRのコンセプトは、現実世界と遜色のない空間をシミュレートすることだ。現状、それは視覚と聴覚によって実現されているが、用途によっては不十分で、視聴覚のみで得られる没入感や情報に物足りなさを感じるケースがある。そのギャップを埋める手段として触覚に着目した。市場的に見ても、触覚デバイスの市場は伸びていく傾向にあり、AR/VRヘッドセット市場の今後の伸びも期待されている。バーチャルオブジェクトを扱うことが当たり前になってくると、必ず触れることへのニーズが高まってくる。
山浦氏 近年、VR技術が盛り上がっているが、われわれはそれが一過性のものではなく、当たり前のように3Dのバーチャルオブジェクを扱える世界が必ず訪れると確信している。そうなったとき、バーチャル世界のオブジェクトを現実世界と同じように扱いたい、触りたいというニーズが生まれてくる。バーチャルオブジェクトを自然に触れる、インタラクションできるような世界を作るべく、exiiiはVR向けの触覚ウェアラブルデバイスの開発に取り組んでいる。
――「EXOS」のターゲット、利用シーンとはどのようなものか?
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