IoTとAI、ビッグデータ時代のソフトウェアテスト(4)
ソフトウェアテストの手法と施策(中編) 幸せになれるソフトウェアテストの選び方(5/5 ページ)
テストコストと品質の選択に影響を与える要素
網羅基準を強くしたり、手法を1個だけでなく複数使えば、それだけ品質は向上するが、コストは掛かる。どれだけのコストを掛け、どれだけの品質を求めるかはプロダクトに強く依存する。これはまさにソフトウェアテストの原則の1つである「テストは条件次第」である。
重要プロダクトなら2倍のコストを掛け、コストを重視する場合(あまり品質を気にしなくていい場合)は通常コストの半分にするなどの基準を作る。この基準はプロダクトの寿命も影響を受ける。長寿命のプロダクトは派生開発や並行開発がされやすく、高い品質が求められ、コストも多く掛けても文句は言われない。
プロダクトの規模も基準に影響を与える。大規模なプロダクトであれば、品質は指数関数的に高いものを求められる。2倍の規模になれば4倍くらい高い品質を求められる。技術的なことだけでなく、営業戦略や経営方針なども、このコストと品質の決定に影響を与える。このように選択に影響を与えるプロダクトの性質は多々ある。
テスト手法を選択する
ブラックボックステストか、ホワイトボックステストかの選択はほぼ決まっている。単体テストのときはホワイトで、結合テスト以降はブラックになる。そしてホワイトは機械的にできるのでブラックな作業ではない。一方ブラックは終わりがなく、キリがなく、帰れないので、まさにブラックである。
組み合わせテストが向いているのは入力が静的に固定的に決まっていて、その出力も決まっているときである。しかし組み合わせ数があまりにも多くなるか、逆にあまりにも少ないときは、組み合わせテストには不向きである。例えば画面入力が10数個程度のときは組み合わせテストが向いている。組み合わせテストは比較的多くの場面で使える手法なので、まずはデフォルトで組み合わせテストを使ってみることを勧める。
組み合わせテストを選択したときに、次は同値分割法にするのか、境界値分析、デシジョンテーブル、オールペア法、直交表などのどれを使うかを選択する。
デシジョンテーブルは途中経過も記録に残し、オールペア法や直交表も入力と出力を決めるところまでは共通なので、デシジョンテーブルをデフォルトにするのがいいだろう。デシジョンテーブルを作って人間が組み合わせを考えるのか、オールペア法や直交表のツールを使うのがいいかは、テスト技術者のスキルにも依存する。
高度なテスト技術者であれば、ツールを使うよりも手動で作った方がいいテストケースが作れ、バグも見つかるだろう。しかし平均的なテスト技術者であれば、ツールを使う方がいいだろう。また規模が大きくなると人間では無理になる。教科書的な言い方をすれば、ツールで生成した組み合わせテストを人間が調整して相互補完する。まさにツールとハッカーは使いようである。これらの選択を図2に示す。
とあるテスト現場より(5)
A:「テストっていろいろあるんですね。どれを選べばいいか、分からないです」
B:「迷ったときのデフォルトを決めておくのが手だな。迷ったらデシジョンテーブル!」
A:「今日の昼ごはんに迷ったら、シーチキンマヨということですか」
B:「いや、もっと迷おうよ」
テスト方針を選択するとき
テスト方針はソフトウェアの開発方針の大きな柱である。テストのコストと品質のバランスだけでなく、テスト運営やテストの完了に関することなどを方針の形で決めていく。最近はDevOps(開発と運用を並列に戦略的に行う)の考えもあり、開発とテストだけでなく、運用とテストも同時に方針を立てる必要がある。
次回は技術者個人として、プロジェクト運営として、会社全体の経営として、テスト施策をどのようにしていくのがいいのかを見ていくことにする。
著者紹介
五味 弘(ごみ ひろし):OKI(沖電気工業) シニアスペシャリスト、エバンジェリスト。博士(工学)。
ソフトウェアの開発支援・教育に従事。電子情報技術産業協会(JEITA)専門委員会の委員長や情報処理振興機構(IPA)などの委員など。情報処理学会(シニア会員)。三重大学などの非常勤講師やリサーチフェローも務める。IoTやAI時代のソフトウェア開発の知見融合が関心事。
著書に『はじめてのLisp関数型プログラミング』(技術評論社、2016年)、共著書に『IoTセキュリティ』(日経BP社、2016年)、『定量的品質予測のススメ』(オーム社、2008年)、『プログラミング言語論』(コロナ社、2008年)などがある。雑誌執筆や講演なども多数。著者の個人サイトはhttp://gomi.info/。
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IoTとAI、ビッグデータ時代のソフトウェアテスト
言うまでもなくソフトウェアテストは重要だが、IoTやAIなどの新しい概念によってソフトウェア自体の在り方が変わりつつある中、旧来からのテストを踏襲するだけでは成果は得られない。新時代のソフトウェアテストについて、考察する。
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