IoTとAI、ビッグデータ時代のソフトウェアテスト(1)
ソフトウェアテストのコストと品質(前編)―「テストの究極の問題」を考える(4/5 ページ)
テストを支配するもの
ソフトウェアテストには7個の原則がある。これは国際的なテスト資格認定団体である「ISTQB」(International Software Testing Qualifications Board)が定義したもので、以下のようになっている。原則の説明は開発現場目線で分かりやすくするため、少しオーバー気味に書いている。これを上から目線で再考してみるのも面白いだろう。
- 原則1:テストは欠陥があることしか示せない
1万回テストをしても、1万1回目にバグが出るかもしれない。これは次の原則2から導かれる悲しい原則であるが、これをエンジニアだけでなく経営者も顧客も受け入れる必要がある悲しい事実である。
- 原則2:完全なテストは不可能
2個の整数の足し算のプログラムでさえ、完全なテストはできない。2個の整数の全組み合わせは膨大な数になるし、それよりも整数でない無効系データはもっと大変な組み合わせ数になる。そんなテストは開発現場でやってられないし、上から目線的にも考えられない。結局、完全なテストはこの世には存在しない。原則1と同様に人類はこの事実を受け入れるべきであると、ここでは大げさに言ってみる。
- 原則3:初期テスト
テストに限らず、何事も初めの内に確認しておく方がいい。後でミスが見つかっても後の祭りである。これは実感があると思う原則である。とどのつまり、人間はミスをしやすいもので、早め早めにテスト、常にテストを必要とする生物である。
- 原則4:欠陥の偏在
下手なプログラムでは、バグはゴキブリのように固まって出てくる。これは下手なプログラマーが下手に作るのが原因である。また技術レベルが同等であれば、アルゴリズムの難しさの違いから、結局、欠陥は偏ることになる。これも実感があるであろう原則である。上から目線的にも重要な原則である。
- 原則5:殺虫剤のパラドックス
害虫に同じ殺虫剤を使い続けると、虫が耐性を得てしまい、やがて殺虫剤が効かなくなってしまう。同じことがプログラムのバグ(虫)でも起こる。もちろんバグが進化したのではなく、それを作ってしまったプログラマーが進化して、その殺虫剤(テストケース)だけは通るように作ってしまうからである。開発現場では、適当に殺虫剤を変えて、つまりテストケースを変えて、もっと言えば、テストケースを作る人を変えるのが吉である。上から目線では適当に人事異動をするのがいいということである。
- 原則6:テストは条件次第
テストは完全にはできない(原則2)ので、テストはどこかで止める必要がある。その完了基準はどんなシステムかで変えるべきである。もっと言えば手を抜くべきである。これは上から目線で重要の中の重要である。経営資源を悪平等にするべきでない。もちろん開発現場目線でも、自分のリソースをどのようにテストに配分するかは重要である。
- 原則7:バグゼロの落とし穴
バグゼロが究極の目的ではなく、使ってもらえることが究極の目的である。本末転倒してはいけない。例えば、どんなにバグがあってもそれを運用で回避してさえ使いたくなるものを作ることが一番である。これは上から目線では究極ともいえる原則であり、これを制するのが経営方針である。開発現場目線では難しい原則であり、どうしてもバグゼロを目指しがちになる。エンジニアの性というものである。
とあるテスト現場より(5)
A:「先輩、殺虫剤のパラドックス以外はまぁ常識ですよね」
B:「そうだね」
A:「先輩、顧客にはどう説明するですか?」
B:「それはもちろん『テストを完全にやりましたので、このシステムはバグゼロです』と言うんだ」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
IoTとAI、ビッグデータ時代のソフトウェアテスト
言うまでもなくソフトウェアテストは重要だが、IoTやAIなどの新しい概念によってソフトウェア自体の在り方が変わりつつある中、旧来からのテストを踏襲するだけでは成果は得られない。新時代のソフトウェアテストについて、考察する。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] 自動車業界には好機 脱炭素×コスト削減×現場改善を実現するエネルギー戦略 -
製品資料
[株式会社 Green AI] 脱炭素投資をすぐ回収したい 自動車業界にも有効なCO2削減アプローチ -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
スマート工場動向調査2026
-
2
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:製造現場にフィジカルAIをどう実装するか――電子版2026年9月号
-
3
はじめての化学工学まとめ(Part1)
-
4
ナフサショックの影響が分かる記事まとめ(Part1)
-
5
動き出したファナックの「フィジカルAI」
-
6
SiC・GaN時代のパワー半導体開発、信頼性評価と故障解析の課題にどう対応する?
-
7
Waymoの自動運転技術に迫る
-
8
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
9
【読者調査結果】製造業の脱炭素動向調査2026
-
10
ものづくり白書2026を読み解く
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー