IoTとAI、ビッグデータ時代のソフトウェアテスト(1)
ソフトウェアテストのコストと品質(前編)―「テストの究極の問題」を考える(5/5 ページ)
原則と導ける定理を、開発現場と「上から目線」でどう生かすか
この原則からいろいろなテストに関する定理・法則が導ける。例えば、原則1の「テストは欠陥があることしか示せない」から、テストは欠陥を発見する過程であるという定義の説得力が高くなる。原則2の「完全なテストは不可能」から、テストを途中で打ち切る必要があり、そのためのテストの完了基準が重要になってくることが分かる。原則6の「テストは条件次第」から、どのプロダクトやプロジェクトにどれだけのコストを掛けるべきかを判断する必要があるのが分かる。
この原則とそれから導ける定理をどのように運用していくか。開発現場と「上から目線」でこれらの原則と定理をどのように捉えて、どのように開発と経営に使っていくのか。反発していくのか、協調していくのか。これが問題である。
一方であまり役に立たない、かえって有害になる原則もあることに注意する。例えば、原則3の「初期テスト」である。
確かに初期にテストすることは望ましい場合も多くある。初期にテストをすることで曖昧だった仕様も具体的なテストケースを作ることで明確になるかもしれない。しかし逆に考えれば、柔軟な仕様変更、つまり初期のテストケースの変更を許さない雰囲気も出てくる。つまり初期テストに引っ張られてしまって、その後の仕様変更や仕様拡張の障壁になってしまう危険がある。これは開発現場だけでなく上から目線で解決すべきである。
アジャイルソフトウェア開発ではテストファーストが原則の1つにもなっているが、これは多種多様な条件が入り乱れ、仕様が動的に変更され、全体像を虫眼鏡で見るようなことになりかねず、IoTやAI、ビッグデータの時代には合わなくなっているかもしれない。新しい初期テストの原則を開発現場と上から目線で作る必要がある。
とあるテスト現場より(6)
A:「先輩、テストファーストがdisらてますけど、どうなんですかね」
B:「初心者にはテストファーストで、慣れてくればセカンドかな」
A:「先輩、じゃ、自分はテストセカンドで行きます」
B:「いや、それよりもちゃんとテストをしろ」
続く後編ではいよいよ、ソフトウェアテストの問題を見ていくことにする。その中で最大の問題であるテストコストと品質のバランスについて一緒に考えていくことにしたい。もちろん「上から目線」で。
著者紹介
五味 弘(ごみ ひろし):OKI(沖電気工業) シニアスペシャリスト、エバンジェリスト。博士(工学)。
ソフトウェアの開発支援・教育に従事。電子情報技術産業協会(JEITA)専門委員会の委員長や情報処理振興機構(IPA)などの委員など。情報処理学会(シニア会員)。三重大学などの非常勤講師やリサーチフェローも務める。IoTやAI時代のソフトウェア開発の知見融合が関心事。
著書に『はじめてのLisp関数型プログラミング』(技術評論社、2016年)、共著書に『IoTセキュリティ』(日経BP社、2016年)、『定量的品質予測のススメ』(オーム社、2008年)、『プログラミング言語論』(コロナ社、2008年)などがある。雑誌執筆や講演なども多数。著者の個人サイトはhttp://gomi.info/。
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IoTとAI、ビッグデータ時代のソフトウェアテスト
言うまでもなくソフトウェアテストは重要だが、IoTやAIなどの新しい概念によってソフトウェア自体の在り方が変わりつつある中、旧来からのテストを踏襲するだけでは成果は得られない。新時代のソフトウェアテストについて、考察する。
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