ユーザーレポート
SOLIDWORKS World 2019で見たシミュレーション最新動向(1/2 ページ)
SOLIDWORKSユーザーである筆者は、米国テキサス州ダラスで開催された「SOLIDWORKS World 2019」に参加。新戦略「3DEXPERIENCE.WORKS」によりSOLIDWORKSと3DEXPERIENCEプラットフォームとの連携がより強固に、より手軽になることが明かされた。本稿では、こうした一連の動きの中からシミュレーション領域にフォーカスし、最新動向をレポートする。
筆者は2019年2月10~13日(現地時間)、米国テキサス州ダラスで開催された「SOLIDWORKS World 2019」(以下、SWW2019)にユーザーとして参加した。今回のメインテーマは“Where Possibility Takes Form”である。
既報の通り、新戦略「3DEXPERIENCE.WORKS」が大々的に発表され、SOLIDWORKSとダッソー・システムズの3DEXPERIENCEプラットフォームとの連携が、今後より強固なものになることが示された(関連記事:新戦略「3DEXPERIENCE.WORKS」はSOLIDWORKSを次なるステージへと押し上げるか)。
本稿では、こうした一連の動きの中からシミュレーション/CAEの最新動向をレポートする。
設計者CAEの傾向
SWW2019のレポートを紹介する前に、まずは“設計者CAE”の動向について簡単に触れておきたい。このかいわいの最近の話題としては「メッシュレス解析」と「トポロジー最適化」が挙げられる。それぞれ見ていこう。
メッシュレス解析
ここでは筆者自身が評価したことのあるメッシュレス解析に関する2つの製品を取り上げる。
1つ目は「ANSYS Discovery Live」(以下、Discovery Live)である。GPUパワーを利用することで、設計変更と同時に解析結果が瞬時に得られるため、設計者CAEとしての有効性は高い。なお、Discovery Liveの技術はPTCの「Creo」にも統合され、「Creo Simulation Live」という名称で機能提供されている。
2つ目は「Altair SimSolid」である。2018年、Altair EngineeringがSIMSOLIDを買収し、日本でもAltair SimSolidとして販売されている。CPUによる計算を行うが、これまでの有限要素法とは異なる計算方式により、短時間で解析結果が得られる。また、解析のための細かな形状変更作業を行う必要がないため、設計者CAEとしての有効性は高いといえる。
トポロジー最適化
トポロジー最適化とは、要素分割を行った上で、応力が生じない要素(メッシュ)を削除することで、製造制限を加えながら形状最適化を行うアプローチである。SOLIDWORKSでは「SOLIDWORKS Simulation 2018」からトポロジースタディ機能が実装されているが、他社のシミュレーションツールでも同様の機能実装が行われているケースが多い。他にもメッシュ移動を可能とする形状最適化もある。3Dプリンタ/アディティブマニュファクチャリング(以下、AM)の利用が進む昨今、高い関心を集めている。
業界全体として、設計者CAEの実現に対する傾向が強まる中、先駆者的に仕掛けてきた「SOLIDWORKS Simulation」が今後どのような方向に進むのか。筆者としても大変興味深いところだ。
シミュレーション視点で見る「3DEXPERIENCE.WORKS」戦略
さて、SWW2019のビッグニュースの1つが、これまで「SOLIDWORKS World」として慣れ親しんできたイベント名称が、来年(2020年)から「3DEXPERIENCE World」に変更になるということだ。
メインストリームを中心とするSOLIDWORKSユーザーや他のミッドレンジ3D CADユーザーにとって、「3DEXPERIENCEプラットフォーム」という言葉は正直なじみの薄いものだと思うが、ここ数年のSOLIDWORKS Worldの中でダッソー・システムズが繰り返し発信してきたものでもある。
今回発表された3DEXPERIENCE.WORKSという戦略を一言でいうと、SOLIDWORKSと3DEXPERIENCEプラットフォームとの関係がより強固に、よりシームレスになるということである。「PLAN」「DESIGN」「SIMULATE」「MANUFACTURE」の各領域に対して、3DEXPERIENCEプラットフォーム対応のさまざまな機能を、SOLIDWORKSユーザーに対して展開していくという方針といえる。
既に存在するSOLIDWORKS Simulationとの関係、すみ分けはどうなるのか? 以下、“SIMULATE”の領域にフォーカスして考えてみたい。
このスライドのSIMULATEの部分に注目してみると、「SIMULIA」の文字が見える。SIMULIAは言わずと知れたダッソー・システムズのハイエンドCAE製品。これがどのような形で提供されるのだろうか。
SOLIDWORKSには、構造解析用に「SOLIDWORKS Simulation Premium」と「SOLIDWORKS Simulation Professional」が、熱流体解析用に「SOLIDWORKS Flow Simulation」が用意されている。いずれも設計者CAEとしての運用実績が豊富なツールであり、筆者自身もこれら製品のユーザーである。
実際に、これら製品を使用してみて感じる共通課題として、以下の内容が挙げられる。
- 接触定義の多い構造解析の対応が難しい
- 大変形を生じる解析、非線形解析(※1)が難しい
- マルチフィジックス(※2)対応が十分ではない
※1.非線形解析とは:大変形を生じるもの、構造物の変形により剛性が変化するような幾何学的非線形、応力とひずみに比例関係がない非線形材料、接触面積の変化によりアセンブリモデル全体の剛性が変化するような非線形接触を対象として解析すること。
※2.マルチフィジックスとは:構造、振動、伝熱、電磁界、圧電、音響、熱流体、落下衝突などの物理現象や、それらを組み合わせた連成問題を解析すること。
現場で設計者CAEが定着し、さまざまな解析を行っていくようになると、前述のような状況に陥ると同時に、SOLIDWORKS Simulationでの運用に限界を感じるようになる。
実際、筆者自身も高度化する解析要望に対して、さまざまな限界を感じることがあった。そこで出番となるのが、ハイエンドCAEである。
ちなみに筆者は、ANSYSの「ANSYS Mechanical」、MSC Softwareの「Marc」、ダッソー・システムズの「SIMULIA Abaqus」といったハイエンドCAEの評価を行った経験がある。いずれの製品も非常に高機能で満足のいくものばかりだったが、普段使用しているSOLIDWORKSとの“親和性が高いであろう”と考え、「SIMULIA Abaqus FEA」の導入を行い、運用を始めている。
確かにハイエンドCAEは高機能であり、高度化する解析要望にも応えられるが、どれも導入コストが高く、中小企業が容易に導入できるものではない。
筆者が導入したSIMULIA Abaqus FEAであるが、その設定項目の細かさから、非線形解析の対応力とその解析精度への信頼性は“非常に高い”といえる。しかし、これまで“専任者CAE”の領域で使われてきたツールだけあって、「.inpファイル(Abaqus/CAE Inputfile)」で入力データを作成して、解析条件を設定するという作業は専門性が高く難しい。なお、GUIで解析条件を設定することも可能だが、用語や設定表現もSOLIDWORKS Simulationとは異なるため、SOLIDWORKS Simulationのユーザーであっても導入してすぐに使いこなせるというものではない。
SIMULIA Abaqus FEAとは、“有限要素解析モジュールの組み合わせ”を意味する。ジョブコントロールモニタリングを行う機能を「Abaqus/CAE」と呼び、解析ソルバには「Abaqus/Standard」(一般的な問題に適用する有限要素モジュール)、「Abaqus/Explicit」(陽解法を使用した動的有限要素モジュール)がある。そして、結果表示は「Abaqus/Viewer」で行われるが、これらの構成名もなじみが薄い。
ちなみに、Abaqus/CAEの“CAE”は“Computer Aided Engineering”ではなく、“Complete Abaqus Environment(Abaqus実行環境)”の略である。この点からも「設計者CAEとは違う!」と一線を引いているように感じてならない。
SWW2019で発表された3DEXPERIENCE.WORKS戦略におけるSimulationの説明に関しては、「優れた解析システムだが、高価かつ難易度が高いため、設計者CAEには不向きとされてきたものが、使いやすく、手軽に利用できるようになるかもしれない」という期待が持てるものだった(導入方式、時期、価格などは未発表)。
これに関連して、ゼネラルセッションの後に個別で行われるブレークアウトセッションでは、「SIMULIA Structural Simulation Engineer」(以下、SSE)の発表があり、その詳細の説明があった。
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