シリーズ「モノづくりの現場から」(クボタ 枚方製造所)
クボタの「喧噪音が飛び交う」組み立てラインに静寂を呼んだ、四角いブロック(1/3 ページ)
製造業の組み立てラインには、アンドンシステムや信号灯といった作業トラブルを知らせる仕組みが広く導入されている。クボタの枚方製造所はこの「お知らせ」を安価に高度化し、作業効率を劇的に改善した。現場主導でなされた、その取り組みを紹介する。
「強烈な音」が響く組み立てライン
製造業の組み立てラインにおいて、材料待ちや設備故障、停電などのトラブルとその対応時間削減は大きなテーマである。もちろんこうした事態は起こらないに越したことはないが、現実問題として完全な根絶は困難であり、そのため、アンドンシステムや信号灯といった、「作業のトラブル」を知らせる仕組みが広く導入されている。
しかし、これらの仕組みは「トラブルの発生」を管理者へ知らせることを主目的としており、トラブルの詳細な中身までは知らせてくれない。
農機具や建設機械の大手であるクボタの枚方製造所では、ミニバックホー(小型油圧ショベル)の製造ラインにアンドンシステムとトラブル通知用の呼び出しボタンとコールベルを導入しているが、問題が起きたら「取りあえずボタンを押してベルを鳴らす」ことが常態化し、多い日には1日70回以上のベル音が鳴り響いていた。このベル音も大きいが、対応が遅くなると「カンカンカン」と工場内を消防車が走っているような、強烈な音に変わる。
仮に1日の作業時間が8時間だとすれば、1時間当たり8回以上、約8分に1回以上の割合で作業責任者が呼び出され、対応している状況は決して望ましい姿ではない。この呼び出し回数では、もはや作業責任者も1人では対応できず、複数人での担当が常態化していた。ミニバックホー組み立てライン担当の奥畑翔吾氏(建設機械製造部 製造2課 作業長)も事態を問題視しており、「作業現場へ人を呼ぶ」ことの省力化を図り、スマートな生産が出来ないかと苦慮していた。
銀座で見つけた、現場改善のヒント
クボタの枚方製造所は昭和37年(1962年)に操業を開始した、敷地面積9万9000坪の巨大工場である。従業員は1425人(平成24年4月1日現在)を数え、鋳鉄やポンプ、バルブ、建設機械などの製造を行っている。
ミニバックホーの製造ラインに導入されているアンドンシステムは、呼び出しボタンを押すとベルが鳴ってモニターに呼び出した工程場所が表示され、3分以内に対応されなければ呼び出し音量が上がり、音色も変わる。そして、それでも対応されなければ、ラインが停止するというものだ。
モニターは3カ所にしかないため、作業責任者はベルが鳴ったらモニターの見える場所に移動して、工程場所を確認して移動するという移動の手間が発生する他、現在のアンドンシステムは7工程しか表示器に表示できないため、対応の遅れた作業が増えると未対応の工程が分からなくなるという問題も抱えていた。ちなみにミニバックホーの製造ラインは組み立て部分だけでも直線で200メートルあり、呼び出された管理者はこのラインを何度も往復することになる。
「“人の呼び出し”についてはずっと悩んでいました。呼び出しボタンを押して人を呼ぶという意味ではファミリーレストランやフードコートも同じなので、そうした飲食店でも呼び出しの仕組みが気になっていました。あるとき銀座シックスにいく機会があり、そこの飲食店で“用件の書いてあるブロックを倒して人を呼ぶ”仕組みを見て、現場に生かせないか?と思い至ったのです」(奥畑氏)
奥畑氏が銀座シックスで見つけたのは、ECサイト構築やPOSレジ販売などを手掛けるエスキュービズムの「ねがブロ」だった。ねがブロは「スタッフ呼出」「お水」「片付け」「会計」など店側に伝えたいメッセージが書かれた高さ5センチほどのブロックで、倒した内容がBluetoothによってリストバンドへ通知される。
リストバンドは通知をメッセージと振動で伝えるので、呼び出しごとに大音量のベルが鳴ることもない。複数の「ねがブロ」ブロックを同時運用可能で、ブロック管理はタブレットにインストールしたアプリから行う。
もともとは飲食店や企業の受付、それにアパレル店など、人を呼びたい目的が類型化できるシチュエーションでの利用を想定して開発されたものだが、呼ぶだけではなく呼ぶ目的をあわせて通知できることから、奥畑氏は製造業の組み立てラインでも活用できるのではと考えたのだ。
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シリーズ「モノづくりの現場から」
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