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カシオがまいた種と閉じた花、6年前に仕込まれていた2.5DプリンタTechFactory 人気記事TOP10【2018年5月版】

TechFactoryオリジナル記事コンテンツの人気ランキングTOP10をご紹介。カシオ計算機の2.5Dプリンタ「Mofrel」(モフレル)開発者インタビュー記事が注目を集めた他、クボタ枚方製造所に静かさを呼んだ「ある取り組み」についての記事も注目されました。

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TechFactory 2018年5月の人気記事ランキング

 祝日のない6月も間もなく終わりを迎えますが、今回はGW期間を含む2018年5月1〜31日までの期間に掲載されたTechFactoryオリジナル新着記事コンテンツから、人気記事ランキングTOP10を紹介します(過去の人気記事ランキングを読む)


モフれる試作

 今回の1位はカシオ計算機の開発した2.5Dプリンタ「Mofrel」(モフレル)についての開発者インタビュー記事でした。Mofrelは熱によって膨張するマイクロパウダーを塗布した「デジタルシート」を用い、凹凸のある印刷を可能にするプリンタシステムです。ちなみに「Mofrel」(モフレル)という名前は猫や犬をモフモフするような触感が再現できる……ではなく、「〜に“も触れる”」から来ているそうです(デンソーも導入、カシオの2.5Dプリンタ「Mofrel」がモノづくりを革新する理由)

 2.5Dプリンタの開発当初は「触れる地図」「厚みのある絵画」といった用途を提案していましたが、ある展示会にて「工業用デザイン試作につかえそう」と声をかけられたこともあり、現在は自動車/建材/アパレルの3業界を対象にしたデザイン試作ソリューションとして訴求をしています。

 工業用デザイン試作というと近年では、3Dプリンタの利用が増えています。ですが、3Dプリンタは立体造形こそ得意ですが、触感の再現には不向きです。Mofrelならば凹凸を細かく制御できるのでより最終製品に近い試作が可能になります(Mofrelは触覚の再現を行う2.5Dプリンタなので、立体物、3Dの再現には3Dプリンタやインダストリアルクレイなどを用いることになります)。

 ティア1サプライヤーのデンソーが試作や要素技術開発に活用するとしており、Mofrelを手掛けるカシオ計算機の2.5D事業部としては、新規事業がようやく芽吹いたと胸をなで下ろしているのではないかと思います。


 実はMofrelの前身にあたる「カシオアート」(当時の名称は「デジタル絵画」)を見たことがあります。2012年のことです。当時は写真やCG、イラスト、絵画といった平面上に描かれた絵に対して画像解析技術を行って奥行き(厚み)を推測し、3Dプリンタで立体的な作品として出力するという「平面の3D化」を意図したものでした。

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2012年のCP+にてカシオ計算機が参考展示していた「カシオアート」

 当時は「平面を3Dのデジタルデータにする」ことに重きが置かれており、出力については一般的な積層型3Dプリンタで出力する方法と、後にMofrelとなるマイクロパウダー方式の2方式が併存していました。当時のカシオは、高さを伸ばすことが容易な3Dプリンタ方式を推していたように思いますが、時を経て2018年、デザイン試作に適したプリントシステムとして私たちの前に現れました。紆余(うよ)曲折を経て、Mofrelとして花開くまでの経緯は開発者インタビューをご覧ください。

銀座で見つけた、現場改善のヒント

 第2位は農機具や建設機械の大手であるクボタの枚方製造所に導入された、「お知らせ」の仕組みについての紹介記事です。

枚方製造所のミニバックホー製造ライン
枚方製造所のミニバックホー製造ライン

 枚方製造所のミニバックホー(小型油圧ショベル)の製造ラインには、作業現場のトラブルを知らせる仕組みとして、アンドンシステムとトラブル通知用の呼び出しボタンとコールベルが導入されていました。ですが、何かあったら「取りあえずボタンを押してベルを鳴らす」ことが常態化しており、多い日には1日70回以上、大きなベル音が鳴り響いていたといいます。

 そのベル音は作業音を圧倒する大音量で、まるで消防車が構内を走り回るかのようだったといいます。ですが、とある仕組みの導入から組み立てラインに静寂が訪れました。その仕組みと現場における取り組みについて紹介します(クボタの「喧噪音が飛び交う」組み立てラインに静寂を呼んだ、四角いブロック)


ありがとうQV

 ランキング1位はカシオ計算機の話題でしたが、2018年5月は同社がデジタルカメラ事業からの撤退を発表した月でもありました。QV-10で現在に続くデジタルカメラの原型を世に送り出し、「EXILIM」ブランドの製品を長らく展開してきましたが、コンパクトデジカメの市場縮小という時流には逆らえず、23年の歴史に幕を下ろす撤退表明となりました(カシオのデジカメ撤退に見る、製造業におけるイノベーションの難しさ)

 伸びる市場もあれば縮小する市場もあります。縮小する市場から撤退することは決して経営判断として間違ってはいませんが、カメラという趣味性の高いモノが対象であるだけに一抹の寂しさを覚えます。ですが、高画質の写真を撮れるスマートフォンが一般的になったいま、コンパクトデジタルカメラの立ち位置が危うくなっていることも事実です。

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カシオ計算機「EX-S20」にて撮影(2004年6月撮影)

 カメラとしてカメラを買う人は一定数存在しますが、2000年代前半に起きたデジカメ市場の拡大は、旧来からのカメラ愛好家ではない人を取り込んでの成長という側面も有しています。カメラではなく単純に「写真が撮れる道具」を欲しい人にとって、手元のスマホでコンパクトデジカメと同等、あるいはそれ以上に満足感ある写真が撮れるならば、コンパクトデジカメを買う理由は希薄となります。

 デジタルカメラの出荷台数は2010年から6年連続で減少に転じ、ようやく2017年に反転しましたが、日本国内向けはほぼ横ばいで、海外向けが微増したに過ぎません。デジタルカメラという製品ジャンルが成熟市場になっていることは明らかです。

 企業としての体力があるうちに種をまき、新たな果実を収穫しなくては企業の継続と成長は見込めません。デジタルカメラから撤退するという知らせと、新規事業であるMofrelの成長を同時期に耳にするとは、不思議な巡り合わせと言うほかありません。


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