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コンデジ撤退のカシオ、その「強み」が向かう先は製造業か:TechFactory通信 編集後記
コンパクトデジカメ製造からカシオは撤退しますが、カメラで培った画像処理技術は他の領域でも生きるでしょう。その領域は製造業かもしれません。
山形カシオのチープカシオ生産自動化ラインを取材した記事が多くの方に読まれたようで、記者としてはうれしい限りです。山形カシオの工場は山形県東根市に位置しており、都内からはやや距離がありますが、現場に行かないと分からないこと、感じられないことというのはあるもので、行って良かったなあというのが正直な感想です。
そのカシオ計算機がコンパクトデジタルカメラ事業からの撤退を表明しました。カシオ計算機はいわゆるコンデジのみを手掛けており、撤退という判断にはスマートフォンの一般化による世界的なコンデジ市場縮小の影響が大きかったといえます。2018年5月の決算でもデジタルカメラ事業は2期連続の赤字であり、コンパクトデジカメからは撤退するものの、今後は「独自技術とノウハウを活用した新しい事業領域の創造を目指す」としています。
山形カシオは時計の生産拠点なので見学時にデジタルカメラの話を聞くことはありませんでしたが、モノづくりに対して誠実に取り組む現場の方の話を聞いた後だけに、事業撤退という話は重く響きました。市況を判断し、自社の強みを勘案して、事業を取捨選択することは当然のこととはいえ、20年以上にわたって手掛けてきた事業領域から撤退することにためらいがあったことは想像に難くありません。
カシオはデジタル一眼に参入すべきだったか
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