「設計者CAE」という言葉が設計現場で聞かれるようになって久しいですが、3D CAD推進とともにきちんと設計者CAEに取り組んでいる企業もあれば、まだ途上あるいは全く着手していないという企業もあるかと思います。連載第5回では、求めたいことが不明瞭なまま、取りあえず解析依頼をしてくるケースに着目。場当たり的なCAEを減らすためのアプローチについて、筆者の考えを述べます。
前回は、「SOLIDWORKS WORLD 2018」で実感することができた“設計者CAE”の可能性について触れました。これらは既に実現可能なものばかりですが、設計者CAEの推進者たるもの、まずは足元を見つめ、設計者CAE運用の土台をしっかりと固めていく必要があります。
前々回「モデルの比較検証を『設計者CAE』の中心に、最も効果的な運用方法を考える」では、CAEの運用率が上がってくると、さまざまな解析依頼を受けるようになり、中には“求めたいことが明確ではない状態”で“取りあえず依頼”してくるケースもあるというお話をしました。実際、現在の筆者の解析現場においても、同じようなことが起こっています。
» 設計者CAEは普通の解析と何が違う?
» CAD、CAE環境をVDIへ移行するための手引き
» 横浜ゴムが実践するAI×CAE×ヒトの“協奏”によるタイヤ開発
なぜ、そんなことが起こるのでしょうか。その理由について、筆者は以下のように考えています。
その他、臆測し始めればいくらでもその理由が出てきます。
CAEでは、限られた設定条件の中でその計算を行うため、必要となる仕様というものを曖昧に済ませることができません。ですが、筆者よりも設計者としての経験が浅い人からの“取りあえず”の解析依頼を受けた場合などは、設計仕様の曖昧さによる解析設定条件(境界条件)の不備に気が付いてしまうことが多々あります。
ただ、こうした場合においても筆者は突き放すことはせずに、CAEを依頼してきた設計者とよく話をして、必要となる条件を引き出すことに努めます。中には、筆者からの「なぜ、なぜ、なぜ」の問いにウンザリとしてしまう依頼者もいるでしょうし、人によっては「とにかく何でもいいから、取りあえずやってよ!」と押し通す人もいます。確かに、まずやってみるという考え方もあるかもしれませんが、解析結果のみが成果物なのだとしたら、設計者CAEを行う意味はさほどありません。設計者CAEの本質は、設計上の最適なパラメータを決めることと、それによって形状を決めることにあるのです。
以前、ある人にこんなことを言われたことがあります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
豊富なホワイトペーパーの中から、製品・サービス導入の検討に役立つ技術情報や導入事例などを簡単に入手できます。