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遠隔監視業務は次世代モニタリング(ITモニタリング)に移行するアナリストオピニオン

次世代モニタリングのポテンシャルが大きくなった背景には、そこで適用されるITテクノロジー(要素技術)の進展が大きい。その中でも“解析・アナリティクス”がポイントになる。

» 2017年02月23日 09時00分 公開
[矢野経済研究所 ICTユニット]
矢野経済研究所 ICTユニット

次世代モニタリング(ITモニタリング)とは

 次世代モニタリングとは、近年注目されるIoTテクノロジーを活用した遠隔監視の仕組みと規定する。そこでの要素技術は、「センサーシステム/センサーネットワーク、M2M/IoT、クラウド、ビッグデータ、解析・アナリティクス」など。

 次世代モニタリングは、機器・設備の保全/メンテナンス(CBM、予防保全、故障予知など)を中心に、健康管理(ヘルスケアモニタリング、現場作業者の健康管理など)、安全管理(セーフティモニタリングなど)といった領域での需要拡大が期待される新たなテクノロジーである。

 次世代モニタリングに関しては、各種要素技術の進展も相まって、2013年ごろから実証を中心とした導入が始まっているが、現状での普及は限定的である。

 次世代モニタリングのポテンシャルが大きくなった背景には、そこで適用されるITテクノロジー(要素技術)の進展が大きい。その中でも“解析・アナリティクス”がポイントになる。

 例えば、工場・製造現場における保全方式の変化(事後保全/時間基準保全 ⇒ 状態基準保全へのシフト)は、センシング技術の高度化やクラウドの普及とともに、ビッグデータ/アナリティクス技術の進展が大きな推進力となった。

 なお、遠隔監視とIoT、次世代モニタリングの相関は下図の通りである。

遠隔監視と次世代モニタリング(ITモニタリング)の関係 図表 遠隔監視と次世代モニタリング(ITモニタリング)の関係 ※矢野経済研究所作成

さまざまな業界から次世代モニタリングへのアプローチが進む

工場・製造、社会インフラ・防災、(作業者の)健康管理/ヘルスケアモニタリングを有望視

 次世代モニタリングが注目を集める中、ITベンダー/SIerをはじめ、通信事業者、計測機器・産業機器メーカー、FA・ロボットメーカー、監視機器メーカーなどが、IoTテクノロジーを生かした次世代モニタリングビジネスへのアプローチを強化している。

 遠隔監視と次世代モニタリングの相関は前述した通りであるが、遠隔監視業務へのIoT適用による価値の創出は、収集データを解析する部分がキーワードになっており、この解析部分が次世代モニタリングでの価値を生む源泉である。

 以上の次世代モニタリングの特性を踏まえた上で、今後有望視される領域を考察する。

 次世代モニタリングでは現在、「保全・維持管理」「健康管理/安全管理」での利活用が期待されており、これを勘案すると、「工場・製造」「社会インフラ・防災」「(作業者の)健康管理/ヘルスケアモニタリング」が有望であると評価できる。特に、データに対する価値を理解している工場・製造は期待が大きいと考える。

次世代モニタリング事例:設備保全の変遷

事後保全から時間基準保全(TBM)、さらには状態基準保全(CBM)/予知保全への流れ

 次世代モニタリング活用によるビジネス変化の代表例として、工場の設備保全について考察する。

 工場の設備保全では、従来の事後保全から時間基準保全(TBM)、さらには状態基準保全(CBM)への移行があり、最近では予知保全・故障予知への期待が高まる。

 特に注目されるCBMでは、欧米の航空業界や電力業界において先行しているが、日本の工場・製造業では、一部の先進工場や実証・実験的に導入している大工場などを除くと、まだ黎明(れいめい)期にある。そしてCBMを実現する基盤に次世代モニタリングが存在する。ここで過去から現在、さらには将来における設備保全の変遷を記す。

設備保全の変遷 図表 設備保全の変遷 ※矢野経済研究所作成

 CBMを実現するためには遠隔監視がポイントである。そしてそれを「低コスト・大規模・迅速・柔軟」に実現するためには、IoTベースの次世代モニタリングが不可欠と考える。併せてCBMでは、予知技術も求められ、収集データを解析して機器・設備の状態を判断・評価する“ビッグデータ/解析・アナリティクス”技術がキーワードになる。

 このように、実効性のあるCBMの実現には「次世代モニタリング」と「ビッグデータ/解析・アナリティクス」の両輪が不可欠と考える。


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