任天堂の新ゲーム機「Nintendo Switch」には、NVIDIAのSoC「Tegra」がカスタマイズされ搭載されている。Tegraの歴史をひもとき、搭載カスタマイズSoCに思いを巡らせる。
任天堂から2017年3月の発売が発表された新ゲーム機「Nintendo Switch」には、NVIDIAのSoC(System on Chip)「Tegra」がカスタマイズされて搭載されている。2016年10月20日にポストされたNVIDIAの公式ブログによれば、NVIDIAは500人年のエンジニアを任天堂との共同開発に際して投入、物理演算エンジンの改良やライブラリ、ツールのフルカスタマイズ、APIの開発などを行ったとしている。
NVIDIAといえばGPU開発で著名な企業だが、GPU開発で培った知見を生かしたSoCの開発にも積極的に取り組んでいる。今回カスタム製品がNintendo Switchに採用された「Tegra」もその1つで、基本的にはARMのアプリケーションプロセッサコア「Cortex-Aシリーズ」とNVIDIAのGPUを集積した構成を取ってきた(「基本的」とした理由は後述)。
Nintendo Switchに採用されたカスタム製品の詳細は明らかにされていないが、Tegraの歴史をひもとくことで、そのヒントが得られるかもしれない。
NVIDIAは、PC向けGPU「GeForce」やワークステーション向けGPU「Quadro」、そしてGPU技術を用いたハイパフォーマンスコンピューティングプラットフォーム「Tesla」などで知られている。これらに加え、2008年6月に「第4の柱」として立ち上げられたのが組み込み向けSoCであるTegraだ。
Tegraの第1世代製品はARM11、第2世代製品「Tegra 2」はCortex-A9のデュアル、第3世代製品の「Tegra 3」はCortex-A9のクアッド、2013年に発表された第4世代製品「Tegra 4」はCortex-A9/A15のクアッドとCPU処理能力の向上を続け、Tegra 3からは電力消費を最適化する“5つ目のコア”も実装する「4-PLUS-1」構成とし、多くのスマートフォンやタブレットに採用された。
Tegraの採用事例として話題になる機会が多かった例はスマートフォンやタブレットだが、Tegraは組み込み向けSoCとして車載情報機器にも多く採用されている。2004年にはフランスPSA Peugeot Citroenと車載情報機器向けGPUに関する共同開発プログラムを立ち上げ、2006年から「EMP」として量産を開始している。
このEMPはAudiに採用され、EMPを搭載したカーナビゲーションシステムが多くの同社車両に搭載された。その後もAudiはNVIDIA製品の採用を拡大し、同社が2012年3月に発表した「A3」から利用している車載情報機器プラットフォーム「MIB」にはTegra 3/4が採用されており、TTクーペ(2014)のデジタルメーターや3Dマップ表示に利用されている。
Audiによる採用が示すよう、ADASを始めとした自動車の高度化が顕著となってきた2013〜4年頃、車載情報機器の性格も変わり始める。オーディオやナビゲーション、リッチな情報表示だけではなく、加えて、自動運転技術の一翼を担う存在として、カメラやレーダーを用いた障害物や歩行者の認識も車載情報機器の役目として認識されるようになったのだ。
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