大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
茨の道が広がるMIPS/動き出したWi-Fi 6E/Armの物量戦(1/3 ページ)
エレクトロニクス/組み込み業界の動向をウオッチする連載。今回は、2020年4月の業界動向の振り返りとして、MIPSビジネスやWi-Fi 6Eの動き、Armのスタートアップ向けFlexible Accessなど、小ネタ3本をお届けする。
全世界的にロックダウンが行われていたこともあり、エレ・組み込み業界では2020年4月もあまり活発な動きはなかったため、小ネタをいくつかご紹介したい。
MIPS(というかWave Computing)とImagination
2019年12月の記事に、Wave Computingそのものがかなり厳しいのでは? と書いたが、案の定であった。こちらの記事ではまだ確定していなかったが、米国時間の2020年4月28日にPR Newswire経由で同社がChapter 11入りしたことを明らかにした。
現在は再建プロセスがスタートしており、取りあえずTallwood Venture Capitalの関連会社から総額2800万ドル弱のDIP(Debtor in Possession)資金を取得した事を発表している。DIPは旧経営者に経営を任せつつ、企業再建を目指すという再建手法であって、さてどういう方向に向けて再建を行うのかが現在注目されている。ただ2019年末の段階では3人(創業者のDado Banatao氏、CEOのSanjai Kohli氏とChief Data ScientistのJin Kim博士)だった経営陣は、直近ではKim博士が抜けて2人になっており、現状社員がどの程度残っているのかもはっきりしない。先の記事でも指摘したがMobileyeとMediaTekという2大クライアント(厳密に言えば、MIPS32ベースのPIC32を提供するMicrochipもクライアントではあるのだが、同社は現在32bitを旧Atmel系のSAMシリーズに一本化する方向を見せており、今後の展開はあまり期待できそうにない)がある間はMIPSビジネスは「それなりに」維持できるだろう。
むしろ問題は本業であるAIプロセッサの方が振るわないことで、
- MIPSビジネスを再び外販して、その資金でAIプロセッサの立て直しを図る
- MIPSビジネスをコアに据えて、AIプロセッサの路線を放棄する、または同社のDataflow ProcessorのテクノロジあるいはIPを外販する
あたりがぱっと思いつくところだが、どちらにしてもいろいろ茨の道が広がっている様に見える。それでもまだ顧客が居る分、MIPS IPビジネスの方が現実性はあるとは思うのだが。
対照的に復活に向けて進んでいるにもかかわらず、ここに来て方向性がやや見えなくなっているのがImagination Technologiesである。
そもそも2017年にAppleとの契約を切られた結果、中国系のCanyon Bridgeに買収された同社だが、その後元Rambus CEOだったRon Black博士が同社のCEOに就任。その後も同社のGPU IPは順調にラインアップを強化していき、そして2020年2月には再びAppleと複数年のライセンス契約を締結するなど、割と順調に復活に向けて進展していた同社だが、2020年4月にそのBlack博士が離職した事が報じられた。現在はCanyon BridgeのRay Bingham氏が暫定CEOとして同社を指揮しているが、EETimesの記事によれば同社を巡って英国と中国の間で激しいつばぜり合いが行われており、Black博士の辞任はこれに関係したものだとしている。実はこれに先立つ2020年4月15日、同社はCanyon Bridge経由でChina Reform Holdingsから取締役4人を受け入れるという緊急取締役会の開催通知を受けた。China Reform HoldingsはCanyon BridgeのLP(Limited Partner:ファンドに対して投資を行うパートナー)と理解されており、要するにCanyon Bridgeの出資元である。つまりこれは中国政府による、同社への支配の強化と受け取られたわけだ。これを受けて英国の国会議員らが政府に働きかけ、最終的にこの緊急取締役会は中止となったが、これに対する中国側の反撃が今回のBlack氏辞任と受け止められている。
Wave Computingとは別の意味合いで、こちらもちょっと将来が読めない状況になっている訳だが、かつては一つの会社であったImagination+MIPSが、それぞれ別々の状況に置かれて、存続そのものが問われている状況なのは、なんとも言い難いものがある。
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大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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