大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
Appleの通告は「MIPSの終わり」の始まりか(1/3 ページ)
AppleによるImaginationへのIP利用停止宣言は、1981年に産声を上げた「MIPSアーキテクチャ」の終わりを告げるものとなる可能性を秘めている。MIPSの歴史をひもときながら、その行く末を考察する。
2017年4月にAppleがImagination Technologiesに対して通告したIP利用中止の余波を受け、翌月にImagination Technologiesは同社の傘下にあったMIPS部門などの切り離しを決定するものの、それだけでは生き残れないと判断したのか、6月には全社売却の決断をしたと報じられている(Imaginationが身売りへ、Appleの取引停止宣告余波)。
折りしもAZCAの石井正純氏による記事(MIPSコンピュータをめぐる栄枯盛衰 )が掲載されていることもあるので、Imagination Technologies全体の話はまた別にして、今回はそのMIPSについて触れてみたい。
数奇な運命をたどるMIPS
MIPSの歴史は前Stanford大学長のJohn Hennessy博士が1981年に研究プログラムとして「Stanford MIPS Project」を開始したところから始まる。
RISC命令を利用したプロセッサを開発する、というこのStanford MIPS Projectは成果を挙げたが、Hennessy博士は単に研究プログラムとしてだけでなく商用プロセッサにこれを持ち込むことを計画し、1984年にサバティカル期間を利用して「MIPS Computer Systems」を創業する。
創業メンバーはHennessy博士の他(石井氏の記事にも名前が挙がっている)Skip Stritter氏、それとJohn Moussouris博士である。最初のCEOにはComputer Consolesという会社のCEOを務めていたVaemond Crane氏が1985年に就き、1989年まで務めている。
そのMIPS Computer Systemsは1986年に最初の製品であるR2000、1988年には続いてR3000を出荷する。ファブレスという形態を選択したこともありMIPS自身は製造を他に委託したのだが、面白いのは派生製品の開発もパートナーに託したことだ。R3000の場合、製造はIDT、LSI Logic、NEC、Performance Semiconductorといった会社が担ったが、同時にPhilipsやIDT、東芝、Performance Semiconductorなどが高性能版やマイクロコントローラー版のR3000派生型を設計、製造、出荷している。
このR2000/R3000の成功もあり、同社は次のCEOとしてBob Miller氏(前職はData GeneralのSVP)を招き、彼の下でIPOを果たす。IPOによって資金調達を実現したが、それでも同社をプロセッサメーカーからコンピュータメーカーに脱皮させるのは十分ではなかった。この頃の同社プロセッサは、より高性能を志向したものになっており、R3000の次にR4000と呼ばれる64bitプロセッサの開発がスタートしていたが、これと並行してMIPS Magnum(R3000/R4000ベースのワークステーション)を開発できるほどの予算は同社にはなかったのだ。
SGIによる買収と独立
最終的にこのMIPS Magnumは発売されたものの、商業的成功を収めるには至らなかった。そのために同社は最初の経済的苦境に追い込まれたが、これを救ったのはSilicon Graphics International(SGI)である。同社は既にMIPSのCPUを使ったシステムを構築しており、そしてより高性能なCPUを求めていた。結局SGIはR4000の後継となるR8000プロセッサの完成を確実なものにするため、同社を1992年に3億3000万ドルで買収し、MIPSはSGIのプロセッサ開発部門になった。
このSGIの傘下の時代、同社はR8000に続き、これを高性能化したR10000、R10000の動作周波数を引き上げたR12000、R14000、R16000と続けて発表する。2004年に登場したR16000Aは限定数ながら1GHz動作まで達しており、R10000の最初のバージョン(175/195MHz)から5倍以上の高速化を実現しているが、これに先立つ1998年にSGIは、同社の将来製品をMIPSベースではなくIntelのItaniumに切り替えるという決断を行った。結果、MIPS部門は突如として、SGIにとって不要な部門になってしまった。
この決断を受けて同部門はSGIからスピンアウト。「MIPS Technologies」として再びIPOを果たす。当初はこのMIPS Technologiesの株をSGIがある程度保有していたが、2000年にSGIはMIPS Technologiesの全保有株を売却、同社は名実ともに再び独立企業になる。ちなみにMIPS TechnologiesのCEOには、SGIでSVPとしてMIPS部門を率いていたJohn E. Bourgoinが就き、2009年まで勤め上げた。
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