大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
本気で「AIマーケット」を狙う半導体ベンダー(1/2 ページ)
IoTが招く「データの爆発」にAI(ディープラーニング、DNN)で対応する動きが本格化しており、組み込み機器におけるDNNの推論(実行)を担う半導体チップの競争も激化の様相を呈している。
2017年4月も、国内外でLPWAに関する動きがいろいろあったのだが、同じ話題を繰り返しても仕方ないので、今月はエレクトロニクスや組み込み業界でも浸透し始めているAIの話をしたいと思う。
IoTが招くデータの爆発
AIといっても幅広いのだが、今回のテーマはその中でも特に深層学習(DNN:Deep Neural Network)系である。ここ最近は特に自動運転に絡めたDNNの話題が多く、多くのメーカーがここに向けた製品をリリースしている関係もあってこちらに目が行きがちだが、そもそもIoTはDNNと相性が良い。これはセンサーフュージョンとも関係してくる話である。
IoTデバイスの増加数については各社がさまざまな予測データを出しているので、例えば2020年にセンサーノードが一体どの位の規模になるのかハッキリしないのだが、とにかく現在よりも膨大な数のセンサーノードが世の中にばらまかれるのは間違いない。
もちろん、その中には煙感知器の様に「何も起きなければ何もデータを出さない」ものも少なくないが、建物や地盤などの変移状況、振動の具合など継続的にデータを送り出すセンサーも当然増えてくる。問題は、これらを片っ端からクラウドに上げていたら回線はどれだけあっても足りないし、クラウド側もデータ処理能力が無尽蔵にある訳ではないので、何らかの形でデータを「絞る」必要があるということだ。
一筋縄ではいかなくなった「データの絞り方」
この「どう絞るか」だが、例えば加速度センサーなら精度が上がるほど細かな微振動を拾ってくるので、それをフィルタリングして細かなノイズを落とし、意味のある動きだけを上位に持ってくるようにするというのが、これまでのIoTの「絞り方」だった。そして、そういう処理をリアルタイムかつ高速に行うには、やはり8bit MCUでは力不足なので、32bitのMCUにしましょうといったストーリーだった訳だ。
このストーリーそのものは現在でも有効というか、第一弾としてのフィルタリングは個々のセンサーに近いところで行うことになるが、問題はその先である。
例えば3軸加速度センサーだと3対(回転軸まで入れた6軸だと6対)の時系列データが出てくる訳だが、この生データが欲しいということならばそのままクラウドにアップロードすることになる。しかし、「地震があった時の建物の変移状態を確認したい」となれば、大きな振動があったら前後1分の変移だけをまずはローカルストレージに蓄えておき、それだけを後でアップロードするといった、やや高度な対応が必要になる。
これをセンサー1個に対して行うのか、それとも複数センサーのデータをまとめて処理するのかは要件次第であるが、こうした従来より高度なフィルタリング機能がセンサーハブに求められることになる。あるいは複数のセンサーを組み合わせたセンサーフュージョン(例えば超音波式の近接センサーと赤外線式の通過センサー・カメラを組み合わせた防犯システム)も同じ事で、単に時系列並べ替えのレベルを超えた、ある種の判断機能が要求され始めている。
「データ絞り」に活用され始めたディープラーニング
これまで、こうした高機能なフィルタリングはMCUレベルでなくMPUを搭載したシステムで処理を行っていた。なぜMPUベースかというと、これまではルールベースの判断システムを利用してこうした「高度な判断」を実装しており、これにはかなりのCPUパワーが必要だったからだ。ところが、こうした「高度な判断」にDNNが使えるのでは?という話が急速に盛り上がってきた。
DNNは当初こそ画像処理ベースの話が大きくクローズアップされ、また自動運転でも画像処理ベースにDNNを、という話が頻繁に出るために画像処理用途がメインであるように思われがちだが、そもそもDNNは原理的に汎用(はんよう)性の高いものであって、単にDNNを構築するCNN(Convolution Neural Network)の構造が現在は画像処理に最適化されたものが多い、というだけの話でしかない。そんなこともあって、「IoT向けにDNNを」という動きは以前から活発に検討されている。
さて、DNNを利用する場合は、学習と推論という2つのフェーズがある。学習フェーズではまずDNNのベースとなるCNN(最初のパラメータは白紙状態)を用意し、ここにあらかじめ分かっている学習データ(3軸加速度のデータで言えば、地震があった際のデータ、大型トラックが通った時のデータ、平常時のデータなど、さまざまな状況におけるデータ)をCNNに逆方向から流してやり、パラメータを自動調整させることで、データとシチュエーションが正しく対応できるようにする。こうして完成したCNNとパラメータを使って、実際のデータからシチュエーションを割り出す、というのが推論のフェーズとなる。
ここで推論が正しく行えるかどうかは、「どれだけ深い(層数が多い)CNNを使うか」と「どれだけ学習データを多く流すか」で決まりやすい。前者に関しては、単純に深くするだけでなくいろいろと工夫があり、この辺はすごい勢いで新しいテクニックやアルゴリズムが出てきている。問題は後者で、ここはひたすら力技となる。CNNを改良すれば学習を減らせる、という話には今のところなっておらず、むしろより学習頻度を増やさないと効果がなかったりするので、とにかく力勝負となる。
この分野では、NVIDIAやIntelなどが覇を競っている部分で、そこにGoogleなども参戦している。ただ、これは言ってみれば開発側の話であって(もちろん機器開発という観点では欠かせない話ではあるが)、実際の組み込み機器に搭載する訳ではないから、今回の話には直接関係無い。関係あるのは推論側である。
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大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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