Arm Mbed Connect 2018 Japan
トレジャーデータ創業者が語る「データファースト時代の開発者像」とは?(2/2 ページ)
IoT活用の代表的な6つのユースケースにおける可能性と事例
太田氏によると、Arm Pelion IoT Platformは現在約800社で採用されているそうだ。前述の通り、IoTのユースケースは1つとして同じものはないが、800社もの企業を見ていると、大まかな分類は可能だという。そうした経験を基に、講演では「小売」「物流」「電気/ガス/水道」「自動車」「製造業」「スマート空間」の6つの領域における可能性ついて次のように紹介した。
利益という側面で最も成果につながりやすいのが「小売業における顧客のトラッキングだ」と太田氏は説明する。来店した顧客が店内をどのような経路で移動し、どのような商品に関心を示したかなどをトラッキングし、その情報を基に店内のレイアウトや商品陳列を最適化することで売上の向上につなげる。「これは非常に説明しやすく、ROI(投資対効果)が最も出やすいユースケースだ」と太田氏。
物流、つまり物が今どこにあり、次にどこに移動すべきかに関してもトラッキング(アセットトラッキング)が効果を発揮する。例えば、病院内のどこに医療機器があるのか、それらをリアルタイムに追跡できるようになれば、迅速な処置が可能となり、次にどこへ機器を運んだらいいのかといった活用にもつなげられる。他にも、物流倉庫での在庫の最適化などにもIoTが活用されているという。
電気/ガス/水道の領域では、IoT技術を活用したスマートメーターが利用されている。人が気軽に行けないようなへき地などでの検針に役立てられており、自動化が進んでいる領域である。
スマート化/コネクテッド化が加速する自動車も、IoT活用が進む領域の1つだ。「1台の自動車の中に、Armのチップは200~400個程度採用されている。そういった意味で、“自動車のスマホ化”が進み、さまざまなデータが取得できるようになってきた。変革期にある自動車業界にとってIoT活用の注目度は高い。自動車の上でどのようなサービスを作れるのか、トレジャーデータ自身も顧客とともに検討している最中だ」と太田氏は話す。
製造業におけるIoTといば、インダストリー4.0に代表される工場のスマート化だ。工場内の設備機器からデータを収集し、保守メンテナンスなどに役立てる予兆保全に取り組む企業が増えている。
また、ビルや都市全体のスマート化の観点では、エネルギーの利用状況や社会インフラの稼働状況などをトラッキングして、省エネ化や最適化を図る動きも目立っているという。
「代表的な6つのユースケースを紹介したが、これらに当てはまらないようなものを含めると本当に多くのユースケースがある。今、さまざまなものがコネクテッド化する中で、われわれはパートナー企業や顧客、さらには開発コミュニティーの方々と一緒になって、新たなソリューションを開発、提供したいと考えている」(太田氏)
講演では、代表的なユーザー事例としてパイオニアの「事故リスク予測プラットフォーム」、ガス会社におけるガスメーターのリアルタイム検針、スバルが実施した顧客理解の取り組みなどについて紹介した。
データ活用時代における理想のエンジニア像
同講演の最後のトピックとして太田氏は、IoTの普及に伴うデータ活用時代における“理想のエンジニア像”について、次のように自身の考えを示した。
「まずITのくくりでいうと、人材需要が増加することは間違いなく、今後20~30年、エンジニア職は他の職種と比べても、“比較的明るい”といえるのではないか。ただし、IT業界には難しさもある。それはテクノロジーの波が速過ぎることだ。それがITの楽しさでもあるわけだが、5年先にどんなテクノロジーが重要視されているのかを予測することは難しい。ただ、1ついえるのは“データ”という観点で物事を捉えられないと、何を作ればいいのか分からない、どう使われているのか分からないといった状況に陥ってしまう。これからは顧客志向も強く求められる。コードを書くだけではなく、顧客課題を理解できる人材が貴重な存在になっていくだろう」と太田氏は述べる。
そして、トレジャーデータの起業経験を踏まえ、聴講者に次のようなアドバイスを送り、講演を締めくくった。
「エンジニアとしていくら高い技術力があっても、その技術を世の中に普及させ、広く人々に使ってもらわないと意味がない。つまり、自分たちの技術を普及させるためには、マーケティングやセールスといった活動が不可欠ということであり、コードを書きながらそれらを両立させることは難しい。そのため、トレジャーデータを起業する際、自分よりもコードが書ける人材をまず見つけ出し、開発をその人に任せて、自分自身はCTOという立場で技術と経営の間を結ぶ役割に専念した。今思うといろいろな苦労やチャレンジがあったが、自身のバックグラウンドとしてエンジニアとしてのスキル(コンピュータサイエンスのスキル)があったことは大きな助けとなった。テクノロジーのバックグラウンドのない企業は、あっという間にAmazonやGoogleといった巨大IT企業に飲み込まれてしまう。そうした時代だからこそ、われわれのようなエンジニアが“世界を変えていける機会”というのは常に存在すると確信している」(太田氏)
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