産業社会におけるデジタル化の価値(4)
「ビッグデータ」「データアナリティクス」「AI」は製造業に何をもたらすのか?(1/3 ページ)
「デジタル化」とは何か? デジタル化が産業社会にもたらす変化と価値について、全4回で解説する。第4回では、「ビッグデータ」「データアナリティクス」「人工知能(AI)」が製造業に与えるインパクトにフォーカスし、欧州の鉄道システムや自動運転車に代表される自律システムを例に掘り下げていく。
連載「産業社会におけるデジタル化の価値」では、IoT(Internet of Things)に代表される近年話題のテクノロジーの中核を担う、「デジタル技術(デジタル化)」が産業社会に何をもたらすのか? その価値について解説してきました。
前回は、デジタル化の流れの“受け皿”となる産業用ネットワーク/インダストリアルIoTと、それに関連したセキュリティの話題を取り上げました。最終回となる今回は、「ビッグデータ」「データアナリティクス」「人工知能(AI:Artificial Intelligence)」が製造業に与えるインパクトについて紹介します。
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組織の認識・判断能力の不完全性
これまで解説してきた通り、製造業の組織を考えた場合、人間の力のみで生産現場で発生している全ての事象を的確に捉え、それらを総合して判断し、適切に行動することはほぼ不可能といえます。
例えば、工場の生産ライン全体は、作り出される製品そのものよりもはるかに複雑な設備群により構成されています。そのため、日々稼働する生産ラインを人間の知覚のみで捉えることは不可能で、量、種類、時間の観点からも限界があります。仮に人間の知覚が発達し、数十倍もの情報を収集できるようになったとしても、情報の量が多過ぎるため、そこから有効な知見や洞察を得ることは難しいでしょう。
そこで頼りになるのがテクノロジーです。以下、「認識」「伝達」「判断」にブレークスルーを促す技術要素を3つ紹介します。
1.認識能力の向上:センシング技術のイノベーション
人間の知覚は主に視覚、聴覚によるところが多く、生産現場をくまなく把握するには不完全です。目に見えない場所や構造体内部に起こっている現象を捉えることはできませんし、そもそも現場の要員は作業をするために存在するのであって、生産ラインを目視で見張るために存在するものではありません。
聴覚も同様で、熟練工であれば設備が発する音で調子が分かるといいますが、聴覚による判断は、誰でもどこでも使える標準的な仕組みや枠組みにはなり得ません。また、音以外にも、設備が発する熱、湿度、圧力、振動、流量、電磁場なども現状を映し出す重要な要素ですが、人間の知覚や聴覚ではこれらの事象を的確に把握することはできません。
そこで考えられるのがセンサーの活用です。図1に示した通り、近年の技術進歩により、センサーは小型、低価格となり、複雑な測定対象から常時情報を収集できるようになりました。
2.伝達能力の向上:生産現場ネットワーク
いくら数多くのセンサーを配備しても、効率良くセンサーからの情報を収集できなければ意味がありません。生産現場のネットワークについては前回詳しく解説したので割愛しますが、近年は「IEEE 802.11n」を採用した工場内の無線ネットワークの実装例も増えてきています。
3.判断能力の向上:大量のデータ処理
人間が洞察を行う前に、収集した大量の情報を保管する必要があります。図2は、2015年当時におけるビッグデータの流通量の推移を示したものです。データ量で最も大きいものは、映像データです。これは生産現場というよりも、都市や建物で収集される映像データが主となります。次に多いのがセンサーデータです。これは生産現場に限定したものではなく、農業やエネルギー事業、建物設備などから収集されたものも含まれます。多種多様なデータを扱うことから、かなりのデータ量になると考えられます。
記憶装置のビット当たりの単価が下がっているため、大容量データが保存しやすくなっていることはもちろんですが、最近のクラウドサービスの進展も大きく貢献しています。クラウドにより、実際のデータ保管量と流通量に合わせたコストを支払うことができます。
このように保管された大量のデータに対し、一般的な統計処理の他、機械学習、画像処理などのアナリティクスを用い、有用な洞察を得ます。この部分は近年のコンピューティング技術の進歩(純粋な計算能力の向上、分散処理、ハードウェアの低価格化によるインメモリ処理)に支えられています。
機械学習は、画像認識へのアプローチとしてよく紹介され、人工知能(AI)の1つの要素です。最近の研究では、人間が画像データから認識する意味やイメージを、機械学習によりコンピュータが読み解けるようになったといいます。図3の例では、大小さまざまな物体(人間、動物、機械)が存在しており、その周辺環境も異なりますが、画像認識により存在する物体を遠近にかかわらず正しく認識しています。
脳の神経細胞をモデルとしたアルゴリズムとして、以前からニューラルネットワークは存在していました。近年はそれを発展させ、10万個以上のシミュレーションされたニューロンと1000万個のシミュレートされたコネクションを用いる深層学習技術が実現しています。このような技術により、原材料価格や電力価格の予測など社会的課題解決が可能となってきています。
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産業社会におけるデジタル化の価値
「デジタル化」とは何か? デジタル化が産業社会にもたらす変化と価値について、全4回で解説する。
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