課題は専門技術者とセキュリティ
「インダストリー4.0」への投資額はいくら? 世界26カ国の製造業に聞いた
PwCは世界26カ国の製造業系企業(9業種)2000社以上を対象に、インダストリー4.0に関するグローバル調査を実施。その調査結果を発表した。
コスト削減、生産効率の向上、利益拡大など、製造業各社における「インダストリー4.0」への期待は大きい。既に世界中の製造業各社がインダストリー4.0の本格的な事業化に向けて乗り出し、積極的な取り組みが行われつつあるという。
では、実際どれくらいの投資が行われているのだろうか。
PwCは2015年11月~2016年1月にかけて、世界26カ国の製造業系企業(9業種)2000社以上を対象に、インダストリー4.0に関するグローバル調査「インダストリー4.0:デジタルエンタープライズの構築」を実施。その調査結果の概要をこのほど発表した。
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毎年9070億ドルがインダストリー4.0への投資に向かう
同調査結果によると、製造業の全セクターで積極的な取り組みが実施されており、企業の約3分の1に当たる33%が、自社のデジタル化の程度を「高い」と評価しているという。PwCは、この数値は今後5年間で72%にまで上昇する見込みだとしている。
先進的な企業では、社内の垂直バリューチェーンの主な機能のデジタル化に加え、取引先を含めたサプライチェーンの水平方向のデジタル化も推進。さらに、製品にデジタル機能を付加し、ポートフォリオを強化したり、データを活用した革新的なサービスの提供を行ったりもしているという。今後の投資意欲については、デジタル化を想定する分野の年間売上高の約5%を投資したいとの意向が示されているとのことだ。これを、今回調査した製造業各社における今後のデジタル化を想定する分野の売上高に当てはめて算出してみると、毎年9070億ドルがインダストリー4.0への投資に向かうと考えられるという。
具体的な投資対象としては、センサーや接続デバイスなどのデジタルテクノロジー、製造実行システムなどのソフトウェアやアプリケーションが代表例として挙げられるが、これらに加えて、従業員教育やデジタル化に伴って必要となる組織改革への投資も含まれるとのことだ。そして、こうした投資について半数以上の企業(55%)が、「2年以内に償却できる」と考えているという。
また今回の調査に参加した各社の管理職によると、インダストリー4.0に代表されるデジタル化への移行により、年平均3.6%のコスト削減および2.9%の売上増加が見込まれるとしている。これを金額ベースで見てみると、4210億ドルのコスト削減と、4930億ドルの売上増加が同時に達成できることになるという。
データ分析が重要だが、専門部署はない……
同調査結果によると、80%以上の企業が今後5年間に「データ分析」が自社の意思決定プロセスに重大な影響を及ぼすと回答。例えば、製品の使用状況に関する価値の高い情報(データ)が得られるようになり、顧客との関係構築に活用したり、得られたデータを分析することで顧客ニーズに適した新製品・サービスの開発が迅速に行えたりするなど、さまざまなメリットが考えられる。
一方、インダストリー4.0を導入するに当たって深刻な問題としては、社内文化やビジョン、教育体制がデジタル化に対応できないことや、専門の技術者が不足していることが挙げられる。調査結果によると、企業の40%近くがデータ分析の専門技術を従業員個人の能力に依存しており、「データ分析の専門部署を持っていない」と回答しているという。
また、調査結果の報告書では、デジタル化を成功させるためには、重要なデータが悪意のある第三者の手に渡らないようデータセキュリティの確保に努めなければならないと指摘。そのため、企業はシステムセキュリティに対して十分な投資を行い、データ保護の明確な基準を設定すべきであるとしている。
デジタル化の目的は国ごとで異なる
今回の調査結果から、地域による目的の差も明らかになったという。
日本やドイツが生産効率の改善や製品品質の向上を最優先目標とする一方、米国は製品やサービスのデジタル化によって新しいビジネスモデルを開発し、デジタル技術を駆使した製品やサービスをいち早く消費者に届けることを目指す傾向にある。そして、中国はコスト削減を追求して、製造業の国際競争力を維持することを目指す傾向にあるという。
調査結果では、今後5年間、デジタル化は日本、ドイツ、米国といった数カ国がリードするものの、他の国や地域においてもほぼ同レベルで進んでいく見込みだとしている。インダストリー4.0により、企業と企業、国と国の結合が強くなり、その結果グローバリゼーションはさらに加速していくという。
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