実録、挑戦を続けるエンジニア/JDSound 宮崎晃一郎氏
音楽とは無縁だった半導体エンジニアが創り出したA4サイズのポータブルDJシステム(1/4 ページ)
A4サイズのポータブルDJシステム「GO-DJ Plus」の実現に向けて奮闘中のJDSound 代表取締役 宮崎晃一郎氏に、ベンチャー企業を立ち上げた経緯からハードウェアプロダクトを実現するまでのプロセス、そしてGO-DJ Plusに込めた思いについて話を伺った。
クラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」で支援者の募集を開始し、わずか数日のうちに目標金額の半分である1000万円を集めたプロジェクトがある。スピーカー内蔵のポータブルDJシステム「GO-DJ Plus」だ。GO-DJ Plusの目標募集金額は2000万円で、記事公開時点の金額は2261万円(達成率113%)。残り日数(約50日)的にもまだ余裕があり、今後も支援者が増えそうな勢いだ。
GO-DJ Plusの資金調達をMakuakeで行っているのは、宮城県仙台市に拠点を置くベンチャー企業JDSoundである。同社は、2つのタッチパネルディスプレイによるターンテーブルと、物理スイッチを搭載したミキサーをコンパクトな筺体にまとめたバッテリー駆動DJシステム「GO-DJ」を2012年12月末に市場投入。そのユニークな製品コンセプトからジワジワと売上を伸ばし、知る人ぞ知るポータブルDJシステムとして根強いファンを獲得している。
今回、その第2世代モデルであるGO-DJ Plusの実現に向けて奮闘中のJDSound 代表取締役 宮崎晃一郎氏に、ベンチャー企業を立ち上げた経緯からハードウェアプロダクトを実現するまでのプロセス、そしてGO-DJ Plusに込めた思いについて話を伺った。
始めは音楽とは無縁な半導体エンジニアだった
TechFactory編集部 ポータブルDJシステムという非常にユニークなハードウェアプロダクトを手掛けていますが、もともとオーディオ業界/音楽業界で何か製品開発などに関わっていたのでしょうか?
宮崎氏 今でこそGO-DJを触らせたら一番うまくDJプレイができると自負していますが(笑)、音楽畑とは全く無縁でした。大学でマイクロプロセッサの設計を専攻していたこともあり、半導体エンジニアとしてモトローラの日本法人に就職して、自動車のエンジンコントロールユニットを設計する部隊に所属していました。米国で設計された「PowerPC」「MC68000」といったプロセッサの国内向けカスタマイズ/日本語ローカライズが主な業務で、新規開発はほとんどありませんでしたね。
私が入社して間もないころ、先輩社員2人が起業してファブレスベンチャーを立ち上げたんです。当時、その先輩たちから「軌道に乗ったら宮崎さんもうちに来てよ」って言われて、「はい、ぜひ!」なんて社交辞令を交わしていたんですが、後日本当にお声掛けいただいたんです。
ちょうどあの当時、仙台にモトローラの設計部隊と、組み立て工場、その向かいに東北セミコンダクタがあって、そこで一体となって半導体を製造しようという動きがあったんです。しかし、それがどうにもうまく立ち上がらなくて……。「じゃあ、どうせやるならベンチャーだ!」という思いで転職を決意したんです。それが2002年。
先輩たちが立ち上げたのは、半導体回路の設計を専門とするファインアークという会社で、4人目のスタッフとしてお世話になりました。まだそのころは東京・お台場にあるインキュベーション施設にオフィスを構えていた時代です。
TechFactory編集部 ファインアークではどんな業務を担当していたのでしょうか?
宮崎氏 最初はメイン事業となるマイクロプロセッサとDSPの設計を担当しました。そして、ある程度半導体設計の方が一段落したところで、自分たちが設計した半導体の上で走るアプリケーションの開発を任されました。ベンチャー企業ですし、自分たちの作ったもので“何ができるのか”を知ってもらう必要があったんです。
担当は私1人でした。当時、「MP3」が音楽の世界でメジャーなファイル形式でしたが、実際に半導体に載せてMP3デコーダーとして販売する場合、ライセンス費用が必要でした。そこで、ライセンスフリー、ロイヤリティーフリーの「Ogg Vorbis」というファイル形式に着目して、Ogg Vorbisの再生機能を搭載しようと決めたんです。実現には何カ月もかかりましたが、半導体とその上で走る音楽プログラムの実装の経験を積むことができました。
そして、この成果を新聞発表したわけなんですが、最初に声を掛けてくださったのが、パチンコ・パチスロ向けに映像出力基板を手掛けている会社でした。これまで音を鳴らすのにMP3を使用していたらしく、Ogg Vorbisの再生機能に関心を持ってくれました。MP3に比べてOgg Vorbisは圧縮率が高いため、同じファイルサイズだとMP3よりも音質が良いんです。そういったメリットに加えて、ロイヤリティーフリーですからね。すぐに採用していただくことになりました。有名韓国ドラマを題材にしたパチンコの遊技台に使われたこともあって、一時期はある一定のシェアを獲得することに成功しました。
その後、台湾のカラオケ機器メーカーや韓国のポータブルオーディオ機器(CDプレーヤー)メーカーなどからも仕事が入るようになりました。
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