シリーズ「モノづくりの現場から」(パナソニック CNS社 佐賀工場)
パナソニック佐賀工場は2つの顔を持つ、全長100mの生産フロアで見たスマート工場の可能性(1/4 ページ)
IoTなどを活用した製造現場の見える化、そしてスマート工場の実現に関心が集まる中、国内大手製造業の現場ではどのような取り組みが行われているのか。多品種少量に対応した生産拠点としての顔とともに、先進技術を活用したモノづくりの実証実験場としての重要な役割も担うパナソニック コネクティッドソリューションズ(CNS)社の直轄工場である佐賀工場を取材した。
年3回以下しか作らない「お久しぶり生産」に対応
パナソニックの社内カンパニーであるパナソニック コネクティッドソリューションズ(CNS)社の直轄工場に位置付けられている佐賀工場。1964年の発足以来(当時は九州松下電器)、組織/ドメイン再編を何度か経ながら、さまざまな製品や人、そしてモノづくり、ノウハウが佐賀県鳥栖市にあるこの拠点へと集約され、現在ではCNS社を含む2カンパニー6事業17カテゴリーの生産品を取り扱っている(2018年4月時点)。
主要生産品としては、小売店などで見掛けるICカードリーダーライターや決済端末、イベントホールなどにある音響機器などがある。また、メガホン型多言語音声翻訳サービス「メガホンヤク」といった先進的な製品も佐賀工場で生産されている。ここに列挙したものはごく一部であるが、過去、生産集約が繰り返し行われてきただけあって、数多くのB2B向け製品が作られている。
CNS社では、B2B向けにシステム販売などを行っている。佐賀工場で生産するのは、そうしたシステムの一部を構成する端末(機器)であるため、顧客がそのシステムを使い続ける限り、端末自体の供給を継続する責任がある(=ディスコンまでの期間が長い)。そのため、取り扱い製品はおのずと多品種となっていく。納入後、数年してからシステムの追加導入などが決まることもあり、実は佐賀工場では年3回以下しか作らない「お久しぶり生産」と呼ばれる生産品が半分を占め、100台以下の小ロット生産が70%もあるという。
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2つの顔を持つ、パナソニック佐賀工場
また佐賀工場は、こうした多品種少量に対応した生産拠点としての顔とともに、IoT(Internet of Things)をはじめとする先進技術を活用したモノづくりの実証実験場としての重要な役割も担う。
この取り組みを佐賀工場とともに主導するのが、CNS社 モノづくりイノベーション推進室である。過去100年培ってきたパナソニックのモノづくりと、「インダストリー4.0」に代表される第4世代の新しいモノづくりを融合し、“次の100年”に向けたさらに強いモノづくりの実現を目指し、現在「設備」だけではなく「人」の動きなどをデータ化し、それらを活用した新たな改善のアプローチを追求。そこで生まれたものをベースとした、さまざまな実証実験の取り組みが佐賀工場で行われているのだ。
今回、TechFactory編集部では、佐賀工場の中で最も新しい生産棟であるI棟の1階で作られている決済端末/ハンディーターミナルの生産フロアを取材する機会を得た。“ワンフロア一貫生産”をうたう直線距離にして約100mのフロアでは、モノの流れが最短で済むよう「実装工程」「基板完成工程」「組み立て検査工程」「梱包工程」といった各工程が一直線に配置されており、随所で最新の取り組みを見ることができた。ちなみに、パナソニックの決済端末の国内シェアは約70%を誇っており、それらはこの佐賀工場I棟などで生産されている。
それでは、佐賀工場の取り組みを詳しく見ていこう。
Beaconとカメラ映像、設備稼働データを組み合わせた“現場の見える化”
佐賀工場では、人とモノの流れを捉え、最適な工程構築を実現するための取り組みとして、Beacon(ビーコン)を活用した作業者の導線の見える化や生産設備データとの相関分析などを実施している。当初、パナソニック ソリューションテクノロジー(PSTC)のBeaconを用いていたが、さらなる高精度化を目的にCNS社 イノベーションセンターのものに置き換え、現在検証を進めているところだという。
天井や壁にBeaconの発信機を約5m間隔で設置し、Beaconの電波をスマートフォンで受け、どの発信機の電波をキャッチしたか、どこにいるのかを座標として記録する。さらに、スマートフォンのジャイロセンサーの情報を活用することで、作業者の向きを含めた情報がリアルタイムに可視化および記録されるため、どの設備機器の前で対応を行っていたのかも正確に分かるという。見える化を行うWebシステムの画面ではリアルタイムの情報だけでなく、過去の軌跡表示やヒートマップ表示、グラフ表示なども行える。
ただし、Beaconの情報はあくまでも座標でしかないため、そのデータだけでは、実際にその場所で何をしていたのか、何が起こっていたのかを詳しく把握することはできない。そこで、ネットワークカメラ(パナソニック製)の映像からそれらを確認したり、設備機器のログデータから状況を把握したりといった、“複数データの組み合わせ”による分析、解析を行っているという。「こうした仕組みを活用することで、ムダな導線を把握し改善したり、トラブル発生時の迅速な対応を実現したりといったことに役立てている」と、CNS社 佐賀工場 工場企画課 係長の和田学氏は説明する。
映像による現場の見える化は、天井に設置された19台のネットワークカメラによる「デジタルアンドン」で実現。一部のネットワークカメラは、天井に敷設されたレールを伝って動かすことができ、設備や柱の影の様子もしっかりと捉えることができる。
各工程で取得したデータの管理やトレーサビリティーを確立する仕組みとして、佐賀工場では生産情報統合管理システム「P-TOS(Panasonic Tools of factory Improvement System)」を運用。基幹システムやスケジューラーなどとも連携し、各種データを活用した見える化、データ分析などに役立てられているという。
ちなみに佐賀工場では、ネットワークカメラの映像を監視やセキュリティ目的に使用することはせず、あくまでも生産性の悪い工程の分析に活用しており、工程改善の検討を目的に、必要に応じて映像として記録しているという。
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シリーズ「モノづくりの現場から」
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