カシオ計算機|開発者インタビュー
デンソーも導入、カシオの2.5Dプリンタ「Mofrel」がモノづくりを革新する理由(3/3 ページ)
――「デジタルシート」のバリエーションについて教えてほしい。
堀内氏 A3、A4サイズに対応しており、バリエーションとしては、上質紙を基材としたスタンダードな「プリントペーパー」、丈夫で破れにくいPETフィルムを基材とした「プラスチックシート」、そして伸ばして貼り付けることができる「ポリオレフィン(PO)シート」の3つを展開している。ちなみに隆起の高さは基材により異なっており、プリントペーパーであれば最大1.2mmまで隆起させられる。
特にPOシートは、Mofrelの先行評価に協力してくれた企業などからの要望が強く、試作部品に貼り付けて、より最終製品に近い形でデザイン検証を行いたいという声に応えたものだ。自動車の内装パーツの検証はもちろん、メンブレンスイッチのようなシート状パネルのデザイン検証などにも活用可能だ。後者の場合、実際にスイッチ部を配線しておけば、デザインとともに機能も検証できる。POシートにより、表面加飾としての試作の枠を超え、機能検証にまで踏み込んだ活用も考えられる。
岩本氏 デジタルシートは基材によってマイクロパウダーの配合が変えてある。そのため、デジタルシートの裏面にはバーコードが印字されており、ハードウェア(DA-1000TD)側でどの基材のデジタルシートが挿入されたかを自動で判別し、その特性に合わせて品質が均一になるようハードウェア制御を行っている。
実はマイクロパウダーの技術は昔からあったものだが、熱量(温度)に合わせて隆起の高さを調整するという発想はなかった。カシオ計算機はそこに着目し、特許化してカシオアート、Mofrelへと発展させてきた。
堀内氏 Mofrelのデジタルシートは各20枚入りで、2万~7万2000円(税別)の価格帯で購入できる。印刷物として見られてしまうと高く感じるかもしれないが、試作用途であるため印刷とは意味合いが大きく異なる。金型製作のコストと比較すると、大幅なコスト削減が実現できる。
――「Mofrel」の実現に向け、これまでどのようなチャレンジをしてきたか?
岩本氏 ハードウェア担当としては、出力物の品質に最も気を使った。これまで「ざらざら」と言葉で表現していたものが、Mofrelによってそれが実際の触感として認識できるようになる。いわば“言葉の触れる化”が実現するわけだ。そのため、同じざらざら感を指し示すとき、触感にバラツキがあってはならない。
また紙は生もので、1枚1枚表情が異なる。湿度による反り具合やロールのどの部分から切り出したかによっても状態が全く違う。そういう特性を理解した上で、常に同じ品質が出せるようにデジタルシートの種類ごとに細かな制御を行っている。この点は非常に苦労した。
堀内氏 2.5D事業部の中には、サンプルを作る専門チームがあり、ハードウェアとデジタルシートの性能を極限まで引き出したような、われわれの想像を超えるサンプルを作ってくる。そうしたものを顧客に見せて意見をもらったり、先行評価を行っている企業からの声を参考にしたりして、ハードウェア開発、ソフトウェア開発、シート開発、サンプル開発の各チームが一丸となって、Mofrelを進化させてきた。単なるデザイン試作の出力機としてではなく、2.5Dの世界を開拓する存在として、Mofrelを大きく発展させていきたい。
――「Mofrel」の今後の進化、展望について教えてほしい。
堀内氏 2018年2月、Mofrelを製品として世に送り出したが、これで終わりだとは思っていない。ユーザーの声に耳を傾け、さまざまな可能性を模索しながら新たなデジタルシートの開発やハードウェアの進化についても取り組んでいく必要がある。例えば、より高精細な出力が可能なシートや、大きなサイズのシートの開発といった可能性が考えられる。
また、2.5Dプリントで出力したものを“最終製品”として使いたいというニーズもある。単なる試作用途ではなく、最終的にはそういった利用を視野に入れた開発も考えていかなければならない。例えば、最終製品のデザインを使い捨てで着せ替えるといった発想もMofrelなら実現できるだろう。
岩本氏 触感というのは、言葉を超えた共通言語として無限の可能性がある。実際、海外の展示会に出展し、そうした思いを肌で感じてきた。われわれはその可能性を信じて、Mofrelとともに2.5Dの世界を広げていきたいと考えている。
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