設計者CAEは普通の解析と何が違う?(2)
設計力の低下、設計品質問題に悩んだら「設計者CAE」の導入を検討しよう(1/2 ページ)
「設計者CAE」という言葉が設計現場で聞かれるようになって久しいですが、3D CAD推進とともにきちんと設計者CAEに取り組んでいる企業もあれば、まだ途上あるいは全く着手していないという企業もあるかと思います。連載第2回では、CAEに対する期待と現実のギャップ、CAEに対する誤解を解説するとともに、設計品質問題を取り上げ、設計者CAEを活用すべき意義について紹介します。
3D CAD推進者やCAE推進者の方々であれば、「設計者CAE」という言葉をよく使う/よく聞くと思いますが、普段CAEを使用していない設計者や経営層にとっては、決してなじみ深い言葉とはいえません。
そのためなのか、(解析を実運用している方の)ステークホルダーはCAEシステムに対して過大評価をしがちなのですが、そうした期待値と実情にはギャップがつきものです。図1は、筆者がCAE推進者として実際に感じたものをリスト化したものです。皆さんの環境でもステークホルダーから見るCAE、とりわけ設計者CAEに対しては、このような意見が聞かれるのではないでしょうか。
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また、これから何とかしてCAEを立ち上げていこうという現場にとって最悪なのは、「CAEベンダーが言っていたことと違う!!」と導入担当者(CAE推進者)が頭を抱えてしまうことです。このような事態に陥ってしまう理由は明白で、設計現場における問題/課題の現状把握、CAEシステムのベンチマーク、導入計画といった“プロジェクトとしての認識”が欠如していたためです。
ベンダーがアピールする製品に魅力を感じたり、ベンダーが実施する(よくできた)デモンストレーションを見て「すぐにでも使えそうだ」と思ったりすることがあるかもしれません(実際、そう感じることが多いかと思います)。しかし、もしも導入した後で「ベンダーが言っていたことと違う!!」と感じたならば、それは導入担当者である“あなたの判断ミス”が招いた結果です。
社内を見渡してみてください。「数年前に新規導入したシステムが何もなかったかのように放置されている」「ろくに使用されていないのに保守費用だけかかっている」……そんなシステムはありませんか? CAEシステムは3D CADと同様に、買ったその日からすぐに使えるものではありません。CAEシステムは非常に高価なものが多くありますから、このような事態は避けたいものです。
CAEは「誰でも、何でもできる夢のツール」ではない!
さて、ギャップの話に戻りましょう。なぜ、図1のような運用効果に対する期待と実情にギャップが生じるのでしょうか。一言でいうと、CAEのイメージが図2のように捉えられているからです。
これは大いなる誤解です。筆者は「CAEは誰でも、何でもできる夢のツールではない」と断言します。
“誰でもできるわけではない”ということを「スキルがないから」、“何でもできるわけではない”ということを「限られたパラメータによって(ある制約の中で)計算するから」と簡単に置き換えることもできます。しかし、そう単純ではなく、ウィザード(操作手順)に従えば“誰でもできる”といえますし、逆に熟練の解析者であってもできないことも存在します。では、本連載のテーマである設計者CAEとは、どのような存在であるべきでしょうか?
筆者の考えを先に申し上げておくと、「設計者CAEは、設計者の誰もが使用できるものでなければなりません」。これまで専任者が実施してきた高度なCAEを、設計者の技能領域の中で活用できるようにしていくことが、設計者CAEを推進する者にとっての重大なミッションとなります。このあたりの詳しいお話は、またの機会に取り上げたいと思います。
設計者の技術力の低下が招く、設計品質問題
それでは、筆者が所属する設計現場での取り組み(過去の経験)を例に、設計者CAEのイメージと実態について掘り下げていきましょう。
筆者の設計現場では、これまで“バランスの良い設計”が行われてきました。これはバランス感覚の優れた設計者、そしてKKD(勘、経験、度胸)によって培われてきたものといえます。しかし時が流れ、そのような熟練設計者がいなくなり、設計現場では過剛性や強度不足といった設計品質問題に悩まされるようになりました。
ちょうど、2D CADから3D CADへ移行するタイミングでしたが、この問題はCAD環境が変わったからといって簡単に解決できるものではありませんでした。調べてみると、強度計算を行っているケースもあれば、全くしていないケースもありました。バランス感覚の優れた熟練の設計者であれば、卓越した感覚と過去の経験に基づき品質が保たれていたのだと思いますが、そのバランス感覚が不足している設計者であれば計算は必須といえるでしょう。しかし、残念なことにその計算方法すら知らない設計者も少なくありませんでした。
単純な部品形状であれば、梁計算を行うことも可能ですが、実はそれさえやらない設計者がいるのも事実です。それはなぜでしょうか? 実際のところは「その計算方法を知らない/できない」「知識があっても(学校では習っても)実設計の中で使用したことがない」といった理由が大半でしょう。
このような状態では、より複雑な部品形状、多くの部品で構成される大規模アセンブリ、ねじなどの締結部品による部品間の結合といった複雑なものに対して、わざわざ手計算を実施することはまずないでしょう。もしかすると、最近では便利なソフトウェアがWeb上に公開されているようなので、数値入力だけで得られた結果をそのままうのみにして利用しているかもしれません。後者はまだ計算しようという意思があるだけマシかもしれませんが、設計現場における技術力の低下は非常に深刻な問題といえます。
これは設計者個人だけの問題ではありません。コスト削減、納期短縮、また設計品質の向上策として、流用設計が多用される昨今、新規設計のチャンスが経験の浅い設計者に与えられることは非常に少なくなりました。また、先輩設計者からの指示についても「ここの寸法を○mm伸ばして」といったものがよくありますが、この場合、寸法変更による検証は必要ないのでしょうか? 先輩設計者からそうした指示が出ないのは、変更する寸法に対してのエビデンス(証拠)を持っていないからです。
さらに、3D CADで表現された部品形状を見ると、“良くできている”ように見えてしまい、強度問題を引き起こすケースもあります。
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設計者CAEは普通の解析と何が違う?
「設計者CAE」という言葉が設計現場で聞かれるようになって久しいですが、3D CAD推進とともにきちんと設計者CAEに取り組んでいる企業もあれば、まだ途上あるいは全く着手していないという企業もあるかと思います。本連載では、設計者CAEがもたらすメリットや実際に導入していく上での注意点を、現場目線でご紹介します。◎こんなキーワードに興味のある方にオススメ:[CAE][設計者CAE][3Dデータ][3D推進][3次元設計][設計品質向上][ツール導入]
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