CAD、CAE環境をVDIへ移行するための手引き(2)
デスクトップ仮想化がCAD、CAE現場にもたらすメリット(1/2 ページ)
設計・解析の現場でも、デスクトップ仮想化の一方式であるVDIに対する関心が高まっている。連載「CAD/CAE環境をVDIへ移行するための 手引き」では、VDIの基礎解説や導入メリット、運用ポイントなどを分かりやすく解説していく。第2回では、CADやCAE現場におけるデスクトップ仮想化の導入メリットについて掘り下げる。
はじめに
多くの製造業では、需要の増大が見込めない国内市場からグローバル市場への拡大・転換に継続的に取り組んでいる。また、市場のシェアを拡大すべく多種多様なニーズに対応した製品の開発に取り組んでいる。これらの活動において解決すべき最も重要な命題は、製品の市場投入までの期間短縮、いわゆるリードタイム短縮である。これを実現するためには企画・設計・製造の各プロセスを見直すだけでなく、進化させることが必要である。その中でもCAD、CAE、PDMなどを含むデジタルエンジニアリング環境の見直しは、比較的簡単に取り組めるだけでなく大きな効果の得られる施策である。
» 前回「デスクトップ仮想化とは?」を読む
CAD、CAE/デジタルエンジニアリングは進化する
デジタルエンジニアリングの進化についてあらためて考えてみよう。企業内では既にさまざまなデータが蓄積されており、これらの知的財産の積極的な利活用が近年の課題となっている。この何ものにも代え難い知的財産をどうやって体系的に格納するか、効率的に引き出すか、可視性や検索性の向上が望まれている。
一部の先進的な企業ではCADの図面・形状や属性情報、CAEや各種試験の結果、PDMや周辺にあるさまざまなデータを関連付けて作成・格納している。これにより各種情報が分断・分散されることを防ぎ有機的に結合され、各種情報や図面の再利用、技術者間の情報の共有を実現している。さらに今後は「機械学習」(※1)や「セマンティック技術」(※2)といった自動化技術を組み込むことにより、さらなる効率化=リードタイム短縮が期待されている。
これら新技術を取り込み、理想的なデジタルエンジニアリング環境を実現するためには、各種データの源でありデジタルエンジニアリング環境の礎である設計環境の環境整備が肝要である(図1)。
※1:機械学習……反復的にデータを学習させ、そこから規則性やルールを抽出することで、コンピュータに識別や判断をさせる技術。多種多様なデータから検知や識別、将来予測などで利用される。
※2:セマンティック技術……自然言語処理によりデータに意味を付与し活用する技術。データを意味に基づいた検索や、関連付けするなどさまざまな用途で利用される。
進化を支える設計環境とは何か?
CAD、CAEに代表される設計環境は、市場の急速な変化、革新的なプレイヤーの登場、新技術によるイノベーションなどにより常に変化にさらされている。具体的には設計・製造するモノや場所・人の変化への対応を余儀なくされるのだ。しかし、多くの設計現場では組織ごとの個別最適で環境が構築されてきた歴史的な背景がある。このため、求められている「変化に対応できる設計環境」と現在の設計環境には大きな隔たりがある。
例えば、設計の場所が変わることによる人的リソースの流動化へ対応するためには、道具となるITリソースを俊敏に提供する必要がある。この場合のITリソースは主に設計部門が管理するワークステーションの割り当てだけの話ではない。端末環境に加えサーバ環境・ライセンスの提供・セキュリティ対策、適切な運用管理体制も併せて提供する必要がある。
また、CAEにおいては閑散期と繁忙期の利用率の差が大きくなることや解析ソルバーなどのソフトウェアを可変的に利用したいとのニーズからクラウドの利用が進みつつある。一方でさらなる効率化のためにはCAD、CAE間の設計・解析データの大容量ファイルの効率的な送受信を実現する必要がある。
このため、従来の固定的なワークステーション環境からの脱却が設計環境に求められており、「デスクトップ仮想化」がその最適解として注目を浴びている。
設計環境に対する設計者や管理者の悩みとは?
多くの設計環境では前述の柔軟性の欠如だけでなく、データの分散管理、無駄な管理作業、CAD、CAEツールのパフォーマンス劣化による効率性低下など、さまざまな問題を抱えている。さらに致命的なのは、システム管理が各設計現場のシステム管理者と全社IT部門のシステム管理者の2つの管理主体に分散することで、ガバナンスが利きにくい体制が出来上がっているケースである。コスト面においても最適な投資が困難になりがちである。これらの課題についてユーザー視点・管理者視点および費用対効果の視点で整理してみよう。
業務効率性(ユーザーの視点)
- 設計データがデスクトップやファイルサーバ、拠点のNotesDBなどに分散。目的のデータを探すのが困難
- 新規作成/更新した社内標準ライブラリやテンプレートの配布工数が大きい
- 現場部門内のシステム管理者が設計・解析業務の隙間を縫ってIT管理を行っているため、IT管理のみならず本業もおろそかになりがちである
- CAEの解析処理環境を自社で構築している場合、計算量の年次増加にハードウェアリソースがついていかず、使いものにならない。また、ライセンスも不足し処理できない
- 部門単位でソフトウェアを購入しているため、部品データそれぞれでソフトウェアのバージョンが違うことも。結合する際の手直し工数がばかにならない
管理・セキュリティ面(システム管理者の視点)
- 3Dモデルを扱う場合、3Dモデルがあれば他社でも製造が可能となるため、情報漏えいのリスクが図面の場合と比較にならないくらい大きい
- CADデータの大容量化により、一部の製造業ではHDDやDVDに移し人手で運搬するケースもあり情報漏えいのリスクがある
- 端末ごとのCAD、CAEソフトウェアのバージョンアップ作業の工数が大きい
- 端末ごとのOSのセキュリティ対策、パッチ適用作業の工数が大きい
- 現場任せの管理で、不要な社内未承認のフリーソフトなどがインストールされ、ウイルス感染や情報漏えいのリスクがある
- 現場任せの管理で、全社IT部門のシステム管理者側で問題を把握できない
- 拠点ごとにワークステーションなどの端末が設置されており、人的リソース増強や縮小などの流動化に対し迅速に対応できない
- 部門単位でソフトウェアを管理しているため、パッチ適用などのセキュリティ対策が適切になされているか心配
コスト面(費用対効果の視点)
- 製品の開発サイクルでいえば、CADやCAEを利用する期間はプロジェクトの限定的な期間となる。管理側でこれらの利用実態がつかめないため、最適な環境とライセンス購入ができない
- 拠点ごとにCAD、CAE環境を構築/運用することは、それぞれで構築と運用の工数が掛かるため、費用対効果に見合わない
本稿テーマであるデスクトップ仮想化は、果たしてこのような問題を解決する有効な手段になり得るのだろうか。答えは「Yes」である。
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CAD、CAE環境をVDIへ移行するための手引き
設計・解析の現場でも、デスクトップ仮想化の一方式であるVDIに対する関心が高まっている。連載「CAD/CAE環境をVDIへ移行するための 手引き」では、VDIの基礎解説や導入メリット、運用ポイントなどを分かりやすく解説していく。◎こんなキーワードに興味のある方にオススメ:[デスクトップ仮想化][VDI][CAD][CAE][導入][運用][移行]
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