設計者CAEは普通の解析と何が違う?(1)
設計者CAEを詳細設計の段階で実践できているか? その定義を再確認しよう(1/2 ページ)
「設計者CAE」という言葉が設計現場で聞かれるようになって久しいですが、3D CAD推進とともにきちんと設計者CAEに取り組んでいる企業もあれば、まだ途上あるいは全く着手していないという企業もあるかと思います。本連載では、設計者CAEがもたらすメリットや実際に導入していく上での注意点を、現場目線でご紹介します。
「CAE(Computer Aided Engineering)」は、3次元設計の現場でごく当たり前のように聞かれる言葉となりました。ここであえて日本語に訳す必要はないかもしれませんが、強いて言えば「コンピュータ技術を用いて開発設計業務を支援すること。また、そのツール」と表現できるのではないでしょうか。
よくCAD/CAM/CAEが“一連のもの”として語られるように、3D CADによる設計を推進していく上で、CAEによる解析はごく当たり前の存在であると同時に、設計開発において重要な要素の1つになっています。
最近CAD業界では、金属3Dプリンタ活用のさらなる盛り上がりを受け、「トポロジー最適化(位相最適化)」や「ジェネレーティブデザイン」といった新しい設計アプローチの話題に注目が集まっていますが、これらは3D CADと解析技術の融合によって実現しているものだといえます(関連記事:ジェネレーティブデザインの真打、「形状合成」が設計の常識を覆す)。
- トポロジー最適化(位相最適化)
……人間が設計した基本形状から不要な部分を抜く形状最適化のアプローチ - ジェネレーティブデザイン
……コンピュータが自ら形状を作り出す形状最適化のアプローチ。「形状合成」などと呼ばれている
また、「デジタルツイン」「エコシステム」という言葉もよく聞かれるようになりました(関連記事:製造業のIoT/AR活用のカギはCADとPLMにあり――現実味を帯びてきたフィジカルとデジタルの融合)。
- デジタルツイン
……現実世界での事象をデジタル世界(3D CAD環境など)でそっくりそのまま再現し、設計改善や次期製品開発の検討などに役立てること - エコシステム
……依存関係や協調関係などを示す用語。3D CAD関連では、CAD/CAM/CAE/PDMといったシステムが1つにまとまり、連携している状態を意味する
これらについてはまた別の機会に取り上げますが、既に開発設計製造現場では、3次元のデジタル空間上で作られた3Dデータおよびそれに付随する情報により、構想/詳細設計/解析/加工/管理といった各工程が進められています。こうした流れは、現場側だけではなく顧客側にもメリットをもたらします。例えば最近では、VR(バーチャルリアリティー)技術がデザインレビューなどで活用されつつあり、設計者と顧客との有効なコミュニケーション手段として注目されています。
◎「CAE」関連記事 ~ツール選定、導入、活用事例、現場課題~ など
» 設計者CAEは普通の解析と何が違う?
» CAD、CAE環境をVDIへ移行するための手引き
» 横浜ゴムが実践するAI×CAE×ヒトの“協奏”によるタイヤ開発
「設計者CAE」の重要性が増す理由をあらためて理解する
さて、本連載の主題である「設計者CAE」についてですが、筆者自身が長年推進してきた3D CAD導入と密接な関係にあり、3D CAD推進を進める中で設計現場でもCAEを活用していき、設計品質を向上させたいという狙いがありました。こうした筆者の活動の中で、CAEの重要性を再認識する機会がありました。社内でヒアリングを実施した際、設計仕様に関する問題が多く挙げられたのです。それらは“剛性”に関するものでした。
- 剛性不足
- 過剰な剛性
この相反する問題が、製品品質と製品コストに大きな影響を与えていました。では、なぜそのような問題が発生していたのでしょうか? 一言でいってしまうと“勘と経験”による影響であり、“勘と経験不足”です。これが大きく影響し、設計仕様に関する問題を引き起こしていたと筆者が考えます。
もしかすると、「え?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これは筆者の経験に基づく考えです。当時、筆者が所属していた環境では、絶妙な設計センスを持った諸先輩方が数多くいました。彼らは設計ツールに依存しているわけではなく、最低限の設計計算と経験に基づくバランス感覚によって“絶妙な設計”を実現し、設計品質問題を引き起こすことは“極めてまれ”なことでした。
今でもこのような素晴らしい設計者の方と出会うことがありますが、そうした方々の多くは、CADをいきなり使わずに、“ポンチ絵”を描くことから始めています。また、理論と経験値に基づき“設計計算”を駆使して、「設計仕様」「設計パラメータ」を決めていきます。先ほど、“勘と経験不足”について言及しましたが、近年の開発設計製造現場で、このような設計者が少なくなっている現状があると思います。
筆者は過去さまざまな新規の機械設計を経験してきましたが、最近では流用設計が増加傾向にあるように感じます。新規設計では当然参照するようなものはなく、新しい構造などを考える必要があります。このような場合、筆者はいきなりPCで設計を行うのではなく、ドラフターに向かって設計を開始し、他の多くの設計者から指導やアドバイスをいただきました。こうしたやりとりを通じて、インフォーマルのデザインレビューが日々行われたことで、設計者としてのスキルを伸ばせたのだと実感しています。
しかし、流用設計が多く行われるようになったことで、パラメータの変更だけを行うような設計業務が増え、設計者の、特に新規設計でのスキルが低下したのだと考えられます。筆者は“「設計技術者」から「設計技能者」への転換が行っている”と捉えています。
もちろん、流用設計そのものを否定するつもりはありません。流用設計により、設計品質が担保されたケースも数多くあります。また、設計製造の時間も短縮化が図られ、流用設計はQCD向上のためには欠かせません。こうした取り組みを進めている現場では、「モジュール化」「モジュール設計」を実施されているのではないでしょうか。
これらが“内的な要因”となりますが、次のような“外的な要因”もあります。装置産業においては、装置で製造される製品の開発時間の短縮による装置化時間の同期や、製品の高精度化/高スループット要求による装置の高精度化および高スループット化の要求によって、より高度な設計が設計者に求められています。
いずれにしても設計品質を作り込む作業は、設計者が行うものです。「こうした環境の中でも、設計者は本当によくやっている」と敬意を表した上で、ここからは“設計者CAE”のお話につなげていきたいと思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
設計者CAEは普通の解析と何が違う?
「設計者CAE」という言葉が設計現場で聞かれるようになって久しいですが、3D CAD推進とともにきちんと設計者CAEに取り組んでいる企業もあれば、まだ途上あるいは全く着手していないという企業もあるかと思います。本連載では、設計者CAEがもたらすメリットや実際に導入していく上での注意点を、現場目線でご紹介します。◎こんなキーワードに興味のある方にオススメ:[CAE][設計者CAE][3Dデータ][3D推進][3次元設計][設計品質向上][ツール導入]
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー