「プロセッサIPを出せばいい」時代の終了、Armはどう対処するか:大原雄介のエレ・組み込みプレイバック(2/2 ページ)
Armは2018年5月から6月にかけて多くのプレスリリースを出している。それらを俯瞰してみると、もう単純に「プロセッサIPだけを提供していればいい」という時代ではないことがよく分かる。その時代にArmはどう対処しようとしているのか。
Armが力を入れる「エコシステム」の構築
単純にプロセッサIPだけを提供すればいいという時代にArmはどう対処していくか。そこで同社が力を入れているのが、エコシステムによるサポートの強化である。
Black Pepperが10社目となった「Arm Approved Design Partners」は、ArmベースのSoC開発を代行してくれる、要するに一昔前で言うところのDesign Houseであるが、ポイントはArmがその能力を承認しているという点である。
以前だと、こうしたDesign Houseを使うとコストが掛かる以上に、自社に技術が残らない点を問題視する向きも多かった。しかし、昨今では開発に失敗した場合の損害が多大であるので、それを勘案するとDesign Houseのコストは十分見合うと認識されている。また、こうした動向の可否はとにかくとして、上位の仕様策定がSoCベンダーの仕事で、実装は外注任せというところも増えてきた(これは16nmプロセスが実用になった頃に、特に上海のSoCベンダーを中心に急激にそうした方向性になってきた)ので、Armとしてもこうした方向性に対応する必要があると判断したのだろう。
これまで同社のエコシステムとは、IPを購入してくれる顧客に対して設計やデバッグサポート、さまざまなソフトウェア提供などが中心だったが、昨今は「IPを買っても自社では開発しない」顧客が増え始めているという事であり、そうした顧客向けの認定Design Houseが10社目に達したという事がこれを裏付けているように思う。
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進まぬMCU向け実装
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