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「鶏と卵」を抜け出しそうな、Armサーバの現在地:大原雄介のエレ・組み込みプレイバック(1/3 ページ)
Armといえばスマートフォンから車載、産業機器まで広く使われる組み込み機器向けという印象が強いものの、最近ではサーバ市場での利用を見込む動きも強くなっている。Intelが強みを持つ市場であるが支持の輪は広がっている、その「現在地」とは。
2018年の2月にも、エレクトロニクス・組み込み業界にはさまざまなトピックがあった。その中でも目を引いたこちら(Intel元社長、サーバ向けArm SoCで再始動)の話題にからめて、今回はArmサーバの動向を紹介したいと思う。
2010年に示されたArmの野望
そもそもArmがサーバ分野への言及を初めて公にしたのは2010年、Cortex-A15コアの発表時だったと記憶している(Photo01)。もっともこの時は、まだホームサーバやWeb2.0サーバなどがメインで、図版で示されているワイヤレスインフラ向けは「取りあえず書いてみました」以上の話ではなかったと思う。
2012年になるともう少し詳細な分析を示すようになるが(Photo02、03)、この時点でもまだ主張は控えめである。もともと省電力プロセッサが出自なだけに、同じ処理でもある程度までは消費電力も低いし、エリアサイズも小さくできる。しかし、ある程度大きな負荷が継続的にかかる状況では、消費電力的にも性能的にも不利になるからだ。
これはターボ付きの軽自動車エンジンと、NAで2リットルクラスのエンジンを比較するようなもので、100Km/h以下が多い区間では軽自動車エンジンの方が高効率だとしても、オーバルトラックをフルアクセルで走るようなケースではNA 2リットルのエンジンで走る方が無理がないのに似ている。
Photo03:Photo02の図に対するARMプロセッサの適性。Light scale-out(Photo02で言うModest Compute)はx86と比べてアドバンテージが大きいが、Mainstream WorkloadやCompute Intensiveな用途にはまだ向かない、としている
A15コアの「インパクト」
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