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Intel元社長、サーバ向けArm SoCで再始動Ampere Computing

2015年にIntelを退任した、元プレジデントのRenee James氏が、Ampere ComputingのCEOとして、データセンター向けサーバ向けArm SoC(System on Chip)を発表した。データセンター向けサーバ市場は現在、Intelの独占状態だ。

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Intelの元社長がCEOを務める新興企業

 Intelの前プレジデントを務めたRenée James氏が設立した新興企業Ampere Computingが、2018年2月5日(米国時間)、Armベースのサーバ向けSoC(System on Chip)を発表した。ハイパースケールクラウドコンピューティングのイノベーションを確実に加速すると主張した。


Renée James氏

 Ampere Computingがターゲットに定めるのは、急速な成長を遂げているデータセンター向けサーバ市場だ。同市場では現在、Intelが優位性を確立している。James氏はIntelを退職する際、「次の企業でCEOの地位に就きたい」という目標を語っていたので、その目標を達成したという筋書きなのではないだろうか。

 しかしJames氏が、今回の取り組みによって“正当な成果”を挙げられるのかどうかは、今のところ全く不明だ。業界観測筋は、Ampere ComputingのSoCが、ほぼIntelの牙城であるサーバ市場を切り崩せるのかどうか、懐疑的な見方をしている。


AMCCの「X-Gene 3」がおおもと

 どのみち、Ampere Computingの“新しい”SoCは、正確には“新しい”ものではない。

 米国の市場調査会社であるThe Linley Groupで主席アナリストであり、同市場に精通しているLinley Gwennap氏によると、Ampere Computingが今回発表したは、もともとはApplied Micro Circuits(AMCC)が2015年に開発し始めた、第3世代のArmベースのサーバ向けSoC「X-Gene 3」だったという。X-Gene 3は、動作周波数が3GHzで、TSMCの16nm FinFETプロセス技術が適用されていた。

 しかしX-Gene 3は、量産には至らなかった。AMCCは、旧世代のサーバ向けSoCの開発によって損失が発生した上に、X-Gene 3の開発コストが膨れ上がったことによって苦境に陥り、2017年1月にMACOM Technology Solutions Holdings(MACOM)に買収されている。しかし、MACOMが興味を持っていたのは、AMCCのサーバ向けチップ事業ではなく、通信事業であった。このためX-Gene関連の事業部門は、最終的に、プライベートエクイティ企業であるCarlyle Groupに買収されている。

 一方のJames氏は、2015年の夏にIntelを去った後、2016年初頭にCarlyle Groupに幹部として入社した。Carlyle Groupは、X-Geneを「Ampere Computing」としてリブランドし、James氏が2017年秋にCEOに就任した。

 Gwennap氏は、「つまり、Ampere Computingが今回発表したサーバ向けSoCは、しばらく手付かずの状態にあったプロセッサと同一のものであるということだ」と述べる。

 Carlyle Groupは、X-Geneの“再始動”に当たり、250人の既存社員を抱えるAmpere Computingに、新たな人材を送り込んだ。

 Carlyle Groupは、かつてIntelでエンジニアを務めていた人材を数人、Ampere Computingの経営幹部に任命している。例えば、Intelに30年間勤務したベテランであるAtiq Bajwa氏がチーフアーキテクトに、Rohit Vadwans氏がハードウェアエンジニアリング担当エグゼクティブバイスプレジデントに、それぞれ就任している。Bajwa氏はIntelにおいて、全製品に向けたx86アーキテクチャの責任者を務め、Vadwans氏は、プラットフォームエンジニアリングの責任者だったという。また、AMCCのX-Gene SoC担当リードアーキテクトを務めていたGreg Favor氏が、Ampere Computingのシニアフェローを務めるという。

 Ampere Computingのソフトウェア/プラットフォームエンジニアリング担当バイスプレジデントを務めるKumar Sankaran氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「Ampere Computingにとって初となる製品を、2018年半ばまでに発表できる見込みだ」と述べている。

「Armv8-A」のアーキテクチャライセンスが鍵か

 今回Ampere Computingが発表したSoCの特長としては、「Armv8」に基づく64ビットの32コアで、最大動作周波数が3.3GHz、125Wの低消費電力、ソケット当たりのメモリ容量が1テラバイト、PCIe(PCI Express) 3.0対応のレーン数が42などが挙げられる。Ampere Computingは、「今回発表したX-Gene 3は、競合他社のSoCと比べて、メモリ容量と帯域幅を33%高められる」と主張する。

 Ampere Computingは、もともとAMCCが取得していた、「Armv8-A」のアーキテクチャライセンスによるメリットを享受できると確信しているようだ。Ampere Computingはこのライセンスについて、「半導体開発のカスタマイズを推進していく上で、重要な鍵になる」とみている。

 米国の調査会社IDCでコンピューティング半導体担当リサーチバイスプレジデントを務めるShane Rau氏は、EE Timesのインタビューに対し、「アーキテクチャライセンスがあれば、長期的に設計上の選択肢が広がり、差異化を実現できるようになる」と述べている。

 同氏は、「例えば、サーバ向けプロセッサメーカーとして、市場において平均販売価格(ASP)と利益の確保をめぐって真剣に競争を繰り広げていくためには、自らのターゲットとする顧客や市場、設計などを選択して、差別化を実現可能な価格や性能、電力、機能などを組み合わせることにより、長期にわたり差別化を継続していく必要がある。このようなことは、プロセッサライセンスでは不可能だが、アーキテクチャライセンスでは全てを実現できるのではないか」と付け加えた。

 だが、CaviumやHuawei(HiSiliconの親会社)、Broadcom、Qualcommなど、Armのアーキテクチャライセンスを保有しているメーカーは他にもある。Ampere Computingがどれほどの優位性を確保することができるのかは不明だ。

 Ampere ComputingのSankaran氏は、「市場では現在、x86の代替となる命令セットアーキテクチャの登場が待ち望まれている」と述べる。

 しかし、本当にそうだろうか。Intelが、サーバ向けSoC市場でいまだに優勢を維持しているということは、Armベースのサーバ向けプロセッサに対する需要がそれほどでもないということを示しているのではないだろうか。

 IDCのRau氏は、「これまで、Armベースのサーバ向けプロセッサを手掛けるメーカー各社の取り組みの妨げとなってきた要因として挙げられるのが、ハードウェア/ソフトウェアエコシステムやプロセッサ設計が不十分だったために、x86サーバ向けプロセッサメーカー各社との間で十分に競争できるような性能を達成できなかったという点だ」と指摘する。

 しかしRau氏は、「機器メーカーやクラウドサービスプロバイダー、OSベンダー、アプリケーションメーカーなどのArmエコシステムは、十分に優れたデータセンターシステムを構築することができる」と主張している。

 また同氏は、プロセッサ設計について問われると、「Ampere Computingの設計については、技術的なメリットに関する詳細を挙げることができない。しかし、Ampere ComputingやQualcomm、Caviumなどの、最新世代のサーバ向けプロセッサ設計には、旧世代にはない特長がある。例えば、より高性能なコアを数多く搭載している、キャッシュの容量が多い、といった具合だ。

 Rau氏は、Renée James氏の役割は、大手の潜在顧客との関係を築くことに尽きるとみている。Gwenapp氏は、懐疑的な見方をしている。「Ampere Computingが成功するには、旧AMCCのX-Gene 3あるいは、次の製品で、クラウドサーバ市場に大きな風穴を開ける必要がある」(Gwenapp氏)

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