AI時代に舵を切る半導体ベンダーの「持ち札」:Renesas DevCon Japan 2017(1/2 ページ)
日の丸半導体ベンダー、ルネサスが攻勢の兆しを見せている。17年度第1四半期決算は好調でありインターシルの買収も終了した。5年ぶりに開催したプライベート展で語られた、攻勢を支える「持ち札」とは何か。
これまでなかなか収益の安定を果たすことができなかったルネサス エレクトロニクスが好転の兆しを見せている。2017年度第1四半期(2017年1〜3月)は売上高1710億円、営業利益233億円を見込むなど好調であり、2017年春に発表した事業改革では社内組織を、これまでの車載/車載以外から、車載/特定分野別半導体/汎用製品ビジネスの3事業部に改め、さらには中国事業統括本部を新設するなど攻めの姿勢を見せている。
2017年4月11日に同社が開催したプライベートイベント「Renesas DevCon Japan 2017」の基調講演では代表取締役兼CEOの呉文精氏が登壇し、ルネサスの攻勢を支える“攻め手”を紹介した。
現実世界で「AI搭載機」を動かすことの重要さ
基調講演に登壇した呉氏がまずアピールしたのが、エンドデバイス(組み込み機器)へのAI搭載技術である「e-AI」(関連記事:稼働中の産業機器にAIを「追加」で実装、組み込みAIを実現)だ。
呉氏は「サーバ側で学習した結果をネットワーク接続されたエンドデバイスで実行する手法は、瞬時の判断と行動が求められる機器に適さない」と述べ、現実世界で動くモノでAI技術を利用するならば、エンドデバイス(機器側)へのAI搭載が手法として適すると主張する。これ加えて、クラウドとデバイスがつながるだけではなく、「デバイスとデバイス」「デバイスと人」など、さまざまな接続が行われ、それぞれに影響を及ぼす形態こそが未来形だろうと予測する。
そしてその実現に際しては、AIを実行する組み込み機器側に「リアルタイムコントロール」や「セーフティ」「セキュリティ」そして「ローパワー」の4要素が必要となり、その全てにコミットしていくというのが、ルネサスの戦略だ。
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