インドネシアに工場を持つ、日系製造業のIT事情とは? 中国に3年、タイに3年駐在した経験のある筆者が、それらの国と比較したインドネシア特有のIT導入の実態について現地からレポート。第9回では、ジャカルタを離れ、バンドン、バタム島、チレゴンなどで実施したセミナーキャラバンで感じたことを紹介したい。
昨今はジャカルタ近辺を離れ、バンドン、バタム島、チレゴン、スラバヤなどの工場区でセミナーキャラバンを実施してきた。これらの地域はインドネシア政府の指針で特定業種の工場が集中するなど、歴史や原材料の種類により、それぞれ特徴があるようだ。
バンドンといえば、家具製造の町(ジョコ現大統領の生家もバンドン近辺の家具製造業)であるが、最近は高級家具の個別生産に移行しており、生産スケジューラの必要性は低かった。
バタム島は古くから日系製造業との歴史があり、中国に対する香港のような位置付けだ。まだインドネシアからの輸出入が制限されていた時代から、バタム島で製造して、近くのシンガポールから世界へ輸出するといったビジネスモデルが確立されている。昨今はリストラによって、日系製造業の数も減ってきたと聞いているが、最近は中国と米国との貿易戦争を逃れ、台湾の「iPhone」の中国部品製造工業がこの地に引っ越してくるとのアナウンスもあった。比較的周りにサプライチェーンに対応できる部品メーカーが多く存在し、生産に必要な部品をシンガポールから輸入できることが背景にある。バタム島では、日本人の工業会が主催する勉強会の中で製品紹介を行ったが、古い歴史を持つ工場が多い割にはERP(Enterprise Resources Planning)システムなどを利用している工場は少なかった。生産スケジューラに関してもアンケートを見ると関心はあるものの、基盤システムの整備を優先する企業が多かった他、生産量が落ちて、Excelで十分との回答も見られた。
チレゴンはジャカルタから自動車で3〜4時間の場所にある。製鉄業や化学工業などの工場も多く、港に隣接しており輸出入にも適している。日本でもそうだが、こうした重厚長大で時に周囲に影響を与える産業は、海沿いの住民の少ない地区に隣接している状況であった。日系製造業としては、比較的大きく歴史のある工場も多く、SAPなどの大型ERPを日本本社の推奨で利用している企業が多い。生産スケジューラのニーズとしては、プロセス系の製造業が多いため、ボトルネック工程やバッチ処理工程といった一部ラインでのニーズが存在した。ちなみに、クラカタウ・スチールのような大型の国営企業(日本の製鉄業とも合弁をし、近年、自動車に利用される鉄板の製造などを手掛けている)などでは、キチンとした情報システムの体制でシステム運用がされていることが印象的であったが、システム自体は自前のモノが多く、パッケージを導入するとしても、財務会計システムなどに限定されていた。
スラバヤに関しては、セミナーの開催が会場都合で2019年2月に延期となったため、ここでの状況報告は割愛するが、その代わりに、2018年11〜12月に参加したタイ、インドネシアでの大型製造業向けイベントの様子を報告したい。
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