東芝が2018年3月期(2017年度)通期決算と中期経営計画を発表した。好調のメモリ事業については「事業売却の失敗は考えていない」と売却に向けた手続きは順調であるとの姿勢を強調した。
東芝は2018年5月15日、東京都内で決算説明会を開催し、2018年3月期(2017年度)通期決算および、2019年度以降5年間の会社変革計画として「東芝Nextプラン」を策定中であることを公表した。
2018年3月期売上高は3兆9476億円(前年比2.4%減)、営業利益は641億円(前年比21.9%減)、税引き前利益824億円(前年比83.3%増)、最終利益8040億円(前年は9657億円の損失)で黒字に転換した。
メモリ事業の譲渡や第三者割当増資による財務基盤強化、米国連結子会社だったウェスチングハウスエレクトリックカンパニー(以下、WEC)のリスク遮断、構造改革を含めた収益性改善などの施策が功を奏した形となる。同社社長の綱川智氏は「危機的な財務状況は解消することができた」と語った。
メモリ事業は依然として好調だ。非継続事業となるメモリ事業を組み込んだストレージ&デバイスソリューション部門の売上高は2兆64億円(前年比18.0%増)、営業利益は5196億円(前年比210%増)となり、そのうちメモリ事業は売上高1兆2049億円(前年比34.3%増)、営業利益は4791億円(前年比257%増)。メモリ事業の営業利益率は前年比約2倍となる39.8%と大きく増加し、同部門の収益向上に大きく貢献した。
その一方でHDD事業はPC市場縮小のあおりを受け減収減益、デバイス事業ではディスクリートが増収増益、システムLSIが減益となったことから事業全体では増収減益となった。
2019年3月期(2018年度)通期の業績予想は、売上高3兆6000億円、営業利益700億円、最終利益1兆700億円を見込む。最終利益のうち、メモリ事業の売却益9700億円、メモリ事業の非継続事業損益800億円(2018年度第1四半期に非継続事業になると仮定)を組み込んでいる。
メモリを含まないストレージ&デバイスソリューション部門の業績予想は、売上高8300億円(メモリ非継続組換後前期比5.7%減)、営業利益210億円(同55.6%減)の減収減益を見込んでいる。
決算説明会の質疑応答では、証券アナリストや機関投資家、記者からメモリ事業の売却と、メモリ事業売却後の東芝の成長に関する質問が集中した。
「東芝メモリの売却について、中国当局の認可が得られなかった場合どうするか」との質問に対して、同社会長の車谷暢昭氏は「(認可を得られないといった)ネガティブな情報は現時点で得ていない。譲渡契約解除を前提とした検討は行っていない」と回答した。
「メモリ事業売却後、東芝の稼ぎ頭となる事業は何か」との質問に対しては、「各事業部長が練ってきた事業プランを念頭に、投資すべき分野に投資し収益性を上げていく。メモリ売却で大きな資本が入るため、最も投資効率が良いところに資本を割り当てていきたい」と回答。また、継続事業の課題である売上原価率を改善することにも言及し、「調達、設計、製造、販売まで全てのバリューチェーンを見直し、基礎収益力の強化を図る」(車谷氏)とした。
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