「ARMコアの普及」(前編)――AppleとNokiaに見初められたプロセッサIP(2/2 ページ)
3種類のARMコア
ただこの後、特にスマートフォン向けには、より高い処理性能が求められるようになってきた。これに向けてARMは新しい命令アーキテクチャ(ARMv7)を3種類策定すると共に、これを実装する3種類のCPUコアを開発した。
最初に投入されたのはマイコン向けの「Cortex-M」で、最初のコアであるCortex-M3が2004年に発表されている。翌年にはアプリケーションプロセッサの「Cortex-A」シリーズの最初の製品であるCortex-A8が、2006年にはリアルタイム制御向けの「Cortex-R」シリーズに属するCortex-R4がそれぞれ発表されることになった。
この中で、特にスマートフォンなど高い処理能力を求める製品向けには、Cortex-A8 → Cortex-A9 → Cortex-A15 → Cortex-A17 → Cortex-A57 → Cortex-A72 → Cortex-A73 → Cortex-A75、というハイエンド、Cortex-A7 → Cortex-A53 → Cortex-A55というミドルレンジ、Cortex-A5 → Cortex-A32/35のローエンドという3系統のコアが提供されている。
厳密に言えばハイエンドに関しては、Cortex-A15/A72/A75はサーバなどにも使える高性能/高信頼性向け、Cortex-A17/A73はハイエンドスマートフォン向けに性能/消費電力比の高さを狙った携帯機器向けといった違いがあるので、ハイエンドが2系統としても良いかもしれない。
さてこのCortex-A、最近ではPC以外の全ての情報機器に何らかの形で入り始めている、というのは大げさではない。組み込み機器にも広く利用されるようになってきているし、それどころかPCにも入り始めようとしている兆候があるほどだ(Photo01)。
このCortex-Aよりも急速に普及しているのがMCU向けのCortex-Mである。まずCortex-M3が、次いで低コスト向けのCortex-M0、FPU/DSP付きのCortex-M4、Cortex-M0より省フットプリントのCortex-M0+、Cortex-Aのローエンドに匹敵する性能のCortex-M7、という具合にラインアップを展開している。強烈なのは、ほとんどのマイコンベンダーがCortex-Mベースの製品を用意するまでに至っていることだろう。
日本国内で言えばルネサス エレクトロニクスは独自MCUのラインアップを堅持していたが、2015年にRenesas SynergyというCortex-Mベースの製品を提供開始している。独自路線を歩んでいたはずのエプソンですら、S1C31というCortex-M0+ベースのMCUを用意「せざるを得なくなっている」のだ。
これは海外も同じで、ほとんどのMCUベンダーがCortex-Mベースの製品を用意している。PIC MCUでおなじみのMicrochip Technologyは32bit MCUにMIPS32を選ぶという独自路線を貫いたハズが、Atmelの買収に伴いCortex-Mベースの製品をがっちり抱え込む事になってしまった。Z80のZilogですら、今ではCortex-MベースのMCUを用意するほどである。
残るCortex-R系も、目立たないながら確実にシェアを高めている。Cortex-RはMCUより高い処理性能と実時間処理が必要とされる用途向けのもので、HDDコントローラーのモーター制御のような制御用途にも使われ始めている。最近では車載のECU(Electronics Control Unit)に多く採用されている。
では、なぜこれらが市場を席巻し始めているかだが、「Cortex系プロセッサの性能が優れている」という単純な話ではない。いくつかの立場から考えてみよう。
(後編に続く)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
特集(エレクトロニクス)
「エレクトロニクス」関連の特集記事です。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] 脱炭素投資をすぐ回収したい 自動車業界にも有効なCO2削減アプローチ -
製品資料
[株式会社 Green AI] 自動車業界の脱炭素はなぜ進まない? 実務で直面する“壁”の乗り越え方 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:製造現場にフィジカルAIをどう実装するか――電子版2026年9月号
-
2
ものづくり白書2026を読み解く
-
3
機械・電気設計の連携はなぜうまくいかない? 手戻りを防ぐ協調設計の進め方
-
4
Waymoの自動運転技術に迫る
-
5
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
6
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
7
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
8
計測器アプリケーションにおいて7.5桁の精度を実現する方法
-
9
OTセキュリティ実態調査2026
-
10
「改正物流効率化法対策」徹底解説 総物流費を抑制するサプライチェーン戦略
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー