「ARMコアの普及」(前編)――AppleとNokiaに見初められたプロセッサIP(1/2 ページ)
ソフトバンクによる買収で知名度を上げたARMだが、ARMが扱う「CPUの設計図」である「ARMコア」の用途はスマートフォンに限るものではなく、さまざまな分野で利用されている。なぜ「ARMコア」は広まったのか。
最近はARMコアがごく一般的に使われるようになってきた。ソフトバンクによる買収のおかげ(?)で、ARMという会社そのものの認知度も上がってきた感があるし、コアそのもののバリエーションの多さと性能/消費電力レンジの広さもあって、携帯電話やスマートフォン以外に使われることも多くなってきた。
ここでは、どうしてARMコアがここまで普及したのかという話をしたい。
出発は「Acorn RISC Machine」、AppleとNokiaに見初められたIP
ARMはもともと、英国のコンピュータメーカーであった「ACORN Computer」が自社製品向けに開発したものだ。同社はMOS TechnologyのMPU「6502」を搭載した製品を出荷しており、ARMはその後継製品への搭載を狙ったものだった。なので、ARMという名称のオリジナルは“Acorn RISC Machine”である。
ただその後、ARCON Computerは業績不振でOlivettiの傘下に入る。その一方で、ARMのCPUコアそのものに目を向けたのがAppleであった。AppleはNewtonという初期のPDA向けにARMコアを採用することを望み、この結果、CPUの設計部門はARCON Computerから分離してARM Ltd.を形成。以後「CPUの設計図(IP)」を製造・販売する会社になった。ちなみにこの段階でARMは“Advanced RISC Machine”の略になっている。
ARM Ltd.における最初のビジネスがPDA向けプロセッサということもあり、同社製品は競合に比べて低消費電力を特徴としていた。逆に言えば性能はそこそこでしかなかったが、この低消費電力というのは初期の情報機器に極めて有用な特徴であった。
フィンランドのNokiaが携帯電話ビジネスに参入するにあたり開発したSymbian OSという携帯電話向けのOSは、ARMのCPUを搭載したSoCをターゲットとしたのだ。このSymbian OSベースの携帯電話が急速に普及してマーケットを席巻した事で、自動的に携帯電話向けのCPUにはARMが採用されることになった。これに向けてARM自身もCPU性能を少しづつ高めてゆき、これが功奏して更にマーケットが広がる、という好循環を形成することとなった。
そして多数のARMベースのSoCが世の中に出回ることで、必然的にこれに対応したソフトウェアのエコシステムが構築され、ARMベースでのソフトウェアの開発が次第に容易になってゆくと、携帯電話以外の用途にも次第に利用されるようになってきた。筆者の経験だと、2000年前後に発売されていたルーターのうち、低価格品にはかなりの確率でSamsungのARM 7ベースチップが搭載されていた。
やがて携帯電話向けがARM 9ベースからARM 11ベースになるのに歩調を合わせ、ARM 9が組み込み機器向けに使われるようになり、スマートフォンの時代を迎えることになる。最初のスマートフォンらしいスマートフォンは、2007年に発売された初代iPhoneとして良いと思うが、これに利用されていたのはSamsungが開発したARM 11ベースのSoCである。
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