「そんなカイゼンで大丈夫か」「大丈夫だ、問題ない」とはいかないようです。
2017年1月18〜20日に開催された展示会「スマート工場 EXPO」(東京ビッグサイト)は第1回の開催にもかかわらず100社を超える企業がブースを構え、会期中は多くの来場者で賑わいました。
「スマート工場」という言葉の定義がもやっとしていることはさておき、会場内ではロボットアームの故障予兆や信号灯を利用した工場見える化、作業員の状態把握まで行うIIoTソリューション、ビニールテープを貼るだけで動く無地搬送車など、IoTやM2M、FA、産業用ロボットなどを利用した現場改革の提案が多数行われていました。
講演やパネルディスカッションも多く行われました。中でも『なぜスマート工場(だけ)ではダメなのか』というパネルディスカッションはその刺激的なタイトルも興味を引いたか、1000人以上の来場者を集めたそうです(関連記事:つながる工場「だけ」ではダメか――日本製造業の今後に必要な“横軸”)
このパネルディスカッションに登壇した、経済産業省 西垣淳子氏とSAPジャパン 村田聡一郎氏の主張には共通する一節がありました。それは「現場改善“だけ”では、競争力を保てない」というものです。ですが、スマート工場 EXPOの会場には多くの「現場カイゼン」が展示されていました。この矛盾するような状況こそが日本製造業の抱える問題ではないかと思うのです。
西垣氏と村田氏はカイゼンを否定していません。現場カイゼンと同時に、需要へ応えるあるいは需要を作り出すという“軸”が必要だと主張しているのです。そしてその“軸”を実現するには、生産部門だけではなく経営や企画、購買、人事、マーケティングまでが一丸となって取り組む必要があります。
ですが言うは易く行うは難し。全社一丸と言えば聞こえは良いですが、実現するには相当な努力が必要となります。PredixがIIoTの代表的な成功事例といわれるGEですら社内の縦割りを解決するために相当な努力を有したと西垣氏が話していたよう、目的の明確化がなければ、IoTの果実を得ることは叶わないでしょう。
ただ、スマート工場 EXPOの展示全てが現場カイゼンだけを目的としたものではありませんでした。電通国際情報サービスや新日鉄住金ソリューションズはSIerとしての知見を生かしたソリューションや導入事例を紹介しており、多くの来場者が足を止めていました。これまで通りの「カイゼン」は続けるにしても、「それだけではダメなのでは……」と胸中に抱く人が多いことをうかがわせる場面でした。
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