IoT、インダストリー4.0がこれほどまでに盛り上がり続けるのは、その将来像への賛同だけではなく「現時点で材料となる技術はそろっていて、決して夢物語ではない」と多くの人が感じているためである。日本のモノづくりは改善を重ねることで着実に世界をリードしてきたが、第4次産業革命で求められる非線形なモノづくりの進化をリードしていくためには、「製造現場のガラパゴス化」を解消することが急務だ。本連載では、日本のみならず世界的に盛り上がりを見せるIIoTの技術で製造業はどう変化していくのか、日本の製造業がその変化に追従していくためのボトルネックとなる国内製造業のガラパゴス化について解説する。
昨今、「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」という言葉を見ない日はない――と言っても過言ではないほど、IoTに関する取り組みが各所で積極的に行われている。
IoTそのものは、ここ数年で民生やITの分野から盛り上がり始め、ドイツが取り組む「インダストリー4.0(Industrie 4.0)」や米国が主導する「インダストリアル・インターネット(Industrial Internet)」といった言葉とともに、今日、産業分野、特に製造業の生産自動化の分野で注目を集めている。この産業分野に特化したIoTのことを、われわれは「IIoT(Industrial IoT)」と呼んでいる。
では、IIoTがなぜ産業界でこれほどまでに脚光を浴びているのだろうか? それは、製造業が抱える課題と、IIoTで解決できる課題がマッチしているからだ。
製造業の根幹は、高付加価値の製品を低コストで生産することにある。言うまでもないが日本の製造業は国際的にも非常に高いレベルにあり、製品の高性能化、またそれを高品質・安価に製造する技術で世界をリードしている。自動車メーカーであれば、製品開発において次々に燃費性能を更新し続けていることが挙げられる。さらに、製品を高品質・安価に製造するという面でも、国内から今や世界的に広がったトヨタ自動車の「カイゼン」のアプローチや、生産工程の自動化(ファクトリーオートメーション)も徹底して行われている。
そして、こうした自動車メーカーの高い自動化要求は、次第に国内ロボットメーカーにも向けられるようになり、日本国内のロボットメーカーは技術力に磨きをかけていくことになった。今や産業用ロボットの業界でも日本は技術力、シェアともに世界トップレベルにある。このように、日本の産業はさまざまな高い技術課題を国内の企業同士で切磋琢磨し、連携して解決することで、今日の国際競争力を獲得してきたのである。しかし、詳しくは後述するが、この“日本独自の高い技術力”が、一方で“国内生産設備のガラパゴス化”を引き起こす原因にもなったのだ。
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IIoTがなぜ盛り上がっているのか? それは結局のところ、IIoTの技術がコスト削減と製品の品質・価値向上を可能にするからであり、これが“製造業の永遠のテーマ”とマッチするためである。しかし、それが具体的に何をもたらすのか、読者の中にはそれがまだぼんやりとしている人たちもいると思う。そこで、幾つかの具体例を以下に挙げてみることにする。
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