ロボットによる接客に注目が集まっている。これまでロボットといえば多くは製造現場で溶接や部品の取り付けなどを行う産業用ロボットを指していた。しかし近年、ロボットの活躍の場がサービス業にも広がりつつある。
ロボットによる接客に注目が集まっている。これまでロボットといえば多くは製造現場で溶接や部品の取り付けなどを行う産業用ロボットを指していた。しかし近年、ロボットの活躍の場がサービス業にも広がりつつある。身近な例では人工知能を搭載した人型ロボットPepper(ソフトバンク社とアルデバラン社が共同開発)が店頭で接客をしているケースが思い起こされる。
もっとも、日本で期待されているのはサービス業の中でも介護・福祉分野での利用である。介護・福祉ロボットとして有名なのはサイバーダイン社が開発したロボットスーツHAL(Hybrid Assistive Limb)だ。同ロボットスーツは身体機能を改善・補助・拡張する。そのため当該ロボットスーツを身体に装着することで身体の不自由な人をアシストしたり、いつもより大きな力を出したりすることが可能となり、介護の負担が軽減される。このような介護・福祉の現場で活躍するロボットに対する需要は国内だけにとどまらず、海外市場においても大きく期待されている。そこで日本政府も経済産業省と厚生労働省が中心となって介護ロボットの市場展開を促し、新たな市場の創出を目指している。
他方、海外ではAmazonやGoogleなどIT企業によるロボット事業への参入が注目を集めている。特に話題となっているのは無人搬送型ロボットを活用したサービスの高度化である。Amazonは小型無人飛行機による配送サービスを開始する旨を発表している(正式な開始時期は現時点では未定)。近年、小売業者各社は配達スピードに関する競争を激化させている。Amazonは小型無人飛行機を利用し、これまで以上に早いスピードで顧客に注文した品を届け、サービスの向上に努めるつもりなのであろう。
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さて、ロボットの活躍の場がサービス業に広がっているとはいっても、その市場規模はいかほどか。2010年4月に経済産業省とNEDOが公表した「ロボット産業の将来市場予測」によると2015年のロボット産業の市場規模(国内)は1兆5990億円と推計されている。うちサービス分野の市場規模は23.3%と製造分野のそれ(62.7%)と比較すると3分の1程度である。しかし2035年には市場規模9兆7080億円のうち51.1%がサービス分野と推計されている。
当該市場予測によると2025年にはサービス分野の市場が製造分野の市場を上回るとされている。なお、当該市場規模は金額ベースのため、人工知能が搭載されたロボットの出荷が増えると見込まれるサービス分野の方が、単価が高いが故という可能性もあり、出荷台数ベースでみると製造分野の方が市場は大きいということも考え得る。いずれにせよ、こうしたロボット産業の市場拡大に対し、人の仕事がロボットに奪われるのではないかという懸念の声が聞こえてくる。
筆者は、“奪われる”という表現は少々行き過ぎではないかと考えている。19年後の2035年にロボットがどこまで進化しているか、期待は膨らむが現実は期待ほどではない、そんな予感がある。しかし19年前にはスマートデバイスやクラウドコンピューティングの影すらなかったことを考えると予想以上に進化したロボットが存在しており、少子高齢化の日本を支える存在として人と共存している、そんな未来を期待したい。だからこそ“奪われる”が行き過ぎではないかと考えるのである。
足元の状況からロボットとの共存について考えてみる。洋菓子店にケーキを買いに行くことを想像して欲しい。ショーケースに並んだ色とりどりのケーキに、どれを購入するか迷うこともしばしば。こんな時ロボットからオススメはこれですと言われれば迷う時間は短縮されるだろう。もちろんこのロボットには筆者がこれまでに当該店舗で購入したケーキに関するデータがインプットされており、チーズケーキやタルト系が好き、シブーストは買わない、“期間限定”“数量限定”という言葉に弱いなどというデータからオススメのケーキが導き出されている。これを洋服(今回はボトムス)に置き換えてみた場合はどうか。やはりロボットには筆者がこれまで当該店舗で購入したボトムスに関するデータがインプットされており、ネイビー系が好き、パンツやキュロット、膝上丈のスカートは買わないなどといったデータからオススメはこれですと言われ、試着に至る。果たしてロボットはデータから導き出されたスカートを試着した筆者に、「お似合いです」以外を口にすることがあるのだろうか。“似合わないわけではないけれど少し違う”。洋服を購入する場合はこんなケースがある。また少し気分を変えたいのでこれまでとは違う傾向の洋服を選びたい、そんな心理の時もあろう。こうした場面ではロボットではなく人の接客の方が心強い。最後の決め手が接客してくれたのがこの人だからということも少なくないはずだ。
だとするとロボットとケーキショップの相性は良いが、アパレルショップとはそうではないということになる。しかしそうではない。ケーキショップでショーケースからケーキを取り出すのは人の方が向いている。ロボットは自身のアームにクリームが付着しても、ショートケーキの上からいちごが転がっても気付かない可能性が高い。他方、アパレルショップでもスタッフに声をかけられることを不得手とする消費者は多く、最初の声がけがロボットになれば抵抗感は低減されるだろう。
つまりそれぞれにロボット、人に適した場面があり、それが故に両者は共存していくと考える。ロボットが職場の仲間になる日が到来することもそう遠くはないと考える。
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