大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
Arm再売却の予想と、Intel TMGの行方(4/4 ページ)
TMGはあまり外部に出てくることがないが、Intel社内でもある意味アンタッチャブルというか、TMGそのものが独立組織という感じであり、しかも軍隊的な組織と言われていた。要するに上の命令が絶対であり、下からそれに意見することは許されない。そうした事もあって離職率は結構高かったらしいが、何しろ人数が多いからそれで困る事は無かったらしい。なぜTMGがこうなったかと言えば、過去のIntelの強さの源泉が製造プロセスにあったからで、それを担う部門が独善に走るのはまあ良くある話である。聞いた話で言えば、そのTMGの中にもいろいろ派閥があるそうで、例えば10nmを担うチームと7nmを担うチームの仲が悪かったとか、なので情報共有が何もされていないとか、にもかかわらず対外的に戦う(例えば本社の設計チームと議論する)場合には途端にタッグを組むとか、要するに手が付けられない組織で、「顧客」の言う事もまあ聞かなかったらしい。
ここで言う「顧客」とは、要するにIntelのCPUの設計チームの事である。顧客からすれば、例えば10nmにしても「高機能だけど投入までに時間が掛かる」プロセスよりも「改良はそんなに多くないけど、すぐ量産に入れる」プロセスの方が有難いだろう。特に14nmがひっ迫している昨今では、早く10nmのラインを使って製品を市場投入したいと思うだろう。少なくとも本社のマーケティングとか営業はそう願っているはずだ。にも拘わらず、TMGはそうした顧客のニーズを聞き入れる事がなく、自身の立てた高いハードルをクリアすべく、どんどん出荷時期がずれていくという状況に陥った訳だ。7nmにしても直近の問題は欠陥モードの克服であるのだが、根本的な問題は顧客ニーズを汲まずに突っ走った結果、ということになる。
これは筆者の推測でしかないのだが、前CEOだったBrian Krzanich氏はもともとがTMGの出身である。それもあって、2013年に彼がCEO職に就いたときにはTMGの勢いがさらに増した感があるのだが、ただその彼をもってしてもTMGのコントロールが難しくなってきたのかもしれない。2015年にKrzanich氏はQualcomm Technologiesの副社長だったRenduchintala博士を引き抜き、Systems Architecture Groupのトップに据える。多分TMGの生え抜きのままでは、TMGの体質を変える事は難しいと考え、それ故外部からトップを招いたのではないかと思う。Krzanich氏の失脚後もRenduchintala博士は引き続きエンジニアリングのトップであったが、7nmの致命的なDelayというのは、その現象そのものもさることながら、TMGの体質を変えられなかったという意味でもある。その結果が今回のRenduchintala博士の退職と、TSCGの解体につながったように筆者には思われる。
今後Manufacturing and Operationsは上で書いたようにKelleher博士がトップとなるが、彼女はBob Swan CEOに直接レポートする形になっている。これは要するにSwan CEOが、TMG生え抜きのKelleher博士経由で、直接TMGのハンドリングを行うという意味にも思える。
無責任な言い方をすれば、こうした硬直化した組織は一度解体してしまった方が、リカバリーがしやすい。幸いにも今は財務的には十分に余力があるし、解体の大義名分も十分にある。もともとSwan CEO自身、2016年にCFOとして入社した、その意味では生え抜きから一番遠い人材である。ただしGEやEDS、eBayなどさまざまなところでCFOを経験してきた、その意味では敏腕なビジネスマンであり、しかもしがらみが少ない。そんな訳でTMGを構造改革して、再びテクノロジーのリーダーの座に返り咲けるかどうかはSwan CEOの手腕に掛かっているともいえる。
以前、宗像義恵氏(元インテル取締役兼副社長執行役員、2016年3月末に退任)に伺った話で、故Andy Grove氏(元Intel CEO、Intelの3番目の社員で中興の祖とも言われる)に「例えば20年後とか30年後、Intelはどんな会社になってると思いますか」と聞いた人がいたそうで、その答えが「半導体を作ってるかどうかは分からないけれど、テクノロジーのリーダーシップが出せる企業であり続けたい」だったそうである。今の同社は、まさしく今後もテクノロジーのリーダーシップが出し続けられるかどうかの瀬戸際に居るようにも感じられる。Swan氏の健闘に期待したい。
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