大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
Arm再売却の予想と、Intel TMGの行方(3/4 ページ)
Intel TMGの行方
7月前半はArmのニュースでもちきりだったが、それを吹き飛ばしたのがIntelの2020年第2四半期の決算発表である。第2四半期のIntelの決算そのものは申し分ない。第2四半期の売上は197億ドルで、前年比でクライアントが34%、サーバが7%伸びている。一株当たり利益(EPS)は前年の$1.06から$1.23であり、営業利益率は30.7%である。この数字はQ2だけのものであるが、通年見通しでは売上750億ドル(昨年比4%アップ)、営業利益32%(昨年比1%ダウン)、EPS $4.85(ほぼ昨年並み)とされており、COVID-19の環境下においては十分優秀な数字である。
にも拘わらずこの決算発表の直後から株価は急落した。理由は7nmプロセスの遅延を発表したからである。2019年5月のInvestor Meetingにおいては、7nmは順調であり、2021年に製品が投入される(図2)と説明していた。
だが、その1年後に
- 7nmは社内のロードマップと照らし合わせて1年遅延している
- 遅延の要因は歩留まりが改善しないことである。直接的な理由である欠陥モードそのものは特定できており、これを解決するための根本要因の排除は(技術的に)可能と考えている
- この結果として7nmを使う製品のスケジュールは半年ほど後ろ倒しになる
- 更なる不確実性(=遅延)による製品計画の狂いを防ぐための緊急対応計画を進める
といった事が発表された訳で、要するに2019年のInvestor Meetingの時点から7nmプロセスが事実上何も進展がない事が明らかにされたことになる。
短期的には同社の14nmプロセスによる製品の稼ぎは大きいが、その14nmプロセスそのものはもう賞味期限の末期に達しているのは誰もが理解している。ところが本当はもう14nmを置き換えているはずの10nmが不調であり、同社の10nmプロセスのラインはフル稼働から遠い状況にある。ただ7nmプロセスが順調に進めば、10nmをスキップして7nmプロセスの製品で14nmの製品を置き換える事が可能で、そうなれば引き続き同社は競争力の高い製品を提供することが可能で、売上も維持できると見られていた訳だ。今回の発表で、この目算が全て崩れた事になる。もっと言えば、これが本当に1年の遅れで済むという確証があれば、ここまで投資家がIntelの株を売る事は無かっただろう。Intelのプロセスが予定通りだったのは22nm世代までで、14nmは1年遅れ、10nmは2年遅れ(3年、という数え方もある)であり、7nmが1年の遅れだけで済むわけがない、と考えるのは無理ない所だ。結果として株価は下落。逆にAMDは株価急騰しており、AMDがIntelを上回る株価をつける事になった。グラフは今年に入ってからの株価推移であるが、過去20年あまりで見ても初めての事態と言って差し支えない、対照的というかある意味象徴的な株価となった。
この責任を取る形でTSCG(Technology, Systems Architecture and Client Group)を率いてきたMurthy Renduchintala博士(Chief Engineering Officer, Group President)は2020年8月3日に辞職。TSCGそのものも解体され、
- Technology Development
- Manufacturing and Operations
- Design Engineering
- Architecture, Software and Graphics
- Supply Chain
の5組織に分解した。この中で、7nmと5nmプロセスの開発については、Ann B. Kelleher博士が掌握。これまでその任についていたMichael C Mayberry博士(CTO, SVP&GM、Technology Development)が今年末で定年で退職する事もあってか退任ではなく年末まで相談役を務めるという形になった。
もっともこの事態そのものは、恐らくずっと前に分かっていた。Intelは「緊急対応計画」として、既にCPUの代替生産向けにTSMCの6nmを、GPUの代替生産にTSMCの5nmをそれぞれ予約していると見られる。2021年に同社が納入するAuroraというスーパーコンピュータは、そんなわけでTSMCの6nmで製造されたXeon(コード名Sapphire Rapids)と、5nmで製造されたXe GPU(Ponte Vecchio)で構成されることになる模様だ。2020年6月25日に、Architecture, Software and Graphicsを率いるRaja Koduri氏が4コアのPonte Vecchioと思しき写真をTwitterにあげているが、これはおそらくTSMCの5nmで製造された試作品であろう。逆に言えば、昨年「7nmは順調である」と言っていたころには、既に「緊急対応計画」の一環としてTSMCの5nmを利用しての生産のプランは走っていたことになる。
14nm/10nm/7nmと連続して新規プロセスが不調な根本的な要因として挙げられるのが、高すぎるターゲットである。例えば10nmの配線層をSAQPで実装するとか、その10nmもプロセスノード的には他社の7nmに相当するとか、COAG(Contact Over Active Gate:トランジスタの真上に、配線層につながるコンタクトを置く)やSingle Dummy Gate(ゲート間のダミーを1つに減らす)など難易度の高い技術を積極的に導入するなど、自身で無駄にハードルを上げていたきらいがある。ただもっと根本的な問題は、Intelの半導体製造を担うTMG(Technology and Manufacturing Group)という組織そのものにある。
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大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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