大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
NVIDIAのMellanox買収とインターコネクトをめぐる動向(1/2 ページ)
エレクトロニクス/組み込み業界の動向をウオッチする連載。今回は、2019年3月の業界動向の振り返りとして、インターコネクト(Interconnect)の話を紹介する。
2019年3月11日、NVIDIAによりMellanoxが買収されることが発表された。買収金額はおよそ69億ドル。100億ドル規模の買収でにぎわった昨年に比べるとやや金額が小さい(こういう感想を抱く時点で既に感覚がマヒしている気もする)とはいえ、大型買収である。
この買収では、特にHPC関連ベンダーからいろいろな意味で悲鳴が上がった。もともとMellanoxはIntelに買収されるという話があり(Intelは60億ドルでの買収を持ち掛けていた)、NVIDIAが9億ドルほど上乗せしての買収となった形だが、どちらに買収されてもHPC業界にはいろいろと影響があるためだ。
MellanoxはInfiniBandという高速インターコネクトで有名になった会社である。InfiniBandというインタフェースは、もともとIntelを中心に1999年ごろに策定されていたNGIO(Next Generation I/O)という規格と、COMPAQ/HP/Adaptec/IBMが中心になって策定していた、Future I/Oという規格を一本化したもので、InfiniBand Trade Associationという団体が仕様策定などを担う事になった。もっとも、肝心のIntelは2002年ごろに一度手を引いている。ただその後もInfiniBandは生き残り、特にHPCとか大規模クラスターのマーケットで次第に使われるようになってきた結果、Intelも(当時InfiniBand向け製品をリリースしていた)QLogicを2012年に買収して市場に再参入する、という動きを見せている。
そのInfiniBand、絶対的な価格という意味ではイーサネット(Ethernet)よりは高価であるのだが、それでも従来HPCなどでクラスタ間をつないでいたMeiko ScientificのElan-Elite(のちにQuadricsのQSNetと名前を変えている)に比べるとずっと安価で、しかも高速かつレイテンシが少なかった。イーサネットと比較しても速度およびレイテンシの観点で優れているという評価を得たことで、ベンダーが独自にインターコネクトを提供する場合はともかく、オープンシステムベースでHPCを構成するような場合にはInfiniBandを利用することが一般的になってきている。
ちなみにInfiniBandの場合、1/2/4/8/12/16ch構成での接続が可能で、転送性能もSDR(1ch当たり2.5Gbps)/DDR(同5Gbps)/QDR(同10Gbps)/HDR(同50Gbps)/NDR(同100Gbps)/XDR(同250Gbps)までの規格が定められており、既にHDRまでをサポートした製品が市場に出回っている(NDR/XDRは今のところ規格のみ)。そうした事もあって、スーパーコンピュータのランキングであるTOP500に登録されているシステムの大体半分ほどがInfiniBandを利用している。
ということで話をMellanoxに戻す。同社はEyal Waldman氏らが1999年にイスラエルで設立したファブレス半導体ベンダーである。同社は当初からInfiniBandとイーサネットにターゲットを絞って製品展開を行っており、特にIntelが手を引いて市場そのものが縮小すると思われていた2003年以降は、InfiniBand製品といえばMellanoxしかないという状況(他社も一応製品ラインアップこそあったものの、古い製品のみという感じで、最新規格に準拠したものがMellanoxしかなかった)で確実にシェアを広げる事に成功している。
もちろん成功ばかりではない。同社はSilicon Opticsにも並々ならぬ興味を抱いており、それどころか2013年にはXLoom Communications Ltd.とKutora,Inc.、IPtronics A/SといったSilicon Optics関連企業を次々に買収して製品化にこぎ着けようとしたものの、どうもモノにならないと判断したようで、2018年に関連ビジネスを全て中断するアナウンスを出している。また同社は2014年にEZchip Semiconductorと呼ばれる、やはりイスラエルのファブレス半導体ベンダーを買収しているが、ここはサーバ向けに最大100チップのCortex-A53を搭載した製品などをラインアップしているベンダーで、これらを元にサーバ向けのインターコネクトだけでなくサーバそのものにも進出しようとしたものの、売り上げが立つには至っていない。
とはいえ2018年の決算を見ると、InfiniBand関連で4億3800万ドル、イーサネット関連で6億1800万ドル、その他も合わせた合計で10億8900万ドルほどの売り上げ(税引き後の純利益は4300万ドル)となっており、利益率はともかくとしてインターコネクトだけで10億ドルの市場を確保しているのはなかなかすごい事である。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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