大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
AMD復活の立役者がラティス新CEOに、問われるその手腕(1/2 ページ)
Lattice Semiconductorの新CEOに、AMDを「Zen」で復活に導いたJim Anderson氏が就任する。技術畑の出身ながら低迷するAMDを立て直した手腕を見込まれての登用となるが、Zenのような“銀の弾丸”は用意できるのだろうか。
AMD復活の立役者、Anderson氏がLatticeの新CEOに
この連載で何度か話題にしているLattice Semiconductorであるが、2018年3月に辞任したDarin G. Billerbeck氏の後任として、Jim Anderson氏の就任が8月27日に発表された(プレスリリース)。
組み込み業界においてJim Anderson氏の名前はあまり知られていないと思うが、2015年6月にAMDの「SVP&GM Computing & Graphics Business」というポジションに就任し、同社CEOのLisa Su氏を助けて会社の立て直しを図った実質的な責任者でもある。
Anderson氏はもともとLSI Technology(後のLSI Corporation)でAxxiaというネットワークプロセッサの担当副社長で、AvagoによるLSI Corporationの買収と、IntelによるAxxia部門の買収に合わせてAvago/BroadcomからIntelと席を移している。その前はIntelでプロセッサのアーキテクトなどを担当しており、経営やマーケティングの専門家というより技術畑の人である。
2015年にAMDへ入社したころ、AMDの株価は2.3ドル前後であった。当時のAMDといえば、コンシューマー向けプロセッサは全くユーザーに支持されず、辛うじてGPUのRadeonシリーズとXBox/PS4向けのセミカスタム製品によってなんとか売り上げを立てていたという状況である。
2015年の第2四半期の決算発表を見ると、第2四半期のみの売り上げは9億4200万ドルで、粗利は2億3200万ドル、営業損失は1億3700万ドル、純損失は1億8100万ドルに達している。これが3年後の2018年第2四半期の決算では売り上げが17億5600万ドル、粗利が6億5200万ドル、営業利益で1億5300万ドル、純利益も1億1600万ドルに達している。
わずか3年でここまで経営が改善した最大の要因は、「Zen」と名付けた新アーキテクチャ製品がヒットし急激に売り上げを増やしたことにある。製品の特徴を正しく市場にアピールし、そして2015年の段階ではまだ開発中であったZenを市場に送り出すことができたのは、Lisa Su CEOの下でコンシューマー向けのビジネスを一手に管理したJim Anderson氏の手腕に寄るところが大きい。株価は直近、25ドル前後で推移しており、3年前のほぼ10倍に達している。
そしてLattice Semiconductor(と影響力のあるLion Point Capital)がAnderson氏に求めているのは、まさしくこの株価上昇を実現した手腕であろう、と筆者は考える。
「銀の弾丸」はあるのか?
Lion Point CapitalはLattice SemiconductorをCanyon Bridge Partnersに対して売却する予定だった。ところがトランプ大統領の横やりで話がご破算になったため、抱えていたLattice株を売ることが出来なくなってしまった。売却予定時の株価は8.3ドルだったがその後、株価は低迷する。現在は7ドル前後まで戻しているが、最初に買収の話が出てから時間も相当経過しており、Lion Point Capital的には「いまさら、8.30ドル程度では満足できない」といったところだろう。
要するにLion Point Capitalには、Latticeの株価を恐らく現在の数倍、少なくとも10ドルは超える程度までAnderson氏に高めてもらい、この状態でのバイアウトを考えているのではないかと思う。
これを裏付けるよう、就任にあたってのプレスリリースの中で、同社が2013年に定めた報奨制度とは別に55万5000株分のストックオプションと38万5500株分のRSU(Restricted Stock Unit:譲渡制限付株式)、さらに合計46万8000株分のパフォーマンスRSUが報奨としてAnderson氏に授与されると書かれている。要するに株価を十分に上げれば、Anderson氏にも大きなメリットが出るという形でのインセンティブである。普通に考えればなかなか難しい案件であるが、AMDで株価を10倍にしたという実績が、このオファーにつながったと考えるべきだろう。
可能かどうか、という話は筆者が判断するには荷が重すぎるので何とも言えないのだが、強いて言えばAMDの時にはZenという「銀の弾丸」があった。ところがLatticeの場合、現在開発中のものは28nm FD-SOIを使った次世代FPGAぐらいしか見えていない。取締役会が期待するような売り上げと株価の向上が、28nm FD-SOIのFPGAだけで実現するのか?それとも別の弾をこれから仕込むのか。パフォーマンスRSUの期限はそう長くはないと思う。Anderson氏がどんなかじ取りをするのか、興味あるところだ。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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