大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
AMD復活の立役者がラティス新CEOに、問われるその手腕(2/2 ページ)
“厳しい”状況にある組み込みフラッシュ
EE Times Japanの連載「福田昭のストレージ通信」を楽しみにしている方も多いと思われるので、そうした方であれば、昨今の組み込みフラッシュがいろいろな意味で“厳しい状況”にあることは分かるはずだ。
組み込みフラッシュは汎用品であってもセキュリティスタックやネットワークスタックなどのニーズによって容量増が求められつつあり、その一方で、低価格化や高性能化のためにプロセスそのものは微細化の方向に向かっている。
ところが微細化すればするほど、フラッシュは構築しにくくなる(特に信頼性の確保が難しい)。その結果、Cortex-M7クラスの高性能MCUでは内蔵を諦めて外付けのSPI NORフラッシュをSIPの形で搭載するケースが増えつつある。ただし、この実装はコスト高を招くので、可能であればシングルダイ構成が望ましい。
そこで注目されているのが、GlobalFoundriesとSamsung Foundryの推進するボディーとシリコン基板を分離する「FD-SOI」(完全空乏型シリコン・オン・インシュレーター)である。
GlobalFoundriesはIBM、Samsung FoundryはSTMicroelectronicsの技術をベースとしており、FD-SOIということでBody Biasを利用しての省電力動作を可能にするだけではなく、RFやアナログ、さらには高電圧動作なども可能になるということで、例えばMCUなどには最適な素性を持っている。
ただFD-SOIの上に従来型組み込みフラッシュを構築するのはなかなか骨が折れる。それもあって、各社はSTT-MRAMをベースとした組み込みMRAMをオプションとして提供している。GlobalFoundriesは12FDXにむけてeMRAM-FというMRAMマクロを提供予定で、Samsungの28FDSに向けてはArmがMRAM Compiler IPの提供を発表するといった具合に、量産ラインで利用するための準備が着々と整いつつある。
TSMCはというと、28nmについてはルネサス エレクトロニクスと共同で開発した組み込みフラッシュを提供しており、組み込み不揮発性メモリが必要となる用途はしばらくこの28nmで据え置きたい模様だ。そんなわけで28nmの先に関しては、今のところeMRAMが一番有力な解とされている。
「MRAM」か「NRAM」か
この組み込み向け不揮発性メモリのマーケットで注目を集めているのが、CNT(カーボンナノチューブ)を利用したNRAM(Nanotube RAM)である。NRAMの開発はNanteroだが、富士通セミコンダクターがライセンスを受けており、2018年1月には「16Mビットを上回るような容量への対応は、CNTを使用したNRAMでも対応していく」との見通しを述べている
そのNanteroが2018年8月に開催されたHotChips 30で詳細を公開したことで、MRAMに代わる新たな組み込み向けメモリが出現か、とちょっと話題になっている。動作実証そのものは2014年に発表されているがこれはあくまで研究室レベルでの成果である。
今回は発表の中で、On/Offの抵抗比が10倍以上であり(Photo01)、明らかにシリコンそのものよりも長い信頼性を持っているとしたうえで、既存CMOSロジックの上にCNT層を積層するだけなのでCMOSプロセスとの互換性も高く、しかもマルチレベルセルの構築も可能とされる(Photo02、Photo03)。
微細化については5nmあたりまで問題なく可能というのがNanteroの説明(Photo04)。この微細化とマルチレベルセル化、さらに配線層の積層数を増やすことで、100平方mmのダイで8Gbit(28nm/2Layer)~512Gbit(7nm/8Layer)まで容量増か可能であるとしている。8Gbitでも1GB相当になるから、組み込みFlashの代替としては大きすぎるほどだ。
MCUの場合は周辺回路まで全部入れてもハイエンドで10平方mmにはいかない程度だから、この場合だと64MB程度のEmbedded NRAMが利用できることになる。これは組み込みフラッシュの代替としては手ごろだろう。速度としては40nsと5nsでのRead/Write Cycleの測定例が示されており、5nsなら200MHzほどのアクセス速度になる。SRAMでキャッシュなどを間に挟めば、昨今利用されている高速MCUのメモリとしてちょうどいいだろう。
……ということで良いことづくめに見えるNanteroのNRAMであるが、不安事項は今のところライセンスを受けているのが富士通セミコンダクターのみということだ。2018年1月の記事にもあるよう、NRAMの開発は富士通セミコンダクターと三重富士通セミコンダクターが行っているのだが、三重富士通セミコンダクターはUMCに買収されてしまった。
そうなると現在のFRAMの様に単純なディスクリートNRAMとして使われる可能性もあり、NRAMは組み込みフラッシュの置き換えには(技術的にはともかくマーケティング的には)なりえないかもしれない。HotChipsにおける質疑応答では、「間も無く富士通セミコンダクターから出荷される予定」という話であった。ただそれがNRAM単体なのかNRAM搭載SoCなのかは不明であり、このあたりは気になるところである。
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大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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